さよなら引越荷物たちよ(イギリスでの国際小包紛失譚)
現在、イギリスにて研究者(海外学振ポスドク)をしている。先日、日本郵便の国際小包として発送した引越荷物の4箱が紛失するという事件があったので記録する。いくらイギリスの配送事情が悪いとはいえ、これはかなり運が悪い部類に入ると思う。もちろん、より紛失リスクの低い安全な国際引越サービスはいくつも存在するものの、会社からのサポートの無い海外赴任においては、国際小包を使わざるを得ない場面が存在するのも事実である。本稿が、それでも国際小包による引っ越しに挑む皆様の助けになれば幸いである。
発送時点
できたこと
全ての中身を袋に入れて防水
段ボールは角などを2重にして補強
段ボール表面に宛名を直書き(ラベル脱落対策)
段ボールは梱包用ラップでぐるぐる巻きにする(防水および荷物脱落・抜き取り対策)
トラッキングのメールが来るように設定
無事に届いた別便の箱を見る限り、これらの対策は非常に効果的だった。
ちなみに、別件で「小形包装物」として2 kg以内の荷物を送ったことがあるが、この方法はなんとトラッキングナンバーが発行されないので絶対に使用するべきでないと思った。
できたかもしれないこと
紛失防止タグの封入
→ 紛失防止タグ自体がそこそこ高価で、全箱に入れると値が張るのでやらなかったが、同時に発送するうちの1箱に入れておけばよかったかも?送り主を日本に住んでいる人(家族など)にする
→ 荷物の不着等が起こった際の日本郵便への調査請求は、送り主がやる。海外在住の自分を送り主にしていたため、委任状を書いて受理してもらった。もう少し額面を大きく書く
→ 盗難のリスクと不当な関税の危険を考えて控えめに書きすぎた。国際小包の保険制度の理解
→ https://www.post.japanpost.jp/int/service/option/insurance.html
配送業者による輸送中の事故は、駐在保険等のカバー範囲外。また、保険なしの国際小包の補償額は上限がある。保険の仕組みも非常にわかりづらい。どうせなら、紛失の場合にもらえてうれしくなるくらいの金額を掛けておけばよかったのかもしれない?そもそも、日本郵便のお問い合わせ番号は、海外からはかけられない(!)ことの理解
→ 日本側にもそのような落とし穴があったとは。本当はヤマト運輸の留学宅急便を使いたかったが、現在休止中とのことで、使えなかった。ヤマトの国際宅急便は身の回り品を送らないでと明記してあったので、やめてしまった。ヤマトの単身引越も検討したが、単身引越の定められた箱数よりも少ないと見積もったので、日本郵便の国際小包にした。結果として荷物は結構多かったので、さらにもう少し荷物を増やして、ヤマトの単身引越にすればよかっただけの話なのである。
配送ミスの発覚
Parcelforceのウェブサイトで随時追跡、家にいた
ウェブサイト上で「配送完了」の表示になったが知らない場所に配達されており(配達完了のところに写真が添付されている)、事件が発覚した(この時点では箱は写真で見る限り変形もなく綺麗な状態であった)
パーセルフォースへの対処術
できたこと
ウェブフォームを探して連絡。これは意味なかった。
カスタマーサービスへすぐに電話。驚くべきことにパーセルフォース全体で電話番号が1個しかない。自動音声を繰りぬけて人間と話すのは大変だがなんとかできた。再配達の依頼をえらび、トラッキングナンバーを言うのだが全然音声認識がされない。やっと認識されたところで「If you want to give feedback to us…」みたいな感じで言われてそれを選んだらなんと人間につながった。ほかにやり方あったら教えてくれ。
1回目のカスタマーサービスの人はまあまあ丁寧に対応してくれたが、(後からわかったことだが)普通にその情報は間違ってた。(家から数マイル離れたところに配達されたと言われた)
おそらくその人は4日後くらいに電話をくれた。ちなみに取れなかったが、その後はかかってこなかった。驚くべきことにパーセルフォースは非通知で電話をかけてくるので本当にパーセルフォースなのかわからない上に、かけなおすこともできない。すごい。
