2022年10月22日

朝4時半、起床。
なぜこんなに早起きをしているのかというと、泊まりに来た友人二人を連れて「中華蕎麦 とみ田」へ向かうためである。とみ田は松戸市にある有名中華蕎麦屋。中でも目玉メニューのつけ麺は絶品と評判で、いつか行きたいとずっと思っていた。しかしこの店は人気ゆえに記帳予約制で、フラッと行って食べられる店ではない。そのため、こうして朝早くに眠い目を擦って並びに行ったのである。
予約開始である8時に記帳して11時開店時の予約を取り決めることに成功した。3時間ほどマクドナルドやゲームセンターで時間を潰し、眠気と空腹でドロドロになりながら小綺麗な店へと入っていった。
小綺麗なのは外観だけでなく、むしろ店内はさらに綺麗だった。整えられた厨房、落ち着きのある狭いカウンター、綺麗な箸置きやガラスのコップ等、視界に入るもの全てに品がありこちらの背筋もスっと高く伸びた。そこで出されたつけ麺と角煮が乗ったミニ丼にはオーラがあった。ブランディングされた汚れなき美品。それにこれから挑むのだという緊張感。普段つけ麺を食べない僕にとっては何もかもが想定外で、戸惑い半分興味半分といった感じだった。
中太の麺はこの上なくモチモチしていて、美味しかった。超濃厚のスープと上手く絡まり合い、僕の中に「つけ麺」という概念を強く刻み込んだ。チルド食品にとみ田が監修したつけ麺があるのだが、それとは全く別物だった。僕がつけ麺だと思っていた食品は実はつけ麺ではなかったのだと思い知らされた。スープの中にはメンマが沈んでおり、香り高くこれもまた素晴らしかった。幼い頃からあまりメンマが得意ではないのだが、このメンマは"イケる"メンマだった。そして別皿に並べられた2枚のチャーシュー。燻製の香りが強いものと類を見ない柔らかさのもの。この2枚の異なるチャーシューがアクセントとして上手く機能しており、「つけ麺」をさらに贅沢なものへ仕上げていた。最後柚を加えたスープ割りは、今までの濃い味とは違い、爽やかさ、温かさが身体中に内側から広がるとてもスッキリした味わいで、食事というイベントを美しく締める良い1杯となった。

いやはや、驚いた。これほどまでに美味いのか。記帳予約制を取っていて、それでも即日満席になるというのはどういうことなのだろうかと思っていたが、これは満席になるべくしてなる店だと思った。1人で行くには(タイムスケジュール的に)荷が重いので、また友人を連れ立って行きたいと思った。


