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秘境の地、西パプア州で原住民とキャンプしてみたらヤバいくらいワイルドだった話

インドネシア・パプア州の民族といえば、赤道直下の熱帯地域に適応した真っ黒の肌に広がった鼻が特徴的な顔つきをしている。上半身裸で男性は陰部だけをコテカと呼ばれる長いヒョウタン等で隠した姿、女性も上半身裸で植物系のスカートのようなものをまとった姿や、派手な鳥の羽や鳥獣の骨や歯などを用いた装飾品をまとい、弓やヤリを持った姿をイメージする。確かに、ちょっと前まで(私の先輩が初めて西パプア州に行ったとき。20年前とか?)は、コテカ姿の人が街を歩いているのも見かけたらしいが、今は見る事がなく、普通に洋服を着ている。上半身裸の女性を田舎の村でちらりと見かけた気もするが、着ているもので驚いたことはあまりない。

西パプア州について今(2020年12月)大使館の注意喚起を見ると、「パプア州及び西パプア州では,パプア系住民への差別に対する抗議デモが両州内の各地で行われており,一部は暴動に発展し治安当局との衝突が発生していますので,十分注意してください。」とある。要するに渡航にはちょっと注意が必要ですよという地域で、ラジャアンパットという有名なダイビングスポットは知られ始めているものの、行く機会がある人は少ないのではと思う。
私が行った秘境の地というのは、ソロンという飛行場がある街からスピードボートで何時間も行った、バードヘッド半島という鳥の頭の形をした半島の、鳥の頭のちょうど真ん中あたりである。
 ”何故、ここに行ったのか”という話しは後述するとして、原住民とのキャンプがどんなだったのかという本題に入っていこう。

チャーターしたボートを降りて、海岸についた。ソロンの市場で仕入れた7日分くらいの食料や自分達の荷物を下ろした。飲料用&料理用の水を確保する必要があるため、キャンプには川の横を陣取る。もちろん周囲には人っ子一人いず、手付かずの大自然が広がっている。バリやロンボク島などインドネシアの海岸といえばゴミが多いが、この広大な海岸にはゴミは一つも見えず人工的なものがまず見当たらない。

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海岸について自分がやったことはまず、テントを張る事。唯一いるもう一人の日本人と協力して、サシバエから身を守るためのテントを張る。サシバエは小さい吸血昆虫のハエで、刺されると蚊より痒くてなかなか治らない(私の場合、一週間くらい痒さが続く)。テントを張り終え、自分の荷物を運び終えて周囲を見渡すと、着々と生活できるスペースができあがっていく。
現地の人はみんな腰にナタを下げているのだが、そのナタを使って海岸の背にある森から木を伐り出し、適当な長さにしたらナタで尖らした方を砂に刺して、その上に木を渡し、木の皮や蔓で木同士を固定する。そこに持ってきた青いビニールシートを組み合わせて、屋根だけのテントがあっという間にできた。その下に食料や荷物などを避難させる。


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女性は茶色く濁った川の水を大量に組み上げ、飲料用の水を確保している。このまま放置して上澄みだけを飲料水として料理に使うらしい。しつこいようだが、飲料水はこの茶色い水を使うのだ。上澄みとはいえ、綺麗な水しか飲み水にしたことない自分にとっては、ちょっと衝撃であった。料理のコンロ台にはバナナの幹を伐り出して台座にしている。バナナの幹を2本並べてその上に鍋を置き、下にできた隙間に薪を入れて火をおこす寸法だ。なるほど、バナナの木は水分を含んでいるので焼けこげてしまわないのであろう。こうしてコンロ(=焚火で料理できるところ)は2つできあがった。
とにかくここまでの作業が素早い。
一通りキャンプの設備を作り終えたら、弓や鉄砲(?ライフル??)などを持ち、男子陣は散りじりに森の中に消えていった。

