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どろどろなからだ、幻みたいな夜

ここ1ヶ月くらい、調子が悪かった。
2月は確定申告に本腰入れようと思っていたし、レコーディングもあるし、仕事はリモートワーク、ちょうどまんぼうなんだからと完全に引きこもって生活してやろうと考えてたら、春の気候変動、録音のプレッシャー、終わらない確定申告、完全なるルーティン生活に息苦しくなってきてしまい、閉じ込められてる気分になってきてしまった。
あ、これはやばい感じだと思ったので、少しくらい息抜きするためにどこかに行こうかと思いつつも、思考が停止状態になってて、どこに行きたいのか、何を食べたいのかもよくわからないし、とても疲れてしまい、横になる日が多くなってた。

ある日の夕方、樹海ちゃんから「これから温泉行こうよ!」とメールが入る。温泉いいな。しかし、どこに?とか思ってたら、うちの家の近場に温泉があることや、そこからのアクセス方法など樹海ちゃんがすべてリサーチしてくれており、段取りも全部提示してくれ、「風呂入ったら解散ということで!どう?」みたいな感じで提案を受け、急だが、確かにこのプランなら、いけなくはないな…?という感じで承諾。「じゃ、17時に、駅で!」と勢いのあるメッセージが入り、急いで支度をして向かった。
1時間くらいで即駅で落ち合った。「ここから歩いて行けるけど、1メーターくらいだし、入浴時間を考えると行きはタクシーで向かったほうがいいね。タクシー乗ろう」と言われ、即タクシーに乗り込む。ほんの数分すると温泉についた。
靴を脱いであがると、大きな施設で、エステやマッサージ、横にもなれる広い休憩所やお食事処もある。この日はまだ少し寒かったけど、施設内はほどよくあたたかく、天井も高くて、もうなんだかすでに気持ちいい。券売機で入浴券を購入してると、急な展開になんだか不思議な心地がしてきて、ぽかんとする。
樹海ちゃんのアシストのおかげでスムーズに、突然温泉地にいる。目隠しされて突然ハワイに連れてこられたみたいだ。アロハ!と言われている気分。
温泉に入っている間、体は温かくて、ぼんやりとして、これまたアロハ!と言われているような気分だった。
樹海ちゃんちからこの辺りはかなり遠く、風呂入るだけなんて、面倒臭くないのかな、と顔色を伺うが、頭にタオルを乗っけて、樹海ちゃんはなんだか楽しそうだ。とりとめもない話をする。
以前から思っていたけど、この人はやっぱり遊びの天才だ。
そして自分も他人も巻き込んで、生きてることを全力で楽しむ天才だなと改めて思った。
最近元気がないからと、心配してくれたのもあると思うけど。

帰り道、人通りが少なかったので、私は熱燗、樹海ちゃんはビールで飲み歩きながら駅まで向かった。風は少し冷たいものの、温泉で温められた体はまだ温かくて、みえるものすべてがなんだかいつもより綺麗にみえる気がした。温泉施設の光景は夢の中のできごとみたいだった。
そんなことを考えていると、とても素敵な壁をみつけた。

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やっぱり夢の中にいるのかな、と思ってしまう。
川上未映子さんの小説、『すべて真夜中の恋人たち』に出てきそうな夢みたいな壁。

風呂を終え、駅で樹海ちゃんと「じゃ!」という感じで解散した。
今日はいつものように少し憂鬱に静かに締めくくられるはずだったのに、奇跡が起きたみたいだった。
そうだ、人生って予定調和のようにはいかないものだったなと思う。
いつも冷たい足先は帰っても温かいままだった。
とても満たされた気持ちで眠りにつくことができた。
この日、連れ出してくれた樹海ちゃんにとても感謝してる。
幻みたいな夜だった。

エマル



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