午前中にタイトなスケジュールをこなしたのは、もちろん確実にとみ田のつけ麺にありつきたいからというのもあるが、後ろに予定を控えていたからでもあった。
東京都府中市日吉町。ここには東京競馬場という施設がある。中央競馬のビッグレースは基本的に日曜に行われ、それも今週は阪神競馬場で行われるということから、比較的人が少ないであろう土曜日の東京競馬場に友人と訪れた。
僕はしょっちゅう日曜日になると競馬のビッグレースの感想を綴っているが、中央競馬の競馬場に足を踏み入れたことはなかった。抽選申込みが必要な上に、レース自体はテレビカメラの良い画角の映像で観られるからである。ただ、競馬場というのはひとつのアミューズメント施設と呼ぶことが出来るほど、競馬観戦以外の要素を数多く含んでいて人と遊びに行くのには良い施設である。馬車に乗って散歩することが出来たり、グッズを買ったり、飲食をしたり、今ではやっていないがふれあい体験が出来たりなど、馬関連の様々な娯楽で溢れており、家族連れで訪れる人もいる。そういう周りの施設を楽しみながら、本物のレースを一目見ようということで東京競馬場を訪ねた。
京王線府中競馬正門前駅を降りてすぐ、とにかくその大きさにまず驚かされた。地方競馬場には行ったことがあるが、やはり中央と地方は全く違うということをこの時点で感じさせられた。迎えてくれたのは昨年の天皇賞・秋を制したエフフォーリアと横山武史ジョッキーがでかでかと載せられた天皇賞・秋の宣伝ポスター。競馬場に来たんだな、としみじみ思った。そして長く広い通路を抜け、眼下にバラ園などが広がっていたのを見ながら、ようやくメインの施設にたどり着いた。とにかく大きい。その一言に尽きた。セブンイレブン、俺の生きる道、ファーストキッチン、ペッパーランチ……数々の店が立ち並び、一日過ごすには何も困らなさそうだった。そしてターフィーショップには今までネット通販で買っていたぬいぐるみ達がズラリと並んでおり、ついうっかりドウデュースくんのTシャツを手に取ってしまった。店だけではなく当然無数の馬券発売機やテレビモニターが並んでおり、競馬をする上での施設も整っていた。
そして通路を抜けると___________鮮やかな緑色のターフがそこに広がっていた。ここを走っているんだなぁ。別に大したことではないはずなのに、その緑の美しさに感極まった。逆側へ戻り、パドックを見に行った。かなり近い距離で馬が厩務員に連れられて歩いており、その体表の質感と馬の発する生命感に驚いた。「生きているんだな……」と感じた。もちろんそんなことは知っているし、競馬という公営ギャンブルに付きまとう倫理的な問題を理解した上で楽しんでいるつもりではいるが、こうも間近で緊張したり反対に甘えていたりする馬を目の前にすると感じるものがあった。
「パドックを見て馬の様子を判断して馬券を買え」とはよく言うもので、それを試してみたが、結果は惜しくも外れてしまった。しかし、正面ゴール前での馬の躍動と観客の「行けぇ!」のような叫び声とで包まれたこの空気感はテレビの前で1人で見ていた時とは全く別物で、充実感があった。

……来週は天皇賞・秋。今日でさえかなり多かったのでどうなることか想像もつかないが、行けたら行こうと思った。競馬場はなかなか、クセになる施設だ。


とみ田に競馬場と、朝から随分QOLが高かったのだが、これで終わりというわけではない。夜にももう1つイベントを残していた。
「283 PRODUCTION UNIT LIVE MUGEN BEAT」。アイドルマスターシャイニーカラーズの2.5次元ライブだ。アイドルマスターシャイニーカラーズ、通称シャニマス。以前はゲームをしていたが、最近はもうやらなくなってしまい1年以上前追えていない状況が続いている。しかしながら友人に誘われると行きたくなってしまうから不思議なものだ。セットリストの予想ではそう最近のものはやらなさそうで、古参・老害の僕でも充分楽しめるだろうというということだった。
実際に、古参・老害の僕でも充分に、充分すぎるほどに楽しめる内容だった。曲数が少なくMCやバラエティコーナーで時間を潰すということも昔はあったが、今や人数・曲数ともに増えたことで「ライブ」らしくなったし、パフォーマンスや演出が素晴らしかった。客の数もコロナ禍からの緩和で満席で、声は出せずとも後方から見るサイリウムの海はとても綺麗だった。なかなかバンドのライブではサイリウムを見ることがないので、同じ音楽ライブでもこうした特徴の違いがあるのは見ていて面白い。
シャイニーカラーズはノベルゲームなので、キャラクターへの情が他のアイドル育成シミュレーションゲームと比較しても大きくなりやすいと僕は考えている。その情が2.5次元ライブで声優のパフォーマンスによって引き出されるから、1年以上前経ってもなお熱くなれるのだと感じた。
シャニマスをやる時間的な余裕と金銭的な余裕が今の僕には無いので、これを機にもう一度、というのが現実的には難しい。しかし、今日のライブで「いつでも帰って来れるな」という安心感を得ることが出来た。だってほら、こんなにも僕はWandering Dream Chaserじゃないか。

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