2回目のカスタマーサービスの人はより適当で、さらにその情報もまちがっていた
荷物を担当するデポ(London central depot)に行って問い合わせた。えらい小さい場所で窓口が1個しかないので若干待ったが、ここの人が一番まともだった。だが、デポの営業時間よりもかなり早くトラックドライバーが帰ってしまうのであんまり情報得られず。ちなみにこのデポの人も後日電話をくれたがやっぱり非通知だった。
隣人の呼び鈴を鳴らして、「私の荷物持ってない?」と聞いた。持ってなかったけど、「あっちの似た名前の通りによく間違って配送される」と教えてくれた。もっと早く聞けばよかった
その通りの家にいって呼び鈴を押して住人と話したところ、配送ミスの先がその人の家であることが、写真からわかった。その人は入居したてで、配送ミスがあった日は工事が行われていたことがわかった。その人の家から、箱の中に入っていたはずのもの(参考書)が一部だけ出てきたので、盗難と判断し、警察に届け出た。
警察への届け出はオンラインでできた。
できたかもしれないこと
正直あまりない
隣人にもう少し早く聞いてみてもよかった?パーセルフォースへの問い合わせからは得られなかった、「間違って配送されがちな通り」の情報をもう少し早く入手できていたかもしれないので。
パーセルフォースに問い合わせるんじゃなくて、最初からデポに行って、有力な情報なり有益な対処が取られるまで粘ればよかった?(けれどもデポの人も当たりはずれはあるだろうしなぁ。しかも交通の便悪いところにある。)
まあ、ドライバーも「正しい場所に配達した」と思い込んでいるわけなので「どこに配達した?」と聞くんではなくて「どういう場所で誰に手渡した」のかを聞いてもらうことでしかミスを発覚させられないことがわかった
まとめ
イギリスの配送が無茶苦茶な話はいくらでも出てくるものの、実際に(通販ではない)荷物がなくなる話はあまりなかったので、正直、頑張れば荷物は見つかるだろうと思っていた。しかし実際には「配送ミスの上で盗難」というダブルコンボで残念な結果となってしまった。9000 kmを船便で旅してきた荷物はあと数百メートルのところまで来ていたわけなので、何かできたのではないかとどうしても思ってしまうが、仕事もしているし、この地にまだ慣れても居ない身なので、現実的ではないだろう。
色々なリスクのある配送方法なのは様々な文章を読んで承知していたし、そのリスクを取ってでも送ろうと思ったわけだが、シンプルに賭けに敗北したという話である。オッズを読み違えたかと言われるとそうではないような気がするが、海外引越の準備というのはとても大変なので、準備にいっぱいいっぱいで、想定されるトラブルとその対処法のイメージトレーニングが十分にできていたとは言い難い。
箱が開封されたらしいという明確な証拠が出てきたことで、何か月も探し回らなくて済んだのはよかったし、何より自分に危害が及んでいないのはありがたいことである。盗難は自分のフラットで起きたわけではないし、空き巣に入られたわけでもない。犯人と鉢合わせして暴行を加えられたわけでもない。中身も、あったらよかったなあという残念なものは多いが、立ち直れないほどの損失ではない。数年分のお布施を一挙にして徳を積んだと考えておこう。
なお、ここまで読んでくださり、投げ銭をくださる!という方はいつでもお待ちしております(笑)
ついでに:顧客プールとしての海外学振
この場で海外学振まわりの事情について言及するのは、とばっちりが過ぎるかもしれないが、ついでに言及しておく。海外学振というのは毎年かなりの人数の「優秀な」若者が海外渡航する公的制度なわけで、そこにはまあまあビジネスチャンスがあると思うのだが、保険も引越も住居も何もかも特に何のあっせんも案内もないのは、世の企業の営業部隊の目が節穴なのか、公的制度ゆえに学振が全部断っているのか、どっちなのだろうか(どっちもなのかもしれない)。というわけで、企業さん、安心、スムーズに海外赴任をしたい「個人事業主」の顧客は思っているより多いと思いますので、今からでも遅くないですよ。
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