#76 ジーン・リース「あいつらにはジャズって呼ばせておけ」〜迷惑おばさんの怒りと悲しみ の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です


今回の本


今回のキーワード

  • いつ頃の話かよくわからない

  • 若いか歳をとっているかもわからない

  • 若い女の人とは思わなかった、「若い女の子と一緒になった」という記述があるから(主人公は)はあまり若くないはず

  • 典型的な中年女性。行為だけを切り取ったら「迷惑おばさん」でしかない

  • 助けてもらえる才能、甘えられる才能

  • 完全なアルイー

  • 熊本の水道水と東京の水道水はどっちかわからない

  • イギリス版林芙美子

  • 滲み出るような孤独

  • 「ここは立派な人が住む地区」排斥的な本能

中年女性か?若い女性か?

今回の最大のポイントはここ。お二人はこの主人公を「中年女性」と言っているが、おそらく40代~50代くらいをイメージしているんだと思う。ところが私はまったくそうは思わなかった。20代を想像してたんだよなー。番組を聞いた方の中にも「なんでおばさんと思ったのか?」「若い女性のイメージだった」とXで投稿している方がいて「そうだよねー!?」と勝手に激しく同意してしまった。私の中では「疲れ果てた若い女性」だと思ってる。警察に連れて行かれた先で出会う「前にいる子はとても若く」というのはこれは10代だと思うなぁ。
シムズさんを始めとする男性との関わり方、彼女を「ばか」といい「きみにはがっかりだ、もうすこし気概があるかと思ったのに」というシムズさんの言葉など、お金を持っている男性の若い女性に対する態度のように思えた。庇護しながら蔑んでいるような感じ。中年女性相手だったらこういう態度ではなさそうな気がする。
ところが数回読み直してみるとガラスを割るところ、近隣のひとに悪態をつく様子などのふてぶてしさは中年のようにも見える。

もしかして年齢は特定できないのでは?

ここまで書いてきてふと思ったのが、「若くもなく中年でもなく、ただただ『疲れている女性』なのでは?」ということ。いろいろな時期の作者自身が投影されているから、若い女性のようにも中年のようにも見えたりするのかもしれない。

わたしは泣く。止まらない。骨まで疲れているように感じて、ようやく止める。年取った女のように疲れて、もう動きたくなくなる

解説より

巻末の解説を読むと少し解像度が上がる。実際のジーン・リースも酒におぼれ(一日にワイン2本)、隣人たちとのトラブルは続き、晩年は近所の子どもを切り刻んでやる、と脅したので「魔女」だと噂されていたそうだ。この短編集、私は最初の3篇を読んでギブアップ。

その他参考本


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