赤ちゃんも犬も、僕が知らない『僕』を見る

バイトで赤ちゃんを抱いたお客さんを接客した。対応中、ずーーーっと赤ちゃんは興味津々な目をして僕を見つめていた。とてもやりづらかった。去り際、微笑ましそうに申し訳なさそうに、お客さんは僕に軽く会釈した。僕も微笑みつつ申し訳ない感じで会釈を返した。こんな感じのことが、割としょっちゅうある。僕ひとりしかいない時ならまだしも、複数人いる時でさえ僕を選んでひたすら見ていたりする。
赤ちゃんとは言えないくらいに成長した子どもにも見られる。何なら、コミュ力の高い坊やは僕によく分からないことを話しかけてくる。僕は赤ちゃんとか子どもがどうも苦手で、どう対処していいか分からないからやめてほしい。
もうひとつ言うと、同じ要領で犬にも好かれる。前を歩いている人には無反応だったのに、僕とすれ違う時はめちゃくちゃ見てきたり向かってきたりされるなんてことがある。犬は好きなのでこれは嬉しい。

ただ、別に僕は人あたりが良いとかいつもニコニコしているという訳ではない。むしろ陽か陰かで言ったら間違いなく陰のオーラを発している。それはもう言うまでもない。あまり社交的とは言えないし、そんなに友達が多いほうじゃないし(というか少ないし)、人を惹きつける側の人間ではない。
だから、とても不思議に思う。なぜ人間の大人からはそうでもないのに、赤ちゃんや犬からは興味を持たれるんだろうか。
もしかしたら、何か直感的に思うところがあるのだろうか。理性が発達した大人には見えない何かが、赤ちゃんや犬の目には写っているのかもしれない。いや、犬はそんなに目が良くないから匂いなのかもしれない。それが何かは僕には分からない。僕の知らない『僕』を感じとって懐いてきてくれているのだとしたら、何とか自覚したいものだ。

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