ひとりの「背広組」の目線で知るパ・リーグ隆盛の道のり
髙木大成といえば、伊東に代わる正捕手候補としてライオンズに入団し、故障に悩まされながらも、打撃でチームに貢献した選手として記憶しているファンも多いだろう。
本書は引退後、球団職員としてライオンズに残り、様々な形でチームを支えることになった髙木大成が、自身のキャリアを振り返りながら、「プロ野球チームの社員」という仕事の裏側を紹介する内容となっている。
髙木のキャリアは大まかに以下のようなものだ。
1996~2005年 選手として活躍
2006~2011年 球団職員としてライオンズに勤務(ファンサービスチーム)
2012~2018年 プリンスホテルに異動し、ホテルマンに
2018~現在 再びライオンズでメディア事業を担当
球団職員だけならまだしも、関連会社のプリンスホテルでマネージャーまで経験しているというのは、プロ野球OBの中でもかなり異色と言える。
髙木がファンサービスチームの一員として球団職員のキャリアを歩み始めた2006年ごろのパリーグは、今ほどの人気はなかった。2004年のストライキを経て、なんとか12球団2リーグ制は維持されたものの、「プロ野球チーム」というビジネスが、まだ発展途上だった時代に、髙木は様々な試行錯誤を重ね、ファンサービスや収益化に取り組む。
「サラリーマンナイト」のようなイベントや、球場内の看板設置、映像配信の自前化やボールパーク構想…。
約20年の間に、パリーグの球団が取り組み、今では当たり前になっている施策が定着するまでの過程が、本書では描かれている。
ドラ1の選手ですら「体が強くない」というプロ野球の世界
一方で、髙木の選手時代についても一定のページ数が割かれている。
故障に悩まされたという事実が示唆しているように、髙木は自身を「プロ選手として体が強くなかった」と語っている。そして、「超一流」となる選手と自身の違いについて、以下のように述懐している。
彼らの傾向として、やはり体が強いのです。最大の特徴は「夏に太る」こと。たとえば若いときに技術的に劣っている部分があっても、それを克服した時には安定的に活躍することができるようになります。
ライオンズファンなら、この記述に大いにうなずかされる人も多いと思うが、シーズン143試合完走するというのは、傍目で見ている以上に体力を消耗するのだろう。
このように、本書は著者である髙木大成の選手として、球団職員としてのキャリア全般を振り返る内容となっている。
そのため、ライオンズファンのみならずパリーグファン、スポーツビジネスに興味があるものならば、読んで損はない内容と言える。
我々ファンが落としたお金が、どのような施策に投資されているのか?あるいは、どうすれば愛するチームによりお金を落とすことができるのか?そんな問いへのヒントを与えてくれる一冊になるだろう。
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