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世界の終わり #3-4 ハンター

「おい、ファン! ぼさっとしてねぇで草抜けや!」と怒鳴られて、慌てて軍手をはめ、雑草をつかむ。すんませんカンバヤシさん、と表面上の謝罪。はぁあ。しんどい。怒鳴られるのもしんどいが、頭をさげるのも、草引っこ抜くのもめっちゃしんどい。抜いても抜いても次から次へと生えてくるこいつらの図々しさにはほんま嫌気がさす。アスファルトをめくるように生えてきた草を抜いて、建物に絡んだツタを切断して、刈った雑草は一輪車にのせて敷地の外へ運びだす。火ぃ放って、まとめて一気に燃やしてしまいたいところやけど、軍や警察に煙を見られたら拙いんで、刈っては運び、刈っては運びを延々ループ。陽が傾き、西の空が赤く染まりはじめたころになってようやく、カンバヤシが作業終了を知らせる笛を吹いた。いやいや、計三人しかおらへんのに、笛吹く意味なんてないやんとは口にだしていえへんし、むしろ、この笛の音を聞くためだけに終盤の一時間を過ごしたようなものなので感謝しておこう。笛、最高。そしてよく頑張った、おれ。

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