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MLM(マルチ商法)のドキュメンタリー

私は現代人の中でもかなりYouTubeが好きな部類に入る。
YouTube Premiumも登録している(代わりにApple Musicは解約したのでほぼプラマイゼロだと認識しているが)。
日本語の動画はほぼ見ないが、英語圏のYouTube動画はかなり質の高いものがある。そのうちの一つが、先日見たViceの"Why Women Are Quitting Their Side Hustle: Leaving LuLaRoe(彼女たちが副業をやめるワケ:LuLaRoeを去る)"である。

※正確な内容や詳細のためには実際に動画を見てください。

LuLaRoeはサムネのような鮮やかな色・柄の洋服を、端的に言えば、ネズミ講手法を用いて販売するアパレルブランドである。"コンサルタント"などと呼ばれる個人へ販売を委託しており、客は彼女らを通して出ないと商品を買うことができない。"コンサルタント"はSNSを駆使して、販売をするらしく、時代にあっていると言わざるを得ない。
ピラミッド構造の"コンサルタント"の組織では、LuLaRoeの商品在庫を多く購入すればするほど、より多くのメンバーを勧誘するほど、上の階層に行くチャンスを得る。上の階層にいる"コンサルタント"は他のメンバーに向上心を持たせるために、なるべくきらびやかな生活スタイルを送り、それをSNSで発信するように指示されるそう。

LuLaRoeの悪質性は、それが純粋にネズミ講である(参照)ということだけではない。

ドキュメンタリーの中では、
・何週間も屋外に放置された在庫
・穴の空いたもの
・びちょぬれのもの
・腐った食品のような匂いのするもの
などが紹介されていた。LuLaRoeのシグニチャー商品であるド派手なレギンスをディズニーワールドに初めて着て行ったら、お尻のところがきれいに破れてしまったお客さんの話は、正直笑えた。

さらに、トップ層には、先述した"きらびやか"さを無理やり実現する目的という底で、LuLaRoe創業者DeAnne Stidhamから胃を切除する手術や、胃内にバルーンを入れて食事量を制限する手術などへ斡旋されたということが指摘されている。(参照

全盛期は月に数十万〜百万ほど稼ぎ、豪勢な生活をしていた女性が、LuLaRoeを辞めたあとに開いたブティックのための資金も重なり、家を売却しなければならなかったと涙ながらに語っている。あまり多くは語られていないが、資金がない中でブティックを開いたのもLuLaRoeで身についた実体のない自信に背中を押されたようである。

"コンサルタント"になってしまう女性は、(特に小さな子どものいる)専業主婦が多いようである。社会とのつながりが薄く、不安を抱えて生きるなか、自由な時間の使い方をしながらフルタイム勤務と同等、もしくはそれ以上の収入を得られること、多くの女性達と関わり、結束感を持つことができることに惹かれてしまうのだろう。

教訓としては、自分の働く会社にお金を払わないといけないビジネスには手を出さない、ということだろうか。
恐ろしいことに、LuLaRoeとGoogle検索すると、最初の検索結果ページにはLuLaRoeのウェブサイトやFacebookページが出てきて、ネガティブなページや注意喚起は出てこない。「他の人はこちらも検索」のところにアムウェイといったマルチ商法で有名な企業や、NXIVMといった超絶悪名高い団体も表示されているが、ヒントはそれくらいである。

新型コロナウイルスの影響で、独立販売員に業務委託した"ネットワークビジネス"は盛り上がりを見せているという(参照)。タッパーウェア(マルチ商法)もTicTokで「タッパーウェアパーティー」なるものを開催するなどし、収益を上げているという。(軽くTupperware Partyと検索しても、それが具体的にどのようなものかは不明だった。)
日本のショッピングモールにもよくあるThe Body Shopも同様のビジネススタイルを導入したらしい。独立販売員になるための初期費用は日本円で約1万円以下であり、LuLaRoeのように在庫を先に購入する必要はないため、超悪質とは言えない。ただ、独立販売員を入手する時点で確実に会社側に売上が発生する点や、商品売上の一部を還元する以外は実質無償で販売をさせるビジネススタイルは尊敬に値しない。

突き詰めると、完全に真っ当なビジネスなんて存在しないのかもしれない。だが、社会的・経済的に弱い立場の人たちに対して「簡単に稼げる!」といった誇張表現をし、彼・彼女らを労働力として(さらには収入源として)搾取することは許せたものではない。私は、マルチ商法を取り入れるいかなる企業にもお金を直接支払うことがないようにしたい。

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