3日目以降の胚発育率低下
【ご質問原文】
いつも拝見させていただいています。
3回高刺激で採卵して、3日目までは順調に分割するのですが、胚盤胞には育たなくて、転院して低刺激で採卵したら6日目拡張期胚盤胞に育ちました。
夫の精液検査では、奇形率が高く運動率は基準ギリギリです。 胚盤胞に育たない、あるいはゆっくりなのは精子にも少し原因があるのでしょうか?
【回答】
ご質問ありがとうございます。
3日目以降の発育には、卵子と精子どちらも関わってきます。
ヒトの胚は受精から4〜8細胞期胚くらいまでは、卵子があらかじめ準備しておいたDNAやタンパク質を使って発育をしていきます。
その後、卵子と精子のDNAが融合した、「胚としてのDNA」の準備ができたら、新しくDNAやタンパク質を合成して発育が進行していくようになります。
これを「Zygotic gene activation」と呼びます。
さて、3日目までの発育は問題ないのに、胚盤胞率が低い理由としては、やはり精子の可能性は否定できません。
顕微授精の際の精子セレクション(IMSIやPICSI、精子調整法など)を工夫したりする事で、改善する可能性はあります。
一方で、その他卵子側や培養技術側に原因がないとも言い切れません。
卵子側の年齢が高くなると、いくら良い精子であっても発育は低下します。
最初に説明した通り、3日目以降は卵子と精子が融合した「胚としてのDNA」が発育の指示をしていくようになるため、半分は卵子由来です。
また、エネルギー生産を司るミトコンドリアは完全に母性遺伝で、これらも胚発育(卵子の質)に大きく関わってきます。
発育は様々な要因が関わってきていますので、原因を特定するのは難しいです。
常に最善を尽くすしかないと考えています。
以上です。
ご参考になれば嬉しいです。
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