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二月の中を

誰にも頷かなくていい。誰にも頷かなくていいのにね。


連日、悪天候の予報が続いていてこれでこそ二月だと思う。
特に気も晴れることがなく、足元も悪く、やがて春を迎えれば消えていくぼんやりとした倦怠感を抱えたままの重い足取り。


イヤホンから流れるその言葉を初めて耳にした学生時代、衝撃で尻餅をつきながら「あいわかった」と爆速で頷いたと同時にこの曲を人生のバイブルにしていく決意をした。


そうして何年もの月日が流れた今の私の姿がこちら。

ユラユラ

会津伝統工芸・赤べこと遜色ないほど私は頷いている。日々の生活の中で首を横に振るエネルギー量が意外にも大きかった。思考を放棄してただ頷いているだけでは、誰の為にもならないことは分かっているのに。



だからせめて二月のあいだは、頷かないでいよう。


イチゴフェスティバルでいちごパフェを食べた。
まったく頷かなかった。

まず入場料で500円、いちごをカップに入れてその空いた隙間に生クリームを注入されたもので1400円。その衝撃で尻餅をつきながら「マヨネーズの瓶と2杯のコーヒー」の話を思い出す。

講師が生徒の前でマヨネーズの瓶の中にゴルフボール(人生で最も重要なこと)を入れる。次に砂(その次に重要なこと)を入れて、コーヒー(その他のこと)を入れても溢れることがない瓶の様子で人生の優先順位を伝える話がある。
順番を間違えると溢れてしまうので、自分にとって幸せなことの選択を間違えずということだ。こんなにも良い話をこのいちごパフェ(笑)で思い出すことが申し訳ない。

というか人生のバイブル、もうこの話にすれば一番良いのでは。





親子丼専門店で親子丼を食べた。
まだ、頷かない。

専門として店を構えているとはいえ、卵・鶏肉・玉ねぎで作れるこの料理、他のものとそこまで差異はないはずだ。
目の前の美しく赤い黄身は強い生命力を感じさせ、心まで奪われそうになるが頷かない。
ふんわりとした卵の舌触りにうっとりするも頷かない。なぜならそう決めたから。




大好きなスリランカカレーを食べた。
頷きそうだったが、なんとか堪えた。

先輩から教わってから我が物顔で多くの友人に勧めているスリランカカレー。
スリランカの野菜をふんだんに使っていて、何故か食べた後に体がスッキリする。

今日もまた初めての友人を連れてきて「せやろ、うまいやろもっと食え」と勧めている。
あまりの美味しさに驚き、頻繁に頷いている彼を目の前にしても頷かない。なぜならそう決めたから。





横浜で居酒屋を4軒回って最後に回転寿司を食べた。
おなかがいっぱいで頷くことができない。1ミリでも首を動かせば腹が裂ける。回転している寿司で酔いが回る。

そして次の日、食べ過ぎで体調が壊れた。胃が荒れ免疫がほぼ0に近い状態になった。昨年に引き続き、体が弱すぎる。医者には抗生物質など出しておくから、ほどほどにねと呆れたように言われる。

扁桃腺が腫れているので、何度も何度もコクリと頷いた。この瞬間私の二月はあっさりと終わった。誰にも何にも頷かなかったこれまでの二月は医者という絶大なる信頼の前で終わりを告げたのである。

お医者サマサマ







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