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村上春樹の旅の記録がエモい。「ラオスにいったい何があるというんですか?」を読んだ感想【読書感想】

ある時、書店内を探索していると

『ラオスに一体何があるというんですか?』

タイトルの本が目に飛び込んできた。

この強烈なタイトルが脳裏から離れなかった。

強烈なタイトルが忘れられずに

書店をでて数日経っても、数ヶ月経っても、ふとしたときにこのタイトルを思い出す。

我慢できなくなって初めてこのタイトルを見た1年後くらいにメルカリで購入しました。

購入したものまとめて読むには至らず、つまみ食いのようにちょくちょくと読んだ。

気晴らしのために乗った水戸線で読み終えた。

村上春樹の旅の記録

この本は、ラオスを含めたいろんな国や土地を、村上春樹が旅をしたときの紀行文である。

①ボストン 
②アイスランド 
③2つのポートランド 
④ギリシャの島々 
⑤NY 
⑥フィンランド 
⑦ラオス
⑧イタリア 
⑨熊本

ざっくりとわけると9つの土地についての紀行文が集められている。

僕はついこの間まで熊本を含めた九州一周のひとり旅に出ていたので嬉しくなった。

2020年8月にきた時は、すっかりと熊本城は綺麗になっていたし、別府から阿蘇を通り熊本までの交通インフラは元どおりになっていた。

しかし、肥薩線は2020年夏の豪雨によって流されてしまい、復旧の目処は立っていない(そのまま廃線にしてしまう案もある)。

アメリカで明らかに成人をしている村上春樹さん本人が、お酒を買おうときに必ずID(年齢確認のできる身分証)を求められたエピソードには少し笑った。

僕が好きな一節

文中のこの一節が素晴らしい。

『かつて住民の一人として日々の生活を送った場所を、しばしの歳月を経たあとに旅行者として訪れるのは、なかなか悪くないものだ。

そこにはあなたの何年か分の人生が、切り取られて保存されている。潮の引いた砂浜についたひとつながりの足跡のようにくっきり。

そこで起こったこと、見聞きしたこと、その時に流行っていた音楽、吸い込んだ空気、出会った人々、交わされた会話、もちろんいくるかの面白くないこと、悲しいこともあったかもしれない。

しかし、好きことも、それほど好ましいとはいえないことも、すべては時間というソフトな包装紙に包まれ、あなたの意識の引き出しの中に、香袋とともにしまい込まれている。』
村上春樹 著 / ラオスにいったい何があるというんですか? より

父が転勤族だった影響で、僕はたくさんの引越しを経験してきた。

この文章は、特に僕の心には突き刺さる。

ときどき、幼少期に暮らした街に自分の足で訪れる。

武蔵境で、小学校の同級生の両親が切り盛りしてたラーメン屋に行く。
狭いカウンター席でワンタンを頼む。

和歌山で、ムシキングをしたイズミヤというスーパーを約20年ぶりに訪れる。
幼稚園生の僕には輝いて見えたけど、大人になってみると寂しく見えた。

大宮で、高校の通学路でもある参道を数年ぶりに歩く。
喧嘩をしたときのことを思い出す。

僕が過去を思い出し目頭が熱くなっている一方で、住民たちはいつもの日常生活を送る。

上記の引用した一節は、故郷を離れて暮らしてる人なら共感できるはずだ。

さいごに

これまで10冊以上の村上春樹作品を読んできた。

だけど、最近、村上春樹作品を読むことが減った。

村上春樹に限らず、小説を読むことから離れている。

アニメやマンガ、YouTubeやブログのような短いコンテンツばかり摂取してる。

ゆっくりと腰を据えて、活字で物語を読みたい。

*この文章は2020年に書いた読書の記録を、加筆修正し、掲載したものである。