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ジブリからの贈り物~ふと気づくと、たくさんのものを受け取っていた~

先日初めて、「三鷹の森ジブリ美術館」を訪れた。
我が家から頑張れば徒歩圏内。しかもファン歴30年以上。なのに、ようやく。近ければ近いほど、かえって出かけない法則……。

ではなぜこのタイミングで?
それは「未来少年コナン」展の開催中だったから。コナンは、ほとんどジブリ作品を見ていない夫が、唯一はまった作品。小学生の頃テレビ放映に夢中になったそうだ。私も中学生の頃ビデオで視聴し、すっかり魅了された一人だ。そして昨年の、NHKでの再放送を夫婦でがっつり視聴していた。


美術館最寄り駅の掲示板



ということで、小学生と保育園児を連れ、家族4人で訪問した。
ジブリ美術館では、色々なことを思い出した。
 


美術館の階段を下から見上げる


簡易テントの屋根にもトトロ!



「ジブリの思い出」をテーマにインタビューマイクを向けたら、たぶん滔々と語る人続出だろう。せっかくなので(?)ここで私に語らせてほしい。


私とジブリ作品との出会いは「風の谷のナウシカ」、続いて「天空の城ラピュタ」。確か中学1年生のころで、テレビ放映を見た。鳥肌がたち、見終わった後しばらく呆然としてしまった。ストーリーもそうだけれど、背景となる世界の描かれ方。こんなものをヒトは生み出せるのか、という感激を覚えている。次に「となりのトトロ」でまた衝撃。ナウシカとラピュタの世界との違いたるや……。そして、なぜこんなにも泣けるのか?
 
このあと劇場で見た作品は次の通り。

「魔女の宅急便」「おもひでぽろぽろ」「耳をすませば」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「猫の恩返し」「ハウルの動く城」「ゲド戦記」「崖の上のポニョ」「借り暮らしのアリエッティ」「風立ちぬ」「思い出のマーニー」。
 
ふう、結構見てるな。テレビやDVDで見た作品もあるので、かなり網羅している。

忙しくてなかなか劇場に行けず、泊まりで他県に出張した際、夜、急に時間ができて見にいった「千と千尋の神隠し」。12月30日に東京から実家へ新幹線で帰省する前、ボストンバックを抱えて見に行った「ハウルの動く城」。
「おもひでぽろぽろ」を見た時は高校生で、教室で友人のKちゃんに前売り券を手渡したな、そのとき着てた白いセーラー服大好きだったな、とか、「耳をすませば」は大学の夏休みで実家に帰省中だったな、とか、次々と思い出される。物語のストーリー、サウンドトラックとともに。
 
そんな中、とっておきのエピソードがある。
実は、私はあの宮崎駿監督にインタビューしたことがあるのだ!
 
地方テレビ局で記者をしていた頃の話だ。
「もののけ姫」の公開を前に、監督がプロモーションで全国行脚していた。我が社も、その監督記者会見に行くことになったのだが、なんと私に白羽の矢が立ってしまった……。
私は当時入社3か月。ろくに原稿も書けない状態だった。しかし先輩たちは事件事故取材に追われ、急遽私が取材に行くことになった。本来なら喜ぶべき取材だろう。
しかし。あり得ないことだけれど、事前に作品を見る時間がなく記者会見にのぞむことになってしまったのだ。
各社単独取材を申し込んでいたようで、会見場には私含め3人の記者しかいない。
着席すると、真ん前にお見合いのような状態で宮崎監督がいる。けれど感激している場合ではない。なぜかあと2人の記者はあまり質問しない。私が色々聞かなければ原稿が書けない。
いまでも赤面する。私がまず最初に放ってしまった質問はこうだ。

「すみません、もののけ姫のあらすじを、
わかりやすく簡潔に教えてください」
 
たぶん、凍り付いた関係者もいただろう。
監督に、しかもあの巨匠にそんな質問!!
ニュースの構成上、ストーリーの紹介は必須。けれども事前に入手した資料だけでは、原稿を書く上で必要なあらすじがさっぱりつかめなかったのだ。
公開前なのでそれはそうだろう。

