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森のバロックを読んだ

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森のバロック 中沢新一

森のバロックを読んだ。
南方熊楠が取り組んできた仕事とはどんなものだったのかを紐解くような中沢新一さんの解説本。

以前からずっと南方熊楠の関連本を読みたいと思ってた。
なんとなく、自分の興味のある事柄にちょこちょこ熊楠の名前が出てくることが多かったので。ただ何から手を付けたらいいだろうなと思ってた。
Twitterで知った+Mさん(@freakscafe)は、よく購入した本の紹介をされており、気になるものが多いので、たまにツイキャスを聞いたりする。
そこで熊楠のことを話していたり、関連本を紹介していたりしたので、おすすめを聞いてみた。初めて読むなら熊楠論を読んで見通しを立てた方が読みやすいかも、とのことでこの本をすすめていただいた。

本はめちゃくちゃ楽しかった。
一文一文が面白くて、まさにこれですよ!って感じで大分引き込まれてしまった。
民俗学、南方曼荼羅、粘菌など、まんべんなく触れられており確かに最初に読むのにうってつけだった。+Mさんに感謝。
正直、本題に入るまでの序盤は壮大すぎて、やや笑ってしまう部分も。
SF映画で無駄にかっこいい技術とか装備を見せられてる感じ。そう、この感じは何かに似ている、と思ったら、みーくん(木石南)と大垣さんがよくやってる研究だ。ストロングゼログラビティ、苦行ツイキャス、夜会考、平成の研究、パブリックスペースなど。二人の壮大な飛躍が、アナロジーが、中沢さんの熊楠論と一致してくすっと笑ってしまった。
きっと中沢さんは他のご本も面白いんだろうなと思う。
みーくんからすすめられた大阪アースダイバーも、タイトルからして面白そうなのでいつか読んでみようと思う。

木石南と大垣さんのストロングゼログラビティにつての研究結果報告書

こんな感じが続くのかな?と思いきや、だんだん本格的に熊楠論になってくると、目が覚めるみたいな気持ちで引き込まれた。
さっきまでの壮大な感じとは打って変わって、とてもわかりやすい解説で体にすうっと入ってきた。
昔、内田樹さんの「寝ながら学べる構造主義」に興奮して、構造主義についてもっと知りたい!と関連本をいくつか読んだ。
その中にレヴィ=ストロースの悲しき熱帯があり、当時読んだんだけど、その時はピンとこなかった。森のバロックを読んで、なるほどこういうことか!と合点がいったので、もう一度読み直すといいのかもしれない。
熊楠本では植物学や生物学関連の話が展開されるのかな〜という感じで構造主義とつながると思ってなかったのでびっくり面白い。

曼荼羅論では映画のマトリックスと重ねてわくわく読んだ。(最新作のおさらいに丁度Netflixで見返してたのもあると思う。)
熊楠の民俗学についての考えには、なるほど、私が都市伝説や怪談話に興味を持つのはこういう観点からなのかと気づく。
不気味な習わしや風習、言い伝え、妖怪や化け物の正体。
怪談・オカルト研究家の吉田悠軌さんの活動がほかの研究家の方より興味深く私に刺さるのは、熊楠のように、その土地や人々をよく見ようとしていると感じるところからなのかもしれないなと思った。

また自分が昔から取り憑りつかれるように考えてしまう世界の内側・外側についても触れられており、とても興味深かった。
生きていることの不思議、死んでいくことや生物無生物の差異。動物と植物。粘菌の話もとても興味深かった。粘菌についてももっと知りたい気持ちが増えた。
そして熊楠の自然環境保護の考えについても非常に興味深かった。
自然愛護の気持ちだけではなく、また遠い未来の問題ではなくて直近の私たちの生活環境においてどう悪影響が出るのかを挙げられており、それはエコロジー思想ではない人も腑に落ちる内容のように思われた。

そして読めば読むほどジョン・ケージの作品たちみたいだな~と思ってたら、中沢さん曰く、ケージの作品は曼荼羅的とのことがあった。
数年前、cage inで演奏した、ヴァリエーションズⅡという作品はとても曼荼羅的だと思った。
目をつぶって紙の上にペンを落として点を5つ打つ。紙を回転させて目をつむり、好きな位置に線を6つ引く。(厳密には透明板を落として重なる線)そこから点と線の距離を全部測る。点は音符、点から線までの距離は各パラメータ( (音高、 音圧、音色、音の持続時間、発音のタイミング、音の構造 )に置き換えられ、それを基に演奏するという。
ジョン・ケージは鈴木大拙に影響を受けたという話は見るけど、熊楠はどうだったんだろう。調べたけど特に情報は出てこなかった。
もし熊楠のこと知ってたら、とても影響を受けたんじゃないかなと思った。

自分の興味のあることすべてが詰まった本だった。熊楠の他の本も読む。
全体像が見えたので、次はどこから深掘るかめっちゃ楽しみになった。

エマル

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