距離感を見誤ったファンは破滅するらしい

とあるミュージシャンのファンを辞めて、1年が過ぎた。
辞めた当初はなんでこうなってしまったのか、客観的に考えることでそれを正当化できるような気がして、記録がてらその理由などをつらつら書いたこともある。

そして現在。
相変わらずその人のライブには行っていないし、音源も聴いていないし、SNSのフォローも止めた。
それでも意外と生きていけるもので、その人の活動を追うのに費やしていた時間は、別の物事に充てることで充足した日々を送っている(やはりライブには行けていないのだが)。

そんなある日のこと、SNSのタイムラインにこんなブログが流れてきた。

書き主は渡邊忍さん。
ASPARAGUSというバンドをしていて、このブログにもあるように、楽曲提供などでもご活躍されている。
実は私もちゃんと追っておらず、名前を時々聞く程度の認識だったのだが、なんとなく開けた文章の中盤にものすごく刺さる言葉が書いてあった。

渡邊忍さんはご自身のファンについて、その応援したい気持ちのハードさに応じてランクがあり、その呼び方も変わるという。
そして最上級のスーパーハードファンに認定されると…なんとオフィシャルルールで「今後一切の出入り禁止」になるという。

え、出禁??
そんなのがオフィシャルで制定されているの?
ファンにしてみたら、たまったもんじゃないな??

にわか読者に過ぎない私は衝撃を受けてしまったのだが、出禁になる理由もちゃんと説明されていた。

理由は簡単、ハードが過ぎるからだ。
ハード過ぎるファンはもちろん本気でいつも応援してくれていてとてもありがたいのだけれど、ハードが過ぎて『もっとこうした方がいい!こうした方がもっと人気が出るのに!』と、なんの根拠もない助言を言い出したり、熱くなってオーバーヒートしてしまったりするからなんだ。
本人も全く悪気もなく純粋な気持ちだからこそ難しいんだ。

https://lineblog.me/doeraymeraydoe/archives/2991353.html

これを読んだとき、色々なことが腑に落ちた。
確かに熱が入りすぎると、「もっとこうしてほしい!」などと自分の気持ちが強くなりすぎて、それをついぶつけたくなってしまう。
しかも、SNSの発達した今日この頃である。
有名人にファンが直接激励や感謝を届けられる一方、同じ感覚で意見や指摘も簡単に言えてしまう。
別に友達でもないのに、気を付けないと、気持ちが空回りするあまり、適切な距離感を見失ってしまう。

そう、距離感だったのだ。
私が昨年ファンを辞めてしまったのも、ひとえに適切な距離感がわからなくなったからだ。
ただ、私の場合はクレーマーのようにオーバーヒートしたからではない。そもそも、当人に直接リプライしたこともない(なにせプライベート垢なので不可能)。
むしろ逆で、自分にとっては明確に距離があり、声が届かないほど遠いところにいるミュージシャン、という程度が適切だった。

それがSNSアカウントやファンクラブの登場で、「ミュージシャン」が「その辺を歩いている人」に近くなってしまった。
さらに自分と同じ立場のファンが(ハードファンも含め)、その人に気軽にコメントを送っている。
何だろうこれ。LINEのトークルームでも見ているのか私は。

そんな中でも唯一距離感を感じられたのが、ライブだったのである。
それがコロナ禍で消えたことで、いよいよ「その辺を歩いている人」という感覚が強くなってしまった。
結果、距離感がバグってしまい、ファンを辞めるに至ったのであろう。

逆に身近な人くらいの感覚がいい、という人もいるだろう。
そういう人は、私と逆に遠くて追い付けないようなままだと苦しくなるように思う。
それを無理に縮めようとしても、一歩間違えばハードなクレーマーになりかねない。

自分も経験あるが、何かのファンになるとつい盲目になりがちである。
それでも時々距離感を見直さないと、その先にあるのは破滅である。
推しから出禁を言い渡されるか、あるいは私のように自滅してしまうか。
1年以上経ってようやく、ファンを辞めるに至った本質に気づかされたような気がする。

※2024/6/18追記※

2年以上前の投稿なのに今でも♥押してくれる方がいてありがたいです。
この間にLINEブログが終わり、今では元のブログが読めなくなってしまいました…。
残念ですが元のURLは載せたので、インターネットアーカイブとか使って是非読んでください(土下座
私も対人関係での戒めとして、今でも心に留めています。


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