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いろんな野菜があって、いろんな農家がいる~府中のセロリ栽培

3月、「イートローカル探検隊・援農部」では、日ごろの援農から離れて、隣町の農家さんの見学に行ってきました。
イートローカル探検隊の生みの親、“東京農業流通ベンチャー”エマリコくにたち代表の菱沼勇介が府中市からお届けします。

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3月6日、府中本町駅に集まったイートローカル探検隊の隊員たちが向かったのは、セロリ農家の古川常雄さんの畑です。
府中競馬場の大きな敷地を横目に、徒歩15分。住宅街の家と家の合間からハウスが立ち並んでいるのが見えてきます。

ハウスの前で古川さんが笑顔で出迎えてくれました。

ふと見ると、ハウスの前にこんもりと山が。これは?
「府中競馬場からもらってくる馬糞です。いい肥料になるんですよ」
なるほど。府中ならではの地産地消システム!

ハウスの中に入ると、一面鮮やかな緑色が広がっています。
3月上旬のこのとき、まだ高さは40cmほど。収穫はより大きく育った3月の終わりから始まり、だいたいゴールデンウイーク前までに終わります。

「この時期は、市場の価格が比較的高いんです。セロリの主要な生産地は長野県ですが、まだ長野からは出てこないので」と古川さん。
販路はほぼ市場(国立市にある多摩青果)への出荷です。

私は地元農産物の直売所を運営していますが、やっぱり東京・多摩エリアの農家さんの多くは少量多品目で野菜づくりをしています。隊員が日々援農に行っている国分寺中村農園さん(前回このコラムでご紹介しました)もまさに典型的な多品目農家です。

ただ、そのためには、それだけの知識量が必要ですし、畑の管理もなかなか大変です。直売所に出すのは、お客様との距離が近いというメリットはありますけども。

一方で、市場でそれなりの価格で取引きされるのであれば、品目の数を絞って、その品目を高品質に作ることに集中することもまた合理的です。考え方にシンプルになりますし、採算が取りやすいケースもあります。
今は直売や学校給食に出している農家さんの情報は、けっこう知ることができますが、実は古川さんのように市場出荷でしっかりと農業経営をしている農家が東京都下にいることもぜひ知っていただきたいところです。セロリは比較的栽培が難しい野菜とされていますが、とくに面白いのは、水はけが大事なのに、水そのものはたくさん必要とすること。ちょっとワガママな野菜なんですね。

「水が足りないと筋が張って食べにくいセロリになってしまいます」とのこと。
1株につき、1日あたり1~2リットルをあげる必要があるそうです。
それはなかなか。

ただ、府中の土は粘土質なので、水がたくさん必要な作物に向いているとのこと。

古川さんは都内では珍しいセロリ専業農家だ

ちなみに、古川さんのセロリは味わいは淡く、生食に向いています。理由のひとつは、コーネルという優しい香りの品種を選んでいるから。

一方で、トップセラーというセロリ特有の香りが力強い品種もメジャーです。日本の家庭では浅漬けやサラダなど生で食べることが多いのでコーネルが好まれますが、火を入れることが基本の洋食のお店はトップセラーを好むということです。

セロリとひとことで言っても、いろいろとあるのですね。
「東京の農業経営」で一括りにはできず、その形態が十人十色であるのと同じです。

私が日ごろ農家さんとお付き合いしていていつも感じることは、自分の性格に合った農業形態や作物を選ぶのが大事だということです。

東京の農業は、独自の販路に対して、独自の栽培技術で作った作物を売るのが基本。周囲の助けが少ないなかで、日々地道な努力を積み重ねていくのが東京の農業という仕事です。
ですから、自分の性格に合っていないと長いことモチベーションを維持して続けていくことはできません。

東京の農業経営にはいろんな形があって、ほんとうにカラフルです。それは農家さん本人の性格がそれぞれ違うので、おのずと方法が異なるからなのです。

人間、みんな違うのですから当然といえば当然ですね。山崎まさよしさんが『セロリ』で歌っているように。

農家さんのそれぞれの性格や想いが作物にばっちり反映されていると考えると、それを販売する者としても、愛を持って売っていかなくてはといつも思っています。

(ライター : 株式会社エマリコくにたち 菱沼勇介)

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