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料理は現地の女性を雇い、その方々に作ってもらう。西パプアの市場で仕入れる食料は、米とインスタント麺、調味料関係である。野菜は以前買ったことがあるが、一度も料理に出て来なかったのでもう諦めた。野菜を食べたくて食料置き場に行ったら、一緒に来た村の女性たちに速攻で全部食べられていたので驚愕した衝撃は忘れられない。私のキュウリ。。。
お肉は男性陣が周辺で調達してくれる。鹿、ブタ、鳥、魚、キノボリカンガルーなど。野菜はパパイヤの花や葉が多く(苦くて美味しい)、たまに空心菜を取りに行ってくれたり、バナナやマンゴーなどの果物も食べられる。とにかく、女性たちが出してくれたのは「米と肉」が多かったような記憶である。
なので、日本から味噌汁やふりかけ、青汁などを持って行って野菜を補強する。それとパプアに行くときに忘れてはいけないのは、お酒である。一日の大変な作業を癒してくれると共に、飲んでいると現地の人も飲みたがり、ともに楽しい時間を過ごせる。インドネシアはイスラム教徒が多い国であり、飲酒には厳しいが、西パプア州の人達はキリスト教徒が多く、お酒は高価なので、お酒をふるまうととても喜ばれる。

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このキャンプで一番の衝撃事件、それは川で水浴びをしていた時に始まった。1日の仕事を終え、夕暮れ時に例の茶色く濁った川で水浴びをしていた。布をまとったままなので男女構わず水浴びをしていた。その時、川からモワッとでかいものが何か現れて沈んでいなくなった。
え。。。私は、近くにいたボスに「今、何か大きいものが動いてたんですけど!」って言ったら、ボスは「え?そう?」とか言いながら、さっさと川から上がろうと準備している!
よく見たら、周囲には私しかいない。もう薄暗いし慌てて川からあがった。
翌朝、テントを出て衝撃。大きなワニの足跡が海岸の上の方から海に向かって這ったあとが、テントの近くに。地元の人曰く、暗い間にイリエワニが海岸裏の池から海に行き、夕方あの水浴びしていた川を上って池に戻るという。”おいおいおいおい、水浴びしているの見た時に言えよ!”...という、ワニもだが地元の人の対応にも驚愕な経験であった。

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なんで、こんな僻地に来てこんな体験をしたのかというと、私の仕事はウミガメ保全である。このワイルドな地に、オサガメという、ウミガメの中でも特に絶滅の危機状態にある(中でもこの太平洋のオサガメは絶滅が危ぶまれる)種の保全をやっている。このオサガメ、世界一デカいウミガメで、しかも見た目がちょっとおかしい。甲羅はいわゆる亀らしい六角形の固いウロコではなく、柔らかい皮膚が薄い骨格の上にのっているだけである(甲羅の模様は頭から尻尾に向かって7本の縦線があるだけ)。クチバシもWみたいな不思議な形をしていて、このどでかい図体をクラゲを食べて賄っている。そのオサガメを、狩猟民族である地元の住民が守りたい・増やす手伝いをして欲しいと問い合わせがあったのがここで活動を始めたきっかけだ。
オサガメとは?どんな活動??

このnoteを書いた理由は、西パプア州の海岸で私が受けた強烈なワイルド珍体験をお伝えしたっかたとともに、この美しい野性味あふれた海岸で奮闘する一人の男性を紹介するためである。彼は、私が勤めている認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)の創設者であり、今はオサガメをメインの担当として働いている。彼がウミガメの仕事にまつわる独り言を書き続けたものがある。これを是非、この記事を見た皆さんにも知っていただきたく、一つだけ紹介する。

■ ウミガメの独り言
オサガメ保全のこれから~僕がオサガメを増やすことにこだわる理由

我々の仕事は、孤独である。そんな、孤独な我々の書いた記事を読んで、応援してくれる人がいれば幸いである。

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↑写真:ワニの足跡

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