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哲學思想日記 2023-W44 — 計畫の立てられない理由

2023-10-30/11-05

『青色本』で一番印象的だったのは、「頭の中で考える」という言葉の意味を L. Wittgenstein が一生懸命考えているところだな。Wittgenstein は日記かどこかで「現代の哲學と過去の哲學とは、錬金術と化學くらい違う」と述べていたが、確かに言語哲學の思考法はそれまでの哲學とは異質で刺激的だと感じた。

他に印象的だったのはやはり、「一般化への渇望がすべての形而上學の源であり、これが哲學者を全き闇へと落とすのである」というところ。

たしか『論考』の草稿で「哲學は科學の上または下にある」と書いてあったのもずっと気になっている。

Ἀριστοτέλης の根本洞察:色があるなら、それはどこかの表面にある。

昔、どこかのフェミニズムの文章に、「男性は透明の身体を持っている」という表現があったが、確かに私も昔から透明だったなと思った。女性は容姿や身だしなみを評價されるから透明ではないという意味。

※ 2024-04-07 追記:見つかった。大野左紀子「美少女は、男にとってはもちろん女にとっても「異性」」 です。

功利主義ってバカみたいに單純な發想なのにベンサム、ミルあたりまで古今東西に無かったのが不思議だ。

Ἀκαδημείᾱ でも Λύκειον でも、哲學はすぐ科學になり、その後まもなく思想になってしまう。

「文系」の学問は生物學と近い氣がする。一般的法則の定立を必ずしも目指さないという意味で。

「文系の學問は何の役に立つのか」とよく言われるが、それなら「はやぶさ」のイトカワ探査だって何の役になったのか私にはまったくわからないが。みなさんはわかっているんですかね? わかっていないのに nationalistic な感情で偉業や美談として敎科書とかに載ってしまうなら、なかなか虛無主義的だと思うが。

「知識とは何か」を問おうとしたとき、「なんでもかんでも知識になっちゃう問題」になってしまうのは、すでに德を知識であるとした Σωκράτης の時代から直面してきたこと。

個人の感想だけど、諸學の中で一番意味がよくわからないのは法學だな。なぜなら法律って一番普遍性がないから。法という文化についての研究ならまだわかるが、法学の教科書を読むと、まるで現行の日本法が普遍的法則であるかの如く書いてあるのが不思議。クーデターとか革命が起きればいくら現行の法體系に通曉しててもその知識は無にならないか? それとも法學も一種の文化人類學ということ? 日本という文化圏の法律という文化を研究しているの?

某哲学系学会の休憩時間、參加者が「…… そうなると、査讀の査讀が必要になってきて、無限後退に陷る」と雜談しているのが聞こえてきて、「こういう日常生活で『無限後退』という單語が出てくるあたり、やっぱり哲學系研究者はかっこいいな」と感じた思い出がある。

Friedrich Engels について調べていたら、「20か国語でどもると評された」という謎情報が『ニッポニカ』に載っていた。

なぜ昔話では動物がしゃべれるのか? 動物と人間の距離が近かったから、と言う人もいるが、現代アメリカ神話でもミッキーマウスが喋っているではないか。

私は計畫が立てられないのだが、それは私が中學生くらいの頃からずっと「計畫を立てたところで明日、いや今日このあと、死んでしまうかもしれないではないか」と思ってきたからだと思う。

私は必然性 (ἀνάγχη) を求めている。宗敎的救濟とは何かそのようなものだと思う。


執筆: 2023-11-22
Image by yoshitaka2 from Pixabay
今日の一曲: 千のナイフ / 坂本龍一


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