すると監督は、
「いやー、私にとっても説明するのは難しい映画なんですよねーがははは」と、実におおらかに笑いながら説明してくれたのだ。
巨匠のオトナな対応?のおかげで、その後もなごやかな雰囲気で会見は続いた。この出来事でますます、宮崎監督が大好きに、というか「神」レベルの存在となった。

 
しかし会見後、同行した営業担当の先輩に怒られた。
「ありえないくらい失礼だった」と。
そして帰社後、私の原稿を読んだデスクもわけがわからなくなり(でも想像してください。本編を見ないで、「もののけ姫」のあらすじを紹介するって超絶技巧)、報道局長まで登場して原稿を修正してもらった。デスクにも局長にもさんざん怒られながら。そしてこの日は私の誕生日だった。
私にとって「もののけ姫」は、さまざまな意味で、人生に大きな足跡を残した。そして公開初日に見に行き、心の中であらすじの答え合わせをした。
 
さて。時を戻して。

ジブリ美術館では、まず最初にネコバスを見た。
実物大?くらいのネコバスが部屋にどーんと置かれている。
そのふわふわ感、座席の雰囲気が、アニメのまま!!
「となりのトトロ」では数々の感動ポイントがある。私が一番好きなのは、妹のメイがお母さんに会いたいと一人で病院に向かったはずが迷子になり、ネコバスとサツキが探し出して再会、さらにお母さんのいる病院まで送ってあげるよ、となるシーンだ。もう数えきれないほど見たが、毎回必ず泣いてしまう。
ネコバスに乗ったり触ったりできるのは、小学生以下。
そして、記念撮影ができない、というのが意外と良かった。撮影OKだと、きっと子どもたちも親にポージングさせられるだろう。夢中で屋根にのぼったり、まっくろくろすけのぬいぐるみを投げ合ったりする子どもたちの様子を見るのは、なかなか楽しかった。
 
続いて屋上にある「天空の城ラピュタ」ロボット兵を見に行く。
これも感無量。
予習として直前にひととおり作品を見ていたのでなおさらだ。サントラが頭をよぎる。
かなり大きなロボットを見上げる格好になるので、空とのコントラストがまた良い。文明、破壊、自然という単語が頭に浮かぶ。
 



 
そして、私と夫が楽しみにしていた「未来少年コナン」の企画展。
アニメでは全貌がつかみにくかった、物語の舞台の、模型が非常に面白い。(ここからはわかる人だけわかって下さい……)インダストリアの三角塔のミニチュアが圧巻。あんなに地下深く作られていたのか、とか、こんなに高い建物をコナンはのぼったのか、とかあれこれ感心する。そして三角塔に格納されてたギガントの異様な大きさ。人の欲深さを表すかのような。
このミニチュアだけでも見に行く価値はある。
要所要所にモニターが置かれ、アニメーションを抜粋して放映していたため、まったく作品を見ていない子どもたちも、楽しめていたようだ。

そんな子どもたちが一番はしゃいでいたのは、手こぎポンプの井戸。初めて実物を見たので、繰り返し繰り返し水をくんでいた。こういう単純なものほど、面白いんだよなあ……。
 

手こぎポンプの井戸


入り口のステンドグラスもかわいい


美術館そのものの展示を見る楽しみ。
ジブリと自分の人生の接点を、あれこれを思い出す楽しみ。
これらが重なり、とても豊かな時間を過ごすことができた。名作を生んできたジブリの美術館ならではだと思う。
 
 
最後にお土産として、息子はまっくろくろすけ、娘は中トトロのぬいぐるみを選んだ。夜、ぬいぐるみを抱きしめて眠る子どもたちを見ると、ジブリからまたひとつ、贈り物を受け取ったような気がしている。

(Text & Photos:Noriko) ©️elia







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