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デパートは癒しの空間

デパートが好きだ。たくさん物が売っているからではない。あの空間が好きなのだ。小さな頃から大人になった今でも変わらずデパートに入るとホッとする。

子供の頃、デパートに入るとそれだけでテンションが高くなった。僕が子供の頃はデパートとは言わず「百貨店」と呼んでいた。自分に何か買ってもらう用事が無くても、デパートに連れて行ってもらえるだけで嬉しかった。だいたい家族でデパートに出かけるのは御中元や御歳暮を買いに行く時だった。両親に連れられてあっちの売り場こっちの売り場を見て回るのは小さな子供にとっては疲れることだった。でも、それ以上に、たくさんの人が居て、いろんな物が綺麗に飾られて売られている空間はとてつもなく魅力的で輝いて見えた。

大人になってからも、その憧れにも似たデパートへの想いは変わらない。日頃、特に何か用事が無くても、リラックスするためにあるいは気持ちを落ち着かせるためにデパートに入ることがよくある。書籍や文房具、家具やOA用品など何かを購入する可能性がある売り場を見て歩くことはもちろん、それ以外の売り場をのんびり歩き回るだけでも気が安らぐ。たとえば、地下の食料品売り場。ギフト用のお菓子やデザートなどが綺麗に並んでいるディスプレイを見ているだけでも心が満たされる。また、化粧品売り場も良い。大概のデパートでは一階が化粧品売り場になっている。商品を陳列しているディスプレイはもちろん、柱に掲げられているモデル・女優さんたちのポスターもとても綺麗だ。写っている彼女たちも綺麗だし、ポスターの周りの装飾やライティングもとても綺麗だ。ここで化粧品を買いたくなる女性たちの心理が分かる。見ているだけでワクワクするではないか。

本館と別館があって渡り廊下でつながっているようなデパートは特に好きだ。その渡り廊下の前後に長椅子が何脚か設置されていて休憩できるようになっている。そこに座って大きな窓からの景色を眺めたり、館内に時折流れる上品な女性のアナウンスを聞いているだけで、これまた癒される。
そうだ、デパートには品がある。老舗といわれる店舗ほどそうだ。店員はどこの売り場でも男性でも女性でも隙のない完璧な接客態度で迎えてくれる。高級な品物を取り扱っているだけのことはある。鍛えられた人たちだけが提供してくれる癒しがデパートにはある。

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