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シンガポール下の島々調査記~調査スタッフの日記より(Part3)

これは、とあるスタッフの日記を抜粋したものである。
シンガポールの南に位置するインドネシアの島々を回った時の、とある1日の日記より。
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ここ何日かかけて、リンガ島周辺の小島を巡り、タイマイ(ウミガメ)産卵状況の調査をした。
この調査は20年前から10年おきにやられていて、私は3回目となる20年目を担当している(毎回違う人が担当)。1回目は産卵場所がわからないから広範囲を調査し、2回目となる10年前は1回目の結果を元に産卵が多い島だけを調査する方針だった。そして今回、私の回は、経年変化を見るために2回目の調査地はマストで訪問し、プラス「せっかく行くんだから、産卵が少なくても過去に産卵があった島も見たい!今もまだ少ないか確認することで、より現状に即した調査結果にしたい!」という方針。
ジャマール(現地パートナー団体スタッフ)に「追加でこの島とこの島にも行きたい!」って話しをしたら「13時半までに高速船に乗らなきゃだから、時間あったらね~」って、若干嫌そうにされたんだけど、最終的には”主張を突き通して良かった~”って結果に。

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絶対訪問予定の島に行ったら、「えー?ここ??本当に産卵できるの??」って感じの砂浜がほとんどないビーチで、「いやいや、奥に見える島の間違いじゃない?」なんて言いながら上陸してみたら、確かに一応少し産卵している。でもどう見ても産卵できる場所が少なく、高波で砂がもってかれて10年前とはビーチの形状が変わったらしい。で、奥に見えてるいいかんじの島が私がついでに行きたがっていた島だと分かり、行ってみることに。

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この島、10年前は6つくらいしか産卵跡がなかったのに、今は42も産卵があった。20年前は10軒の家屋があったらしいから、人気(ひとけ)がなくなったせいなのかもしれない。チャーターした漁船の乗組員が実はウミガメの卵を日頃から取っている人たちだと発覚して、聞いてみたら「今、この辺ではこの島が一番産卵多い」とのこと。

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そして、もう一つの“ついでに行きたかった島”にも、わりと産卵があった。
10年も時間がたつと砂やビーチの環境は変わるし、タイマイも近くにある島なら数週間おきの産卵の中でも、産卵する島を変えることがあるから、”産卵しそうなビーチが近くにある場合は同時に確認しないとね~!”って、改めて感じた調査でした。
あと他にも、私だったら(固いから)穴掘りたくないサンゴダストだけの浜でも産卵がけっこうあることや、普段カメの卵を取ってる人と砂浜を歩いて「ここに1個、ここは2個…」ってカメの巣を同時に指差しカウントしてて、改めて私の見立てで合っているんだなって確認もできたり、逆に「ここもカメの巣?」ってとこは、「それは人が植物を植えた跡だよ」って教えてもらえたりして、今回の調査もまた勉強になった。小笠原での調査もそうだけど、こういう現場経験の積み重ねでウミガメのことが分かってくる。そして、新しい巣があると木の棒で刺して「もう卵取られてるー」って確認してる、地元漁師の日常も垣間見ることができた(ウミガメ卵は食用に高く売れる)。

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ここ、リンガ島周辺も、今でも(人に見つかった卵は)全部取られていることが分かった。
卵を盗ろうとしたのを注意をしたら、「今ぼくたちが卵取らなくても、誰かしらが取るよ」と言われ、不思議ととても納得できた。周囲には村があるし、遠くからこちらをうかがっている人もいるから。ここに来て、地元の人と接して空気感を感じ、歩いて回ると分かる。彼らにとってはウミガメ卵をとることはとても日常。漁の対象種の一つ。見つけたら、その日はそれだけでわりと良い収入につながってラッキー。でも、残念ながらここのタイマイは数があんまり多くないし、誰も気にする人がいないから、このままゆっくり、いつかはいなくなってしまうんじゃないかな。ここは、そういう状況。

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