【バカと言われブスと言われ】



皆さまにご案内いたします。

この飛行機は本日すべてのクラスで
満席のご予約を頂いております。

他のお座席との比較はご遠慮ください。

ご自身に与えられた尊いお席で
快適な空の旅をお楽しみくださいませ。

✈️



「比べなくて良い。
 あなたは他の誰とも違う。
 だから比べることは価値がないのだ。
 あなたはあなたで良い。」


モンゴルのことわざ。

技能実習生の授業で、自分の国の好きな言葉をかんがえてもらいました。

(私の教室はモンゴル人とベトナム人と女と男が入り乱れた無法地帯となっております)


ベトナム人男子たちには
「好きな言葉」というテーマが難しい様子。
うーんうーん頭を抱えたりガヤガヤふざけたりしていました。

(彼らには実習現場を想定して命令口調で指示しております)

「さぁさぁ!何でもいいからさっさと書け!
 何でもいいから!!
 ビールでもバーバーバー(ベトナムのビール) 
 でも何でもいいからとにかく書けっ!!!」

ベトナム男子のケツを叩きまくっていると、
一人のモンゴル人の女の子がこのことわざを発表してくれたのです。


彼女はとても美しく聡明な女性。

そんな彼女でも人と自分を比べることがあるそうで…。

この言葉は、
彼女にとってお守りのようなものかもしれません。


私はまた、
ある出来事を思い出していました。


🇲🇳


子どもの頃から私は
自己肯定感がとても低い人間でした。


人に褒められれば自分は最高の人間。
他人のほうが評価されれば自分は価値のない人間。

自己肯定には常に他者を介在させなければなりませんでした。


さかのぼることCA全盛期、
東京でよく飲みに行く年上の男友達がいました。

彼は玉山鉄二さんを2、3発平手打ちしたような二枚目で、モードなファッションなのになぜか山奥に暮らす木こりのような隠居感をまとった男でした。

その穏やかな雰囲気とは裏腹に
木こりはハッキリ物を言うタイプで、
私にとって頼りになる兄貴のような存在でした。

その頃、
私が見ていたのは華やかで空虚な世界。

上辺だけで優劣を付けられ、
私はいつも人が期待する何者かに
ならねばならないと感じていました。


新宿の古ぼけた居酒屋の一角で酔いどれながら、
やさぐれの私は木こりにたずねました。

「ねぇ…私って人と比べてカワイイ?」

木こりは即答しました。


「いや、普通」


私は欲しい答えがもらえるまで続けました。


「どちらかと言えば?!」


木こりは面倒臭そうに答えました。


「どっちでもねーよ。普通」


私は次第にイラついてきました。
こういう時は嘘でもカワイイ言うもんやろと。


「あーもう!!!どっちよ?!
 カワイイ!ブス!どっち…

「じゃブス!!!!!!」


食い気味でした。


「お前は可愛くない、ブス!!」


木こりは念押ししました。

私は面と向かっての悪口にショックを隠せませんでした。(※自分のせいです)


そんな私を笑い飛ばすように木こりは言いました。

「お前ほんとバカだな!!
 お前が持ってるのは
 顔より人間性の可愛さですよ。
 ほんとにいい女になりたいなら、
 人と比べられるものより
 比べられないものを磨きなさいよ」



🪓



木こりの言葉は斧のように私の心に刺さりました。

木こりは薪ではなく、自己肯定できない私を割ってくれたのです。

人と比べていたのは、
人に私を比べさせていたのは、
まぎれもなく私自身だったのだと気づかせてくれました。



🇻🇳


ちなみに…
ベトナム男子の自己肯定感といったら…。


来日したばかりで全く日本語が話せない状態でも必ず聞いてきます。


「あのせんせいわたしハンサムでっか?」


それはもう流暢に。
計算し尽くされたアングル、最高のキメ顔とともに。


こう聞かれてはyesと答えるほかありません。

私は木こりにこの技を繰り出せば良かったのです。



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