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【入院日記】 「なかなか過ぎない夜(前)」

 入院からちょうど2週間後の9月4日に手術を受けた。前日の晩執刀医から詳細な説明を受けたが、その時になってこんな大手術を受けるのかと気づいたくらいである。前日には妻が買ってきてくれたシェーバーで伸び放題だったヒゲを剃り、ああもう本当に手術は近いんだというリアリティを感じ始めていた。

 当日の午前中にはまだわんことSkypeで会うくらいの心のゆとりはあった。予定時間が来てベッドごとそのまま手術室へと運ばれて、頭に防塵のための帽子を被せられ妻とはここで離れる。

 手術台まで運ばれる時には怖くて目を閉じていたが、「これから麻酔の薬を入れますよ」と声をかけられ、何度か酸素マスクを動かされたかと思うとそれより後のことはもう覚えていない。

 麻酔がすっかり効くとうつ伏せの状態にされて手術は始まった。状況については僕よりも妻の方が知っていると思える。

 手術が始まると妻は病棟に通され、そこでじっと待機することになった。よくドラマなどでは手術室の前で神妙な面持ちで待たされ、『手術中』というランプが消えるとすぐに執刀医と共に手術室から出てくるシーンなどを想像するのだが、そんなものはドラマの演出なんだろう。

 4時間ほど待たされている間、妻はそれは気が気ではなかったらしいが昼食も取っていなかったので2階の食堂で大して美味しくない昼食を食べ、再び病室に戻るとあとは日が暮れていくのを待っていた■


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