生まれてきてくれてありがとう
息子が8歳の誕生日を迎えた。
オンライン授業が3ヶ月目に突入し、息子もだいぶ自由なタイミングで勉強できる利便性や体力を温存できる生活が気に入ったようで(大人でせえ、リモートの方が良いものね(笑))、一時期の反抗期が嘘のように、最近、甘えてくるようになった。
「今日もママと一緒に寝ていい?」
正直、131cm・コロナ太りで30kgになってしまった息子と眠ると、ひどく寝相の悪い大人と一緒に寝るのと同じで、ぐっすり良く眠れないのだが、
「一緒の布団で眠ってくれるのなんて、あと何年だろう…」
そう思ったら、一日一日が愛おしく、最近は毎日一緒に眠っている。
彼が2歳から入退院ばかりで、一緒に過ごせなかった時期も長かったし、退院した後、息子と同じ布団でも、私に体力が無さ過ぎて、寝る前に絵本を読んであげたり、二人でふざけあったり…そんなことをなかなかしてあげることができなかった。
やっと、今、「普通」のことをしてあげられる。
少しでも罪滅ぼしになったら…と毎晩思う。
就寝前のぶっ込みタイム
最近、なぜか寝る前になると、「なぜ結婚しないでも子供が生まれるのか?」というぶっこんだ質問が続いていた。
「世の中には、いろんな家族の形があって、パパとママが愛しあっていれば、別に結婚していなくても、子供を産むことはできるんだよ」
幸い、インターに通っているおかげで、事実婚のご家庭や「お父さんが二人」というご家庭もいらっしゃる為、家族形態が様々であることに関しては違和感なく受け入れてくれたらしい。
けれど、私は、自分自身もシングルマザーの家庭で育ったので、その質問の裏にある息子の気持ちは痛いほど良く分かっていた。
「どうしてうちは普通の家族じゃないの?」という疑問。
なんでパパがいないの?
8歳になった夜、息子はこう聞いた。
「どうして、パパとママは一緒に住んでいないの?」
「パパとママもそうするつもりだったんだけどね、色んな理由があって(細かに説明)一緒に住むことができなくなっちゃったんだ。寂しい想いをさせてごめんね…」
すると、息子はこう答えた。
「僕、生まれてきちゃって、ごめんね」
なんてこった!
これは、私がまさしく幼少期に心に抱えていた「不全家庭の原因は自分のせいだ」という葛藤そのものではないか。
私は、ベッドサイドのランプをつけ、正座をして、息子にこう答えた。
「違うよ!!
たっちゃんが生まれて来てくれたから、ママ、お腹に病気があるってお医者さんにやっと見つけてもらえたの。」
「沢山病院に行って、いっぱい手術して、すごく痛いことがあっても、死にそうになっても、貴方がいたから、『絶対に負けない。病気なんかに絶対に負けない』って頑張れたんだよ!たっちゃんいなかったら、ママ、絶対頑張れなくて、とっくに天国。」
「生まれてきてくれて、ありがとうね」
全身全霊を込めて伝えた。涙を見られないように、息子を強く強く抱きしめた。
耳元で息子が言った。
「ママ、もう病院には行かないでね。僕がずっと一緒にいるから大丈夫だよ。ママ、いい子、いい子」
小さな手で、頭をなでてくれた。私がいつもそうするように…。
これまで、言えなかった想いがいっぱいあったのだろう。
息子も私も、それこそ家庭的な部分では縁には恵まれなかったが、とても優しい愛情深い方々に恵まれ、私が入院中も大切に預かってくれた。それでも、家ではない環境の変化、私がいない不安、何より、母親が生きて帰ってくるのかどうか?という不安をずっと一人で抱えていたに違いない。
8歳になるまで、息子は一度も、家族構成のことや、私の病気のことには触れなかった。でも、ストマ(人工肛門)を造設したことで、私が以前より元気になって来たことを本能的に感じ、はじめて甘えられるようになったことが、素直に嬉しかった。
May the force with you
息子が成人するまで、あと10年。なんとしてでも生き抜かねばならない。
私が患っている「慢性偽性腸閉塞症(CIPO)」という病気は、あまりに症例数が少なく、進行度合いも治療法も人それぞれで、先のことは未知数としか言いようがない。
その不安は、考えても仕方がないので、私の不屈の精神力で日々、吹き飛ばしている。
算数が好きな息子が、寝る前に言った。
「ママは、僕が76歳の時… 110歳か。まだ生きてるね!」
また、涙が溢れそうになった。ちょうど、二人で「スターウォーズ」を見た直後だったので、
「ママ、フォース使えっから。生きてる、生きてる!」
と答えた。
今まで、何度か命を落としかけ、奇跡的に救って頂いた命。「長生きしたい」などというわがままを言うつもりはない。
けどもし、ヨーダみたいな姿になるまで生きれたら…ちょっとだけ欲張りになった夜だった。
息子よ。お誕生日おめでとう。
私のもとに、生まれて来てくれてありがとう。
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