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コミュニティ運営のメリットと実践的な手法


新コーナー「企業コミュニティQ&A」がスタート

こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。
「企業コミュニティのちょっといい話」では、これまでに数々の企業コミュニティの実例を分析し、その運営の狙いを明らかにしてきました。このマガジンではアプローチを変えて、コミュニティ運営の実務に踏み込んだ「Q&Aコーナー」を立ち上げます。ここでは、コミュニティ運営に関するよくある疑問を解き明かし、業界先駆者がこれらの課題にどう取り組んでいるかをご紹介します。

Q&A第1回目は「コミュニティの真価とは?」

第1回目では、多くの企業がコミュニティ立ち上げを考える際に抱く疑問、「コミュニティの真価は何か?」に焦点を当てます。

マーケティングの多様な手法の中で「コミュニティ」が選ばれる理由は、大抵「リピート顧客を確保したい」「顧客との距離を縮めたい」「顧客のフィードバックを得たい」といった動機があるでしょう。しかし、「コミュニティは売上に貢献するのか?」や「コストパフォーマンスは良いのか?」といった疑念も存在します。それでは、コミュニティが具体的にどのような利点を持つのかを考察していきましょう。

コミュニティの一番の利点「お客様の声に直接触れられる」

コミュニティを運営し始めてすぐに実感できるのは、お客様であるコミュニティ会員の声に直接触れられることです。コミュニティは企業が主催するものですが、その商品やサービスに興味を持っている人々が集まります。新規会員は特に、企業が発信する記事やメルマガ、イベント・企画などに高い関心を示すでしょう。そこへ興味や関心を満たす情報や話題を「テーマ」として投げ掛ければ、多くの人が積極的にコメントを投稿してくれる可能性が高いです。

「声」を集めるには企業からの投げかけが重要

1) 写真やコメントの投稿キャンペーン
企業が提供する商品やサービスに関連するテーマで「お題」を設定し、会員に写真、動画、または思い出エピソードなどを投稿してもらう形式です。例えば、私が携わっていた「&KAGOME」では、毎年夏にトマトの苗を無料で配布するキャンペーンを行っています。その後続企画として、トマトの成長過程を写真で共有するキャンペーンも展開しています。

このようなキャンペーンに参加する会員は、自分のトマト栽培状況を見せるだけでなく、他の会員とも栽培状況を共有できます。これが参加者の興味をさらに高める要素となります。また、企業側にとっては、投稿されたトマト畑や料理の写真から、家庭菜園ビジネスに関するノウハウや新しいレシピのアイデアを得ることができます。

2) オンラインでのアンケートの収集
マーケティング活動では、お客様の考えや行動を定量的に理解するために「アンケート」が頻繁に用いられます。特に重要な意思決定が必要な場合は、専門のリサーチ会社のアンケートパネルを使って詳細な分析を行うこともあります。このような大がかりなアンケートは、費用が数百万円以上もかかる場合があり、簡単には実施できません。

しかし、コミュニティ内でのアンケートは、設問の設計やデータ集計には費用がかかるものの、パネル利用や謝礼にかかるコストはほぼゼロです。さらに、会員からのアンケートへの反応は非常に早い!私の経験では、目標とする1,000件の回答を1~2日で集めることができました。

新商品のサンプリングなどを絡めたアンケートも可能です。フリーアンサーでの意見も収集でき、商品に対する詳細なフィードバックを得られます。このように「早い・安い・濃い」アンケートを実施できるのが、コミュニティの大きな利点の1つです。

3) オンラインリサーチ(MROC)やオフライン座談会
マーケティングにおいては、多数の会員に対して一斉に意見を集めるオンラインアンケートと同じく、少数の会員に対して深く掘り下げたインタビュー調査も一般的です。このようなインタビュー形式の調査においても、コミュニティは非常に有用です。

まず、オンライン手法としては、MROC(Marketing Research Online Community)がコミュニティ内で可能です。特定のテーマ、参加者、そして期間を設定し、企業側からの質問に対して会員が回答します。この過程で、相互のやりとりを深めながら課題の解決策を模索します。全体に公開して広範な意見を集めることもできますし、特定の敏感なテーマについては、非公開の設定でヒアリングを行うこともあります。

さらに、オフライン形式の座談会もオプションとしてあります。企業の会議室に会員を招待し、実際に商品を手に取ってもらいながらフィードバックを収集します。対面で反応を見ることが可能なので、お客様の表情や会話の中から本音を読み取ることができます。

コミュニティの双方向コミュニケーションが生む多面的な価値

お客様の声に直接触れられるのはコミュニティの一番の利点でありますが、その背後には「双方向性」があり、これが効果を高めています。一般的なアンケートでは、お客様からの単方向の評価を収集することは容易ですが、コミュニティではその「なぜ?」にも深く掘り下げることができます。この点をさらに進化させれば、商品やサービスの改善アイデア、マーケティングメッセージの策定、さらには新商品やサービスの開発も視野に入れられるでしょう。

このような高度な取り組みについては、コミュニティ運営の先行企業がすでに成功を収めているケースもあります。これについては、次回以降のQ&Aで詳しく解説したいと考えています。

「企業コミュニティQ&A」第1回まとめ

新コーナー「企業コミュニティQ&A」、いかがでしたか?このnoteが開始された際、私が前職でカゴメのコミュニティサイト「&KAGOME」を運営していたことに触れました。

その後、3年が経過し、新たなコミュニティが次々と誕生しています。イーライフにも、コミュニティ設立に関する多くの相談が寄せられています。
このような相談で頻繁に出てくるのは、「効果が出なかったらどうしよう」「どんなテーマや企画で運営すればいいのか」「運営にどれくらいの負荷がかかるのか」「もしも炎上してしまったらどう対処すればいいのか」といった不安や疑問です。次回以降、このコーナーで、そうした「企業コミュニティのよくある疑問」について解決策をお伝えしていきますので、ぜひご期待ください。