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旅先ビールは大人の特権/旅とビール⑴

先日、新幹線で実家に帰省した。
帰省の新幹線では、たとえそれが午前中であっても缶ビールを飲むことにしている。
現世からふるさとへの結界を超えるための儀式として……というのは呑んべえの言い訳。
先日も朝10時台の新幹線で「ぷしゅ」っとして駅弁を食べて写真を撮っていたら、隣の席の人もワゴン販売をとめて同じ銘柄のビールを頼み、そして私と同様に写真撮影していた。さてはうらやましくなったに違いない。

半年ほど前の写真。娘と乾杯(?)。新幹線では贅沢に「プレモル」

20歳過ぎても、しばらくはほとんどアルコールが飲めなかった。生まれて初めてビールがおいしいと思ったのは、22歳でフランスを訪れたときだ。貧乏旅行ゆえ、スーパーで食材をあれこれ買い込み、ホテルの部屋で食べよう、となったときに飲んだ瓶ビールが、ビールの世界の扉を開いてくれた(大げさか)。ぬるいビールだったが、ずっしりと重くて甘くて、とろりとしていた。最初に目覚めたビールがこの状態だったので、実はいまでもぬるいビールは嫌いではない。というか、あまりに冷えてきんきんのものより、少しぬるいほうが好きかもしれない。そのほうが味がよくわかる。 

旅先でビールを飲むと、その楽しさがさらに盛り上がる。初の家族旅行でメキシコを訪れた際も、実によく飲んだ。成田空港で集合してまずはジョッキで乾杯。海辺で過ごしたあとメキシコ料理店でまた乾杯。大きなワイングラスのようなジョッキを抱え、豪快に笑う写真が残っている。


このnoteで一緒に書いているShokoともハワイでおいしくビールを飲んだ。到着初日、ショッピングモールのようなところで、缶ビールを飲んだ。フードコートの上には吹き抜けがあり、外光も風もふんだんに入ってくる。少しまぶしい日差しの中で、ハワイっぽいデザインの缶ビールを飲み、ハワイについに来たんだなあと実感がわき、そして楽しさがこみあげてきた。


 
そして、以前このnoteの記事でも書いたが、スイスでのビール、あれも最高だった。
「アルプスの少女ハイジ」のふるさとマイエンフェルトで、おじいさんの山小屋を模した小屋の前で一杯。


グリンデルワルドからロープウェーでフィルストという山の上まで上り、ひとしきりハイキングしたあと展望レストランで一杯。目の前にはまるで絵画のような山々が広がり、これ以上の幸せはそうないだろうなと思いながらごくごくと飲んだ。


生きててよかった!


 
旅先でのワインも大好きなのだけれど、ビールとはちょっと気分が違う。ビールは、もっと豪快で晴れやか、とでもいうのだろうか。この幸せな感じ、のどごしを一生味わい続けたいから、健康に気を付けようと思う。

 
そんな私の原点、いま思うと中学校の修学旅行だった気がする。
もはや時効だと思うので書くが、修学旅行のバスの先頭の席で、担任と副担任の2人が、それはそれは楽しそうに缶ビールを飲んでいたのだ。
結構な問題児の多かった我が母校。
先生たちは24時間、ピリピリしていてもおかしくないだろう。しかし、そのときの2人は、実に上機嫌だった。しかも、担任は途中でトイレに行きたくなったようで、運転手さんにお願いしてバスを停車させ、適当なところで放尿していた……。私たち生徒も、路肩に停まったバスの中から「先生、まじありえん!」「先生、信じれん!」などとぎゃあぎゃあ文句を言っていたが、それでも「先生も修学旅行楽しんでくれてる」と、一体感のような、嬉しい気持ちでいっぱいになった。


いま思うと、バス移動中であれば、やんちゃな生徒たちもどこへも行けないので、束の間の休息だったのだろう。ホテルに入ったら入ったで、様々な事件?が発生する可能性だってある。だからわずかな時間で、最大限のリラックスタイムを設けていたのだろう。もちろんバス移動のたびに飲んでいた訳ではない(多分)。
当時の私は、大人っていいなあ、かっこいいなあ……というちょっと的外れな憧れを抱いていた。

旅のビールは、大人の証。そのときからそう思い続けている。

(text&photo Noriko)©elia


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