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私の好きな仏像

 私が好きな仏像は、楊貴妃観音像だ。これは京都府にある泉涌寺の観音堂に安置されている観音像で、1230年に湛海律師が南宋から持ち帰った木製の像である。像容の美しさから、玄宗皇帝が楊貴妃が亡くなった後に彼女の面影を写させて作らせたとの伝承が生まれた。現在では、縁結びや美人祈願、安産にご利益があるとされ、女性に人気がある。
 私がこの観音像が好きな理由は、その美しさだ。この観音像を初めて見た時に持った印象は「かわいい」だったし、仏像を見てかわいいと感じたのもこれが初めてだった。ここまでアクセサリーが豪華で色鮮やかな仏像を見た経験があまりなかったし、台座や冠に花がデザインされていたり、手に花の杖らしきものを持っていたりするのが素敵だと思った。唐草模様の異国情緒あふれる感じも、目鼻立ちがすっきりした彫りの深い顔立ちと合っていて美しい。
 楊貴妃観音像は、像の後ろの台座部分も含めて、全体的に豪奢なデザインになっている。朱色を中心に鮮やかな色彩がまだ残っているため、当時は非常に彩り豊かな像であったことが読み取れる。冠部分を中心に唐草模様があしらわれ、また冠の中心には大きな花、下の縁の部分には小さな花が縁取るようについている。唐草模様がふんだんに使われていることから、古代オリエントの影響を強く受けているのではないかと考えた。顔立ちは日本の仏像と比べて彫りが深く、それでいて柔らかな印象を受けた。釈迦は男性だが、表情の穏やかさや体のラインの華奢さが、とても女性的であると感じた。花のモチーフが多く使われているのもあるかもしれない。人中と顎に描かれている模様が髭のように見えたため、そこが女性らしさとは対照的で面白いと思う。そして、耳飾りと冠の顔の横部分まで垂れている飾りの作りがとても精細で驚いた。パーツ一つ一つが小さく、それでいてデザイン性も高いので、ビーズで作られているように見える。よく見ると着物部分に衣服の模様が見えるが、それ以外の服の皺などの衣紋は彫りが浅く図式化されており、陰影が少ないため平面的だと感じた。

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