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コロナ禍に音楽ライターがnoteで文章を売ること、についての話

コロナ状況下での音楽ライターとお金の話。

音楽ライターのこれまでのような依頼原稿仕事以外での稼ぎかたについて、ちょっと実験をしてみました。

レゲエとボサノヴァの記事のPV

僕がやったのはレゲエとボサノヴァのプレイリストを作り、それを解説する記事としてnoteにアップして、その売り上げを見てみる実験です。

ちなみに僕は音楽ライター専業で生活しています。原稿を書く以外の収入はラジオやイベント、講義・講座の出演料、DJなどがありますが、メインは原稿で、大半を占めています。
ジャンルはジャズが中心で、ジャズ以外についても書きますが、それも海外の音楽について書くことが多いです。日本でめちゃくちゃ売れていてTVに出たりするようなアーティストについて書くことはほとんどありません。なので、洋楽もしくはインディーの音楽について書いているニッチなライターの話だと思って読んでください。
TVに出るような著名なJポップ・アーティストについての記事と僕が書いているような音楽の記事ではPVの桁が違うので、そういった記事を書きたい方はこの先を読んでも意味がないと思います。

それぞれの制作にはそれなりの知識が必要で、プレイリストの選曲とテキストの執筆でそれぞれ丸1日以上かかってます。


記事の約8割を無料公開。僕は金額を最低金額の100円に設定しているので、購入して100円を払うとその先のおまけのテキストが読めるようになってます。noteなので購入金額を購入者が決められるサポート機能もあります。これは上限が10,000円ドネーションのようなものです。ここからnote運営に利用料として2割を引かれた金額が収入になります。

僕のSNSはフォロワーがかなり多くて、

ツイッターのフォロワーは16,000人
noteのフォロワーは26,000人

です。

ちなみにレゲエもボサノヴァも両方の記事はかなり読まれて、4/19 24時の時点で、

レゲエはツイッターのRTが180・いいねが660・記事のPVは6000
ボサノヴァはRTが70・いいねが380・記事のPVは4000

このまま数字は伸びると思うので、レゲエの方はPVは10,000くらいは行くと思います。J-POPの人気アーティスト以外についての音楽記事でページを分割せずに10,000PVに行くのがかなり難しいことはメディアに関わっている人ならわかると思います。音楽記事だとバズった記事と言っていい数字でしょう。

レゲエとボサノヴァの記事の売り上げ

売り上げは

ボサノヴァ 購入2100円 サポート13,500円 合計 15,600円
レゲエ 購入2500円 サポート 3500円 合計 6000円

ボサノヴァの記事をあげて少し後からFacebookに販売の経過を書いていたので、それを見て友人が1,500円ほどサポートしてくれたり、某レーベルの社長が10,000円をサポートしてくれた(※正直申し訳なさしかないので今後は不要です)ので実質の売り上げは4000円って感じだと思います。

売り上げは2本で合計21,600円ほど、社長の10,000円がなければ11,600。ここからnoteに手数料を約2割ほど差し引かれた分17000円9000円が収入になります。

noteにずっと原稿を書いてきてますが、それなりに読まれた記事1本の平均がだいたい5000円前後なので、いつもの金額だと思います。つまり2割引かれたら原稿1本で4000円。

通常どんなに原稿料が低い媒体でも、どんなに安くても1本10,000円で、計20,000円にはなると思うので、社長のドーピング込みでようやくそこに到達するって感じだと思います。

という感じで、ツイッターやノートのフォロワーがかなり多くてもこの数字なので、ほぼ公開した音楽記事で、購入方法が投げ銭だとそれなりに読まれても基本的にはまともな原稿料は得られないと思います

※一部、通常の依頼原稿の原稿料を上回る数万円単位の収入があった記事もあります。例えば以下

それらはたいてい10,000字越えの長文論考で、ツイッターでもバズって現実的ではないPV数を取っていて、Google検索でも最上位に表示されるような記事なので、参考にならないと思います。なので、その話は割愛します。

音楽ライターから見たnoteの特徴

現状、原稿をアップして、それを売ることができるサービスはnoteくらいしか思いつきません。

ただnoteは基本的に音楽には弱いサービスだと思います。特にインディペンデントな音楽や、海外の音楽、メインストリーム以外の音楽に関してはかなり弱いです。あと、評論・批評にはめちゃくちゃ弱いです。音楽に関して、強い場所をあげるとすれば、TVに出てるくらいの知名度のあるJポップ、海外の超セレブ・クラスのビッグネーム、音楽ビジネス、トレンド分析あたりでしょうか。要は日本の有名人の話か、金の話なら読まれます。

確実に言えるのは、noteでフォロワーが(26,000人を超えるまで)増えても、そういったnote内で弱いカテゴリーの記事を書いていたら全く読まれません。もちろん売れません。なので、noteのSNS的な機能は僕のような書き手にはあまり関係がないと言えます。

なのでツイッターやフェイスブックとセットで使わないと意味がないサービスだというのは知っておいた方がいいかもしれません。

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ここからは、僕がこれまでnoteを使ってきて感じていたこと、今回記事をアップしてみて浮かんだ対策を少し書いてみたいと思います。

まず、これまで僕がやっていたようなほぼ全公開で投げ銭の方式で、薄く広く払ってもらうようなやり方は勧めません。だったらいい原稿をがっつり書いたものをどこかの編集部に売り込んだ方がいいと思います。

