『エルフの工房物語』マスク&ポーチ3
——言葉を失ってしまう
そして、一気に頭の中で、情報が展開される、
(森みたいな所に入って、そしたらファンタジーみたいな家があって、欲しいマスクがあって、ドア開けたらエルフが居て、え?)
疑問しかない、状況についていけない、だけど、
その時彼女が聞いたのは、
「日本語、上手ですね」
ドアに書いてた張り紙の文字といい。
するとエルフは照れくさそうに笑って、
「ありがとうございます、まだまだ勉強中ですが」
「あ、いえ、が、外国の方ですか?」
「ええ、外国になりますね」
「ああ、そう、ああ、……マスク」
「はい」
彼女は、商品棚に案内する。鞄や財布といったものの横に、スマホカバーも並んでいて、そして、
——マスクは思った以上にしっかり出来ていた
「触っていいですか?」
どうぞ、と促された。カーキ、キャメル、生成り、ライトブラウン、グレーの五色。蛍光色のようにケバケバしさは無い。布地の特徴なのだろうか、随分落ち着いた色合いである。
カーキを手に取った時、エルフが言った。
「帆布にガーゼを組み合わせて、マスクにしています」
「はんぷ?」
「はい」
エルフ曰く、言ってみれば、厚手の布だという事。
「文字通り、昔船の帆の為に作られた布になります。当店の帆布は国産で、ハリが良くてキメが細かいんですよ。マスクにはピッタリです」
「国産……」
エルフがそれを言うと、日本のなのか異世界あたりなのかどっちか解らなくなるが、
「日本七割のシェアを誇る、岡山のとあるメーカーのもので」
「あ、日本なんですね」
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