有川浩さん『ストーリー・セラー』

図書館で偶然出会った本。
装丁が綺麗で、一目惚れした本。
一気に読んで、感動で身体が震えた(震度6くらい)本。
誰かに勧めずにはいられない、でも誰にもこの「良さ」を知らせたくない、
それでいて「誰かとこの本の良さを語り合いたい」、そんな本。
この本に出合って、私は「本の帯」まで保存しておくことの素晴らしさを知った(それまでは帯のこと好きじゃなかった(サクラダリセット3参照))。
この本の帯を本に糊付けした(糊付けしたのに半分くらい「ない」んですけど、なんでー?)

※本が手元にない状況で書いたので、原文そのままではないことをご承知ください。

三人称としての「彼」だった頃、なんて記述が好ましい。
そのひと手間に、有川浩さんの「人間としての優しさ」を感じる。

side A

 物語は「医師の診察」から始まる。
淡々としあまり人間味を感じさせない医師と、妻の病状を理解しようと懸命な彼がいる、その対称性が私は好きだ。声を荒げたくなる気持ちわかる、医師が「そう」伝えるしかできないのも少なからずわかる、
 そして「ことの本人」は置き去りにされてしまいがちだよね。
—―ふと思う、いろいろな「作家さん」は、どのように登場人物を描き分けているのだろう。


人は何人たりとも、誰かの「心の中」に侵入することは許されない。侵入されるなんて思ってもいない人の心に土足で入るなんて、ゆるされない。
 (予告してあったら/土足でなければ、という問題ではない)
それが「つい一目置いてしまうような(理由は人それぞれ)」相手だったら尚更ね。
「男らしい」は褒め言葉であることが多いのに対し、「女らしい」が褒め言葉であることは少ない。半分もない気がした。
 (男尊女卑の表れか? と憤るけど、本作品と関係ないのでやめとくね)
私もかっこいい女性になりたい。sideAの女性は、私の憧れ。

私でさえ「普段使わない表現(言わんとすることはわかるけど)」をたくさんするから、
二人の会話を読んでいて楽しい。それが「あの事件」の辺りであろうとも。

「飛ぶ」という表現を選ぶところが、好きだ。
実力で黙らせる辺り「男らしい」「かっこいい」個人事業主で、そして文句を言わずやりきる辺りが、素晴らしい。好き。大好き。敬愛しています。

たちの悪い親戚が増えて以降

彼女の矜持が炸裂している。たまらなく好き。

どれだけ彼女を傷つけたら気が済むの…
「病人」なんだよ?健常だったらいい、ってわけではないけどさ。
 (↑自身も身に覚えがあるので強くは言えないけど、
  でも「自分も反省しよう」となる。人への負担を減らさないと、ね…)

ブレーキをかけられない身体になった。だから「医療」に頼る。
『脊髄の神経を切断する』という決断をした、祖父の家族。
「眠るように静かに」逝く人はどのくらいいるのだろう…


彼女がした「遠出」が、その覚悟が、そしてそれを詰る彼が、
それぞれ「生きて」いる。

「あなたがすき」 「きみがすきだ」
私もこういう「愛」に出会えたらと思う。



side B

特殊な副業。バックステップ。「ナイスリアクション」。
自分から積極的には情報を開示しない彼。
彼の優しさに翻弄されつつも、彼に「甘える」ことで恩返しをする彼女。

突然の電話

彼女の思考回路を垣間見ることができて嬉しい、といったら失礼かな?
運転免許証があるから「自分で行くことができる」けれど
「今運転したら事故を起こす」という発想でタクシーに切り替えたのは凄いと思う。そこで「立ち止まる」ことができて、さすがです。

タクシーの時間は?「今すぐっ!」
お前のような奴が。俺がでかいから俺がえらい、みたいな考えの奴が。
切羽詰まった「極限状態の人間」を描いておられて。
  真っ暗な家だと気が滅入る。
  あなたが知ろうとしないなら言わなくていい。
人間味があって、とてもよいですね。


交通事故に遭って、良かったのか悪かったのか。
泣けるのは今しかない。
ここ一番のときに詣でて、叶わなかったことがない

彼の願いを全力で支援する。
あたしはあんた(神様)に喧嘩を売った。
 「逆夢」を信じる、という表現。


愛の形はそれぞれ。好きすぎる。
「類は友を呼ぶ」この言葉のありがたみを感じたのは、sideBでした。




ちなみに、私の最大の推しポイントは「あとがきがない」こと。
最後にゾクッとさせて締めくくるの、心臓に悪くて、たまらなく好きです。

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