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【米国市況】5月雇用統計で気になる点

2022年5月分の雇用統計が発表された。全体的に気になる点が目立つ内容であった。

1.まとめ

【良い】
・雇用者数増加だが、前月と昨年対比は減少傾向
・平均賃金は減少傾向、良い方向にむかっている(金融緩和)

【気になる】
・全体の雇用者数増加(390,000人増)
・失業率が低水準継続のため、今後の雇用は減速する可能性あり

雇用者数増加は本来、景気をよくする指標だが、今の米国市況だと雇用者数を抑えた方が物価高騰対策には良いでしょう。アメリカが直面しているインフレ、ロシア侵攻、中国のロックダウン問題は連邦準備理事の金利引き上げ決断を左右する土台になります。インフレは連邦準備理事会がコントロールできる唯一の領域なので雇用統計はかなり重要視されます。

2.(ご存じではない方へ)雇用統計とは

米国の労働省労働統計局が毎月発表している経済指標。
失業率、非農業部門雇用者数、週労働時間、平均時給などの指標を発表。雇用者数は農業関係の雇用者と一部米国政府や非営利雇用者などを除いた雇用人数。

参考(2022年5月分、雇用統計):https://www.bls.gov/news.release/pdf/empsit.pdf

発表前に予想値が発表されるが、結果が予想通りであれば株式市場や為替市場が大きく変動することはない。ただ、予想値と大きく差が出てしまうと、相場が大きく変動することもある。


3.雇用者数が予想を上回る

雇用者数(Bloomberg予想)は318,000人の予想に対して、390,000人増加。だが、4月の436,000人と比較すると前月対比は約11%減。2021年5月と比較すると、昨年対比は約13%減

娯楽(旅行業も含む)や医療関係業界は雇用人数を増加したが、小売業界の雇用は減少。

気になるのが予想を超えた雇用者数。アメリカの夏休み(一般的に5月~8月)で短期雇用が増えるのは見込んでいるが、短期・中期的にインフレを抑制しなければ、大幅な金利引き上げが実現される。雇用者数はもう少し低めに抑えないと積極的な金利引き上げが実行されるかもしれない

4.失業率はコロナ禍前の水準に戻る

全体の失業率(16歳以上)は3.5%の予想に対して、3.6%であった。3月と4月は同じく3.6%で横ばい傾向。

参考(2022年5月分、失業率):https://www.bls.gov/news.release/pdf/empsit.pdf

失業率は継続的に低水準、雇用数増加は今後落ち着くかもしれません。


5.平均賃金上昇の方向性は◎

前月対比の予想が0.4%増に対して、0.3%増と発表された。昨年対比は5.2%増。賃金ベースだと4月は31.85ドルで5月は31.95ドル、10セント増加。

私が平均賃金を見るときは年間ベースで確認します。それぞれの増加率分を1年間の12ヵ月でかけ算するだけです。(季節調整なし)
予想は4.8%(0.4% × 12)に対して、結果は3.6%(0.3% × 12)であったが、今の米国市場を考えると5%を下回るのは理想なので平均賃金は良い方向性に進んでいると思います

もし平均賃金が上昇したら、Federal Reserve(連邦準備理事会)が金利を大幅に上げる可能性は十分あるとみています。なぜなら賃金が上昇すると、物価高騰は落ちず、連邦準備理事会は金利を引き上げて経済緩和を試みる政策をうつでしょう。

参考資料:
https://www.bls.gov/news.release/pdf/empsit.pdf
https://www.wsj.com/articles/may-jobs-report-unemployment-rate-2022-11654195243
https://www.cnbc.com/2022/06/03/jobs-report-may-2022-.html




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