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【連作短編】世界の終わり

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【完結】群像劇。― end of the world 01 ― 連作短編小説です。
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#連作短編

世界の終わり #0 -Overview-

— end of the world 01 ― 生物を〈生ける屍・グール〉へ変化させる感染症発生によって封鎖…

世界の終わり #1-1 プレミア

 いやァぁ、嫌ッ――と、板野茉莉絵(いたのまりえ)は髪を振り乱して、玄関へ向けて駆けだし…

世界の終わり #1-2 プレミア

 ぼくと板野、そして荒木がいる場所は、福岡市南区の高台に建つ、峰岸という人物が所有する個…

世界の終わり #1-3 プレミア

 頷いて返される。ぼくはかぶりを振る。椅子から離した手を太ももにあてて、強く擦っている荒…

世界の終わり #1-4 プレミア

 すぐさま板野の姿が目に飛びこんできた。板野は扉のノブに手をかけて座っていた。ひとりだ。…

世界の終わり #1-5 プレミア

「あ?」間抜けな声をだした荒木が腕の力を緩め、眉間にしわを寄せて後方へと退く。  ぼくも…

世界の終わり #1-6 プレミア

          *  先月末、ぼくが働くフィギュアショップで、従業員による現金の持ち逃げ事件が起こった。  盗んだのは松坂という二〇代前半の男で、閉店後、レジ前に立っていたぼくを殴って殴って散々殴りつけたのちに、札束を握りしめて姿を消したのだ。  当日の深夜、病院に運びこまれていたぼくは、駆けつけたショップの店長・藤枝から烈火の如く怒られた。道理に適っていない話だが、店長の〝人となり〟はよく知っているので、頭をさげて謝るほかなかった。それに恩もある。九州封鎖の混乱から生

世界の終わり #1-7 プレミア

 三日後の深夜、ぼくらは中国州の玖波漁港から漁船に乗って海上を進み、沖合で船を二度乗りか…

世界の終わり #1-15 プレミア

          *  峰岸氏の屋敷から運びだしたフィギュアをダンボール箱の中へ移し替…

世界の終わり #2-1 ギフト

 九州南部に位置する邦根町周辺には〝日本初〟という言葉がセットになった公共事業が数多く存…

世界の終わり #2-2 ギフト

「やぁ。おはよう」  福岡市内の動物園跡地を拠点としている、人権擁護を目的とした市民団体…

世界の終わり #2-3 ギフト

 正門前の駐車場では、山岡と数名の〈TABLE〉メンバーが、緑色の服を着た男たちと口論し…

世界の終わり #2-6 ギフト

          *  感染者はグール――屍食鬼と呼ばれているが、実際に人肉を好んで食…

世界の終わり #2-7 ギフト

「どこへ運びましょう」ガサゴソ動く拘束シートを載せた台車のハンドルを握る利塚が、声を震わせながら尋ねた。  髪はまだ寝癖で撥ねている。 「当然、小獣舎です」感情を押し殺した声で掛橋は答えた。グール化した西条を安全に閉じこめておける場所は、メンテナンスの行き届いている小獣舎以外に考えられなかった。 「どのくらいで……あの、本当に死ぬんでしょうか」利塚が問う。  掛橋は視線をそらした。  通常、感染者は生きたままグール化するが、感染状態で絶命した者も情報伝達が再開された脳の働きに