対策①ほぼ非公開にして読みたい人には購入してもらう。

noteはnote内だけでの拡散は期待できません。なので、記事の内容がウケて、SNSで拡散されないと全然読まれません。程よく知名度とフォロワー数が多い人には有効な手段かもしれません。

対策②ほぼ非公開にして、有料マガジンにして、定期更新して、サブスクリプション・モデルにする。

月500円とか月1000円に設定すれば、定期購読者が100人いれば、月の収入は50,000円、100,000円になります。500円で100人なら不可能ではない数字かもしれません。

長文を定期的に書くのは普通に考えて難しいので、500字から1000字くらいで短い原稿や小出しにした情報だったり、過去に紙媒体やライナーノーツなどに書いた記事やインタビューのアウトテイクなどをシェアしていく感じでやれば、続けられそうです。

対策③投げ銭のままにして設定金額を上げる。

現状、投げ銭なら薄く広く払ってもらうことを期待しても難しいので、深く刺さった人に沢山払ってもらうのがふさわしいのかもしれないのはあります。1本300円にして30人に買ってもらって9000円、1本500円にして20人に買ってもらって10,000円くらいの設定が利益になる現実的なラインかもです。

濃い記事を書く場合は、その記事を求めている人に刺されば多少高めでも購入してくれる人はいると思います。

対策④サポートのお願いをタイトルやリードを入れる

個人的にはこれが最も現実的な気がします。

今回の僕のボサノヴァとレゲエの記事はそれなりの人数に読まれるであろう記事を敢えてコロナ以前と同じように「趣味で書いた記事を趣味でアップした」感じでやりました。おそらく、これを「仕事です。ドネーションだと思って買ってください」を記事の冒頭に書いていたら多少購入者やサポートは増えていた気がします。

コロナ以後でもただアップしただけだと趣味だと取られるので、この原稿で減った仕事の補填をしたいとはっきり書くことが必要だと思います。

変な気遣いや遠慮や慎ましさは一旦忘れて「自分が書いたしっかりしたものに対してお金を払ってほしい」と自信を持って胸を張って書くことも必要だと思います。自分の仕事への誇りをそのまま出すことも必要な気がしています。

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我々音楽ライターは「ただ自分の好きな音楽が広まってほしい」みたいなマインドの人が多いので、奉仕っぽいマインドが強いし、とりあえず自分は置いといて、ミュージシャンにプラスになればいいって感じでやってると思います。それにいろんなプレッシャーを感じていたり、遠慮や恐縮があって、「自分の文章や情報に金を払ってほしい」とはっきり口にするのが苦手な人が少なくない職種だと思います。

僕もそうです。だからこそ、どんなに長文でも、どれだけ執筆に時間をかけたものでも、通訳費を自分で払っていても、原則、無料で公開してきました。その作品が多くの人に聴かれたり、アーティストの知名度が上がったり、アーティストや作品やシーンへの理解が深まることが最優先で利益のことはいいやと。

ただ、この状況下では、他の仕事で稼いできて埋められるような状況ではなく、自分の仕事に関わるものを無償でばらまいている余裕がある人ばかりではないと思います。そろそろ音楽ライターも自分の仕事に対しての対価のこともはっきり意識して、言葉にしないとこの状況は乗り越えられないかなとも思っています。

僕もこれまではほぼ全文を無料公開で提供してきましたが、ライター専業の身なので、明らかに仕事が減っていて、先行きが怪しくなってきました。ここに書くものに関しても、対価を頂けるように設定を変えていかなければ、この先、音楽に関しての文章を書いていくことが難しくなっていく気がしています。

なので、今後、購入やサポートを促したり、設定金額が上がったり、非公開部分が増えたりするかもしれませんが、お許しいただけると幸いです。

追記:noteの課題

僕がnoteを使っているのは

記事は全公開で購入機能の投げ銭の100円で200人に買ってもらえて合計20,000円

みたいな広く薄くの形が可能なサービスかもと思っていたからです。個人的にはそういう形がインターネットの理想かなと思っているからってのもあります。

ただ、3年ほど使ってみた感想だと、それは難しかったです。

その理由の一つはnoteの決済方法にもある気がします。今のところソフトバンクの決済とクレジットカードの入力くらいしか支払方法がありません。「記事良かったけどクレカ入力がめんどくさいから今度会った時にコーヒーおごるわ」ってLINEが友人から来たことがあります(笑

例えば、PayPalやPayPay、LINE Payが使えるようになり、簡単に少額を支払える選択肢が増えると全然変わってくる気がします。noteアカウント外からの購入がしやすくなると違う景色が現れるかも。

ただ、そんなことはnoteの中の人も分かっているでしょうから、この辺は事情があるんだろうと思います。

現状、noteは基本的にメルマガ的、もしくはオンラインサロン的な囲い込みが前提になってるサービスのように感じます。大企業の参入や著名人、インフルエンサーがファンや読者を囲い込んで、定期収入を得るには便利ですが、小さなライターが不定期で記事をアップして、それを販売するって形に対しては、まだあまり考えられてない気がします。僕の同業者がnoteを敬遠しているのはその辺に理由があるかもですね。

今後、僕のような小さなクリエイターの小さな仕事をサポートできるようなサービスになっていくといいなと、僕は期待しています。コロナ後の今、僕らのような仕事に有用なサービスだとは思うので。

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コロナ禍に音楽ライターがnoteで文章を売ること、についての話

柳樂光隆

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あざっす››››( ˙ᵕ˙ )
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79年、島根・出雲生まれ。音楽評論家。『MILES:Reimagined』、21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に後藤雅洋、村井康司との鼎談集『100年のジャズを聴く』など

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