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『舞妓さんちのまかないさん』〜自分の居場所〜

誰の言葉だった忘れてしまったが、『若者ほど保守的である』という言葉がある。その人曰く、「若い人は自分の優先順位がはっきりと定まっていなため、イメージを守ろうとする。かっこいいとか流行っているとか。そのため、何事も満遍なくやろうとする。一方で年を取って大人になると優先順位がはっきりとしてくる。家族が大事、仕事が大事、趣味が大事。それゆえその他のことに頓着せず、他人の目も気にならない」

この言葉に出会った時は、そうかもしれないと漠然と理解していた。家族のためには自分の身なりや趣味をさし置いて優先する。化粧を手を抜いても家族の世話を優先する。そんな自分のプラオリティがはっきりして、迷いない大人になりたいと思ったものである。

さて、2023年年明けからNetflixで放映が始まった「舞妓さんちのまかないさん」原作を知らない私は芸妓の身を沈めていく悲惨な話かと敬遠していたが、話題のため見始めたら一気にそんな当初のイメージは払拭するほど明るく、情緒ある素晴らしいドラマであった。

話の内容やキャストの紹介は他の人の記事でも十分に紹介されていると思うので、割愛して、思ったこと・感じたことを綴っていくことにする。

まず、キャストが素晴らしかった。青森から上京してくる主人公のキヨ(森七菜)、幼馴染のすみれ(出口夏希)。幼く初々しさが残るが、是枝監督の抜群の演出で、本当に2人が昔からの幼馴染の雰囲気を醸し出す感じや小さな囁くような声で
話す感じが、自然で本当にドキュメンタリーを観ているかのような錯覚を持つほど自然であった。

特に森七菜は今後、大きく化けてくるんじゃないかと思うほど(嫁は樹木希林のようになると言っていたが)

さらに脇を固める松坂慶子、橋本愛、松岡茉優、常盤貴子など素晴らしいキャストが脇を固める。個人的には橋本愛のゾンビのモノマネがツボである。あと、松岡の弾けた大阪のおばちゃん感満載のやり取りも最高に上手くて笑えた。

さて、このドラマで考えたのは「自分の居場所」とは・・・である。物語終盤、舞妓のつる駒が自分がこのまま舞妓を続けていくか迷っていた時、
キヨが何げなく台所を指し先て『見つけてしまいました。』と微笑む。そう、キヨは自分の居場所(天職)をその『まかない』の聖地台所に見出したのである。その様子を見ていたつる駒は迷いを断ち、舞妓を辞めることを決断するのである。

同じ頃、幼馴染のすみれの舞子デビューも決まる。キヨは何かお祝いをしてあげたいと青森のお祝い事などで食べた『鍋っこ団子』を作ることを決める。そのことを遠く離れた青森で知った同じく2人と幼馴染の健太は『すみれがどんどん遠くに行くようだ、キヨはいつ鍋っこ団子を作ってもらえるのかな』と呟く。その問いにキヨの祖母が静かに答える『あの子は作られる方じゃなくて、作る方。それでいいの。作ってもらう方が上で、作る方が下ではない。どちら良くって、どっちが悪いってわけじゃね。それは自分が選ぶんだ。キヨは作る方を選んだんだよ』

まさにこのドラマの本質がここにあると感じた。当初すみれ同様に舞妓を目指して上京したキヨであったが、才能がなく断念し、まかないさんになる。ここまでを見るとキヨが挫折を味わって、惨めな感じにも見える。しかし、まかないになってからのキヨは全く落ち込もこともなく、大好きな料理でみんなに『美味しい』と言ってもらうことをやりがいに必死に精進していく。そして冒頭のセリフ『見つけてしまいました』である。

彼女は大きなリュックを背負って毎日買い出しに出かけていく。華やかな舞妓の世界とは対照的である。しかし、彼女に悲壮感はない。なぜなら、彼女には『人生における最優先事項』はっきりとわかっているからでる。人生の最も大事なもの(こと)を見つけた人間は迷わないし、周りの目も気にならないのである。

まさに人生の大事なもの(優先順位の高いこと)を見つけることが、その人の人生を輝かせ、迷いをなくすのかもしれない。それが表舞台であろうが裏方であろうが。

人の目も評判も気にならない確固とした人生の優先事項(プライオリティ)、居場所を自分は見つけられているだろうか。

まだ探している途中かもしれない・・・。

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