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【一日一文】宮沢賢治「おれはひとりの修羅なのだ」

8月27日
作家・宮沢賢治が記した詩集より、一文をご紹介します。


     まことのことばはうしなはれ、
    雲はちぎれてそらをとぶ
   ああかがやきの四月の底を
  はぎしり燃えてゆききする
 おれはひとりの修羅なのだ

宮沢賢治詩集「春と修羅」より抜粋


生前に出版された宮沢賢治の本は、わずかに2冊。そのうち1冊が、自費出版で出した詩集『心象スケツチ 春と修羅』です。

いのちが芽吹く「春」と、いさかいの絶えない「修羅」。
あえて、相反するものをならべるこころみ。

表裏一体。
春に、修羅。

修羅とは、仏教の六道の一つ。
人間が死んだあとに輪廻転生する道が六つあると言われています。その総称が六道。

宮澤賢治は、あえて自身を「修羅」に例えました。読み取り方は人それぞれに託されます。



最近では、映画でもたびたびこの詩集のタイトルを見かけます。

たとえば「シン・ゴジラ」の冒頭。
漂流するボートの中に置かれた詩集は、「春と修羅」。

恩田睦の著書「蜂蜜と遠雷」の中でも、コンクールの課題曲として出てきます。
架空の曲ですが、映画では作曲家・藤倉大によって、本物の音楽作品となったことは記憶に新しいです。カデンツァ(即興演奏)は圧巻。もう一回、鑑賞したくなりました。

「春と修羅」は、今でも私たちを啓発しつづける詩歌なのです。



「一日一文」不定期に更新を始めます。
哲学者・木田元(きだ げん)氏編纂の本「一日一文」から、心にとまった先人の言葉をご紹介したいと思います。

ひとつは自身の学びのため。
ひとつはすこしでも豊かな気持を分かち合うため。おつきあいいただけると幸いに思います。

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