【お客様の声】ビジョンと達成感を共有できた。AI導入に向けたJR西日本グループとELYZAの"協働"とは
2023年9月6日、JR西日本カスタマーリレーションズ(以下、JWCR)様へ事例インタビューを実施しました。本記事は事例記事には取り上げきれなかった、両者のプロジェクト担当者の声を紹介します。言語生成AIの導入に至るまでにどのようなやり取りや工夫があったのか、ぜひご一読ください。
JRのコンタクトセンターならではの難しさにチームワークで挑む
皆さまのお仕事内容について教えてください。
岡山様:第1オペレーション事業部の「コンタクトグループ」で、お電話の問い合わせを受けるチームの主任をしています。ELYZAさんとのプロジェクトでは、電話内容要約AIの精度へのフィードバック、導入に向けた課題整理やオペレーター向けの研修などを担当しています。
今出様:私も同じグループでスーパーバイザー(以下、SV)を務めています。オペレーターの意見を吸い上げ、いかにスムーズにAIを業務に落としていくかを考えています。
栗山様:「お客様の声マネジメントグループ」でSVを担当しています。様々なチャネルに届くお客様の意見や要望を集約し、駅やJR西日本本社など各所に振り分けたり、お客様に返信したりする業務を担っています。
森野様:同グループで主任をしています。今回のプロジェクトでは、メールでいただいたご意見ご要望をAIで要約する取り組みに関わりました。
お問い合わせに対応する中で、難しさや課題を感じることはありますか?
岡山様:全体で言うと、お問い合わせが増加傾向にあるのに対して、人手不足、育成が追いつかないことが課題に挙げられます。現場の具体例では、私たちが行っている鉄道の一般案内業務は範囲が広く、オペレーターに求められるものが多いという点が挙げられると思います。
駅名や路線名などはもちろん、料金の規定など扱う情報量は膨大です。さらに毎日のように何らかの新商品やプレスリリースが出るため、常に頭の中を更新する必要があります。
栗山様:何らかの障害があった際の対応は特に大変です。刻一刻と状況が変わりますし、厳しいご意見をいただくこともあります。楽な現場ではないですが、チーム皆で助け合いながら、より良い対応を目指していく風土があります。ELYZAさんとのプロジェクトにも、多くのオペレーターが協力してくれています。
メール内容要約から「スモールスタート」。こだわったのは問題設定と現場解像度
ELYZAはどのように課題解決を進めたのでしょうか?
森田:言語生成AIを実用化するためには、AIの精度はもちろん大切ですが、業務インパクトや導入実現性を踏まえて、適切に問題設定(スコープ定義)することが何よりも重要だと考えています。
松浦:今回は2つポイントがあり、まず1つはメール内容要約からスタートしたことです。当初より電話内容の要約やメール執筆の効率化など多様なテーマをご相談いただいていましたが、テーマごとに難易度もまちまちでしたので、スモールスタートでいち早く成功事例をつくることをご提案しました。
森田:メール要約は過去データが多量にあったことや、電話に比べると音声認識率や多言語などの変数が少ないことから、ELYZAモデルをチューニングして精度を高めやすいと判断できました。
松浦:もう1つのポイントは、現場の業務を解像度高く把握できたことです。契約前にコンタクトセンターを見学させていただいたお陰で、オペレーターの皆さまが利用する業務システムの様子を知ることができ、チームワークで仕事をしていらっしゃることも伝わりました。
社長様から直接想いを聞くこともできましたし、お互いの距離をぐっと近づけられたと感じています。プロジェクトを進める上で大きなイベントでした。
メールの次に電話内容要約に進めた際の工夫も聞かせてください。
森田:電話はメールに比べて要約品質のバラツキがあり、AIに学習させるデータが集めづらい状態でした。そのためまず「理想の要約」をJWCRの皆さまと議論して定義し、GPTモデルを活用して「理想の要約」の出力を目指すプロジェクトとしてご提案しました。
中村:私は電話内容要約のプロジェクトから参画しましたが、やはり問題設定と現場解像度がポイントだったと思います。AIの精度だけでなく、オペレーターの皆さまの操作性にもこだわりました。
AIを活用した新しい業務の実現へ、ビジョンと成功体験を共有できた
AIが業務に導入され、どのような変化を感じていますか?
森野様:メールはAIによって要約記録が均質化されました。特にご意見やご要望など不定形な内容に対して、オペレーター自身がどう応対したかを客観的に記述することは難しさがありました。でもSV目線だと一番確認したいのはそこなんですね。AIがお客様目線の記述に統一してくれて、オペレーターも感動していましたし、SVとしても助かっています。
今出様:電話は「ご意見」「介助申し込み」など一部のケースでとりわけ要約業務に時間がかかっていました。特に「介助申し込み」は該当駅に申し送りするための調書作成も必要です。ここがAIの力で半分以下の時間になったことは大きく、AI導入席数を増やしていくことが楽しみです。
現場業務を変えることに抵抗やハードルはありませんでしたか?
栗山様:慣れないツールに対する不安はありました。ただ「業務をより良くするために最新技術を取り入れるんだ」というビジョンは共有できていたと思います。実際に導入してみると予想以上に効率が上がり、処理件数も増えています。
岡山様:電話後にオペレーターが実際にAIを使って要約し、素晴らしい精度が出た時の達成感は大きかったですね。ELYZAの皆さんも現場にいて、私も横で見ていて、喜びを分かち合うことができましたし、「AIで自分たちの仕事がより良くなる」という空気が生まれました。成功体験を共有できて、プロジェクトを担当した私たちの自信にもつながったように思います。
プロジェクトを通じて学び合い、協働する関係へ
AI技術以外に、ELYZAにどのような印象がありますか?
今出様:現場実証の際にELYZAさんから、現場オペレーターの話を直接聞きたいと打診があり、とても驚きました。オペレーターも生の声を真摯に聞いてもらえて安心感があったと思いますし、自ら次の課題を見つけていく姿勢を見習いたいと思いました。
森野様:プロジェクトの推進力が印象的でした。松浦さんや中村さんはいつもこちらの意図や疑問を汲み取ってくださり、それが次回の資料に反映されていたり、将来的なリスクまで先回りして解説してくれました。現場導入の際の説明もオペレーターに歩幅を合わせてくれていると感じ、非常に心強かったです。
ELYZAからもJWCR様に伝えたいことがあればお願いします。
中村:JWCR様の協働の精神が、我々に多くの気づきを与えてくれたと感じています。ELYZAは先端技術の専門家ですが、業務のリアルを知るのはやはりお客様です。今回皆さまの現場に何度も入らせていただき、一緒につくり、それらが実際に役立つ様子を目の当たりにしたときは、想像していたよりもずっと大きな喜びがありました。
自発的に現場での利用マニュアルを整備いただくなど、言語生成AIを組織的に活用していくぞという気概も伝わってきており、刺激を受けています。
松浦:意思決定の早さにも驚かされています。大きな方向性は取締役の岩﨑様が会議に同席くださり、その場で決まることも多かったですね。現場課題と認識を合わせる必要がある際は、岡山様・今出様・栗山様・森野様がいつも高速、的確に判断してくださいます。
ELYZAも負けじとスピード感を持って先端技術力に磨きをかけ、JWCR様が目指す「理想のコンタクトセンター」を一緒につくっていきたいです。