見出し画像

テンペスト 少年社中 感想

1/15 ソワレ サンシャイン劇場にて

前から公演情報は聞いていて、まぁ今回はスルーでいいかな、なんて思っていたけど舞台写真にあるとんでもねぇビジュアルの鈴木勝吾氏を見かけ、三日三晩悩んでチケットを取った人間の、観劇後1時間で書いたフレッシュ感想。

全体の感想

オープニングの口々に言うやつ、稽古動画で観たやつだ!と分かって感動した。

テンペストの復讐のテーマが、劇中に登場する劇団と実際のテンペストの劇に重なる物語は事前情報で把握してたけど、組み立て方がテンポよくて楽しかった。弛れる場面がないというか、初めからこれはこの人!と決まっている役と、プロスペロとエアリアルみたいに複数の人物によって兼任される役に別れていて、観ていてもこれがこの人かな…?と考えてしまう。
そもそもシェイクスピアのテンペストが初見の人にも理解できるように、簡単な紹介と、アドリブという名の妨害による本来の物語とは分岐する点で適宜解説が入ったのが親切設計!と思いました。

ギンのパワハラシーン、見ていて辛かったな。
昔はいっぱいあんな現場あったんだろうし、今はあんまりないと信じたい。出来るまで何回もやらせる、とか灰皿投げつけるみたいな話は聞いたことあるから、もしかしたらこの劇に出演されている方も、そういう経験を実際にしてきたかもしれないと思うと、中々末恐ろしいものがある。でも、こういう脚本を狙って書くってことは、ある意味毛利さんはそんな劇の作り方はしないよって意思表明だとも受け取りたいな。

「土下座でもなんでもして頼んだらどう!?」みたいなアン王女役の人の台詞がよかった。ギンのここぞと言う時に逃げ腰になる情けなさに、根性足んねぇよ!って喝入れらていてかっこいい。あと、「許さないから一生悔やんでろ」もかっこよかった。

だからこそ、最後の謝罪のシーンが、私はあんまり納得いかない。
謝るという行為自体はいいんだけど、劇として、演出として見やすいようにしているのは分かるんだけど、ギンに観客の前で土下座させて、劇団員の殆どがそれを立って見下ろしている構図が強権的に感じた。一方的な断罪だな、とも思ったし、それは15年前にギンがやってきたことと同じだなと思った。結局あの劇団はそのしがらみから逃れることは出来ないのかなとも思ってしまった。若干の救いなのはギンを舞台にあげたキャリバーンが座っていたところ。目線が土下座をしているギンに近いから、ギンの共感者にも見えるし、全員が全員一方的な断罪を行っているわけではないとも感じられる。まぁ因果応報と言えばそれまでなんだけどね。

役者さんへの感想

井俣さん力強かった。大声が怖いし、強そういでいて実は小心者というある意味古典的な、昭和的な男に説得力が生まれていた。エンディングで0番に立っている姿がかっこよかった。

エアリアル役の鈴木拡樹さん、声色の操作が上手いな!と関心していました。声のトーンが目まぐるしく変わって一種の旋律のようで美しかったです。あとゲキに乗り移られた時と、素の状態の演じ分けが明確で万華鏡のようだった。

以下鈴木勝吾への感想


モリミュぶりに勝吾さんのお姿を拝見したら以前よりなんだかムチムチしていました。(ド失礼)

ダンスするんだ……の衝撃。踊れたんだ……

本日のメイクは青めでした!唇が綺麗な真っ青で具合悪そうな見た目だったけど中身めっちゃ元気だった。

彼のストレートプレイを初めて観たのですが、打楽器みたいと思った。心地よい彼独特のリズムがあって、それに伴って言葉のアクセントが決められていく感じ。カン!と打ち響くような声がやっぱり綺麗で好き〜と思いました。

正直こんなに重要な役どころだとは思わなかった。というか、キャリバーンがこんなに前に出てくるんですか!?と動揺しながら観ていた。
二枚看板って言われて、「俺が守る」の言葉をくそったれ〜!ってイラついてるシュンを見て、大体を察した。これは、あれや、対等であるはずなのに守られて劣等感を抱えているやつだ、さらに言えば抱え込んでいるあいつにも、弱い自分にも怒りを感じているやつだ……最高〜〜!!?!?

そして、まさか、キャリバーンまで狂言回しを始めると思わなかった。よりお互いを分かっているからこそ、シュンが暴れることにワクワクした。

クライマックスで矢崎さんと勝吾さんが剣を持って戦っているシーン、脳内で薄桜鬼がめちゃくちゃ出てくる。おふたりの迫真の言葉凄かったな、会話のテンポが死なないというか、言葉を発さない間も常に何かのエネルギーが二人の間で動いていて、生きる芝居ってこういうことなんだなぁと肌でビリビリ感じた。あと観客席からすすり泣きの音が数箇所聞こえてきて大丈夫?ってなった。

そういえば何ですか?鈴木拡樹と鈴木勝吾と矢崎広のオープニングとエンディングの殺陣のシーン何なんですか?やりたかっただけですか?嘘です違います、多分あれは劇団の看板俳優として切磋琢磨している様子なんだなと思った。でも、とても眼福、目が足りない。

エンディングの勝吾さんすごく楽しそうに台詞を放っていてニコニコした。今まで観てきた姿が大体しんどそうだったから、生き生きとしているの新鮮ですね。お声が高いから集団の中に混ざってもめっちゃ聞き分けられるわ。

カテコ、拍手と拍手の間の激忙しタイム、根性でオペラグラス掲げたんですけどちょっと目潤んでた気もする。

さいごに

テンペストの劇の役と、劇団員としての役を結びつけていく過程が鮮やかで感動したので台本を買いました。もっと読み込んで研究します!

この記事が参加している募集

#舞台感想

5,924件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?