初めてイルカに触った日
8月3日、友人と静岡県伊東市にある「ドルフィンファンタジー伊東」に行ってきた。イルカを近くを見てみたい、ということで以前から話し合っていたのである。ここでは、イケス内で飼育されているイルカと触れ合うことができるらしい。水族館のイルカショーを遠目に見たことしかなかった私は、間近でイルカを見られるという情報サイトに目を見張った。「ふれあいコース」「スイムコース」あったが、せっかくなら一緒に泳ぎたくないか?という勢いで「スイムコース」を申し込んでみた。
水族館でイルカが子どものほっぺにチューしている写真が、どこか水族館のパンフレットにあったような。遠い記憶をなぞっていく。そういうイベントにどんな経緯で参加しているのか、子どもの頃の私には不思議で仕方なかった。胆力のある選ばれし幼子だけが経験を得られるのだろうと結構本気で思っていたのである。
イルカを触りに行くと周囲の人々に話すと、くさいんじゃないか説を唱えられることもあったが、今日は真相を確かめることができる。私個人は、イルカの感触がサメ肌のようにざらざらしているのか、つるつるしているのかが気になっていた。
刺すような太陽光で波がきらめいている。到着すると、ウェットスーツに着替えて白いテント下に集合した。ほとんどが親子連れで、私たちを含めて30人程度は集合していた。世の中は夏休みである。イルカトレーナーさんがやってくると、イルカのQ&Aや生態についての説明が行われた。その後ぞろぞろと移動する。イケスには4頭のイルカが泳いでいた。
うおおおおおおお!
でかっ
3m、4mくらいの大きさだろうか。
トレーナーさんの指示で華麗なターンを決めるイルカ
優しい目ではあるが冷静な瞳に、深層心理を読まれそうな雰囲気があった。
頭頂部にあるのはイルカの鼻の穴で、水面に上がる度にフゴーッ!とものすごい音を立てて呼吸している。
一つ、気づいたことがある。トレーナーさんが「皆でターンの指示を出してみましょう!」と言って笛を吹いた時、全員が手を大きく振り、イルカはターンしたのだが、指示の出ていないタイミングに私が手を振ってみたところ、こっちを見てはいるものの一切反応しなかった。
わかっている・・・!
しばらくすると、あの時間がやってきた。
「イルカを触ってみましょう!」
イケスの淵ぎりぎりまでやってきてくれた。
こんな状態で大人しくしているのが信じられない・・・!!!!
うわああああああああああああ
これはっ・・・・・・!
水に浸したトマトの表面だ・・・!!!
冷たくて、熟しすぎていないトマト。つるっつるの美肌だった。
泣きそうになった。フェイスパックしたい。
全然くさくない。
イルカは非常に代謝が良いらしく、2時間に一回肌が生まれ変わるらしい。
肌のターンオーバー大事なんだ・・・異常なまでの説得力である。
皆でごしごし触っていると、イルカは仰向けで胸びれを嬉しそうにパタパタさせた。
「垢が取れて喜んでいます!」
イルカトレーナーさんが笑顔で叫んだ。
もともとイルカは陸上にいたが、進化の過程で生活の拠点を海に移し、脚が退化して現在の尾びれの形になったらしい。この胴体(形態は異なるかもしれないが)に脚が生えているのを想像すると、かなりシュールである。
背中側はナスの表面のようであった。
やはり、つるっつる美肌でお腹よりは硬め。
その後、観光客はイケスの真ん中にバタ足で集合し、その周りをイルカが回るということに。
ところが水に入った瞬間、子どもたちがギャン泣きし始めたのである。皆4、5歳くらいであった。ライフジャケットとシュノーケルを身に着けているのだが、恐らく装着自体が初めてだったに違いない。口呼吸に慣れず、裏声みたいな声を出している子があちらこちらにいた。しかも、底の見えない緑っぽい海なので、恐怖心しかないと思われた。対照的ににテンションがハイになっているのは、水の中にいる親たちである。「はい!背中のヒレを掴んでください!」トレーナーさんは、イルカを真ん中に連れてくると、子どもに背びれを掴ませた。泣きながら猛スピードでイケスの淵に運ばれていく光景は、なんだかおかしかった。私は友人と、わちゃわちゃしているね・・・などと語りながら、なんやかんやで4回運ばれた。イルカのヒレは柔らかく、力強く泳いでくれる。泣き声ばかり響き渡っているのに、イルカは一切混乱せず、襲うこともなく、人間たちの周りを優雅に巡っている。まるで人間がイケスに捕らわれているかのように感じた。
とても知能が高く、尊い生き物である。
また別の形でイルカに会いたいと思う。
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