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介護ハイウェイ④

⚡帰路は薄情?

 結果的にわたしは兄と強制的に面と向かうことができなくなりましたので両親はとりあえず兄夫婦の家でしばらく預かって貰うこととなりました。

 ん?

 預かって貰う

 どうやらわたしは知らぬふりをするひとたちを忌み嫌うあまりに我を出していたのだろうと思います。
 両親の介護は順番から言えば、第一に兄夫婦の問題であるはずだからです。
 わたしがやってしまうから兄夫婦が安穏としてしまって逃げ続けていたということなのであればわたしの罪科でもあります。

 兄夫婦の家には手すりもなくトイレも膝がドアにぶつかるほど狭く、しかもベッドがなく布団で起居ですので、床にへたったら自力で立ち上がれない両親がどうやって生活するのか、とても心配です。

 ですが、そのわたしの甘い感情が両親と兄夫婦たちを甘やかして大切なことをなおざりにさせていたのだとしたら・・・

 それにハイウェイの運転は楽しみであるとは言いながら非常に緊張します。

 ですので帰路の行程はきれいさっぱり両親たちのことをココロから追い払いました。

⚡⚡PAから観た雲

 帰路の高速道路は東京から脱出するまでの区間の運転はなかなかに力が入ってしまいました。
 月曜日の朝、ちょうど世の中が動き始める時間帯でしたので、道路にはトラックやダンプなどのプロのドライバーさんたちの車が連なって走っています。
 その中にコンパクトカーが混じっていくわけです。

「うわ」

 もちろんプロのドライバーさんたちですから安全運転が徹底されていて交通ルールもとても真摯に守っておられます。

 ただ、『断固として業務を遂行する』という運転の仕方ですので、一般のドライバーであるわたしからすれば横に退いて観てござれ、という空気をびりびりと感じるんです。

 ああ、生半可な『運転が楽しい』なんていう了見で走行していたら集中力が途中で切れてしまうかもしれないな、と気を引き締めました。

 特にトンネル内の運転は前後と隣の車線の車とがすべてわたしよりも運転が上手でスムースだなという感覚を持ってしまいます。
 すーっ、と滑らかな走りで加速してくる後続車がルームミラーに映るとついつい車線の流れに乗って走らなければいけないのかな、とプレッシャーを感じます。

 背中が、バキバキになるのと、特に右腕がハンドルを握っていると段々と重くなってくるので何度も何度も運転シートに座ったまま背筋を伸ばすような動作を繰り返します。

「ひょえ もうダメだぁ」

 かなりの頻度でSAやPAに立ち寄りました。

 行きは両親を乗せていましたので、怒りのエネルギーで(!お許しください 本音なのです・・・)カラダが動いていましたけれども、帰りは電池切れのような状態で、ふしゅ、という音をマスクで隠した口元で自分で出しておりました。

 PAやSAで車を停めて外に出てストレッチをします。

 最近はなかなか走れませんが、一応市民ランナーの端くれですので、ランニングの際に繰り返してきたストレッチを。

 車のボディに手をついて腰をぐりんとひねったり、ハムストリングスを、うっ、と寄る年波に我慢できない声を漏らしながら伸ばしたり。

 のばして、きもちー、となった瞬間に観上げると面白い形の雲が空一杯にありました。

 その中のひとつの雲が、向こうに見えるお山のとんがりの上にちょうど麦わら帽のような感じで、ぷわ、と浮いていました。

「UFOにも観える」

 スマホを出してついつい撮影しているとわたしの車の後ろに停めたトレーラーの運転手さんが、振り返ってわたしのカメラの先を観てから、?、という表情をしておられました。

 あいすみませんでした。

⚡⚡⚡ストレッチストレッチストレッチ!

 休憩しながらでしたので思ったよりもわたしの街に着くのが遅い時間となりました。陽のある内に着けただけでもありがたいです。

 ただ

「伸ばしても伸ばしても伸ばしたりない~!」

 もうだめだと思いましたので高速道路を下りてそのままお風呂代わりに使っているジム※に直行です。

 着替えるや否やストレッチポールで背中の筋肉をとにかく弛緩させようとしました。

 ところが、何回どのような力加減でどのような方向へ向けて力を作用させても乳酸が解消できないような感覚なんです。

 のび のびび のびびび

 キリがありませんので途中で切り上げてマッサージチェアへ移動して、すべてのインディケーターを『強』に設定して、ぐりり ぐりり、と伸ばしてもらいました。

 のしイカのようにしてもらえるギアでもないでしょうか?

⚡⚡⚡⚡『介護』という行為は存在しない?

 両親が兄夫婦の家から戻ってくるまでがとても重要な期間だろうということを自ずから目覚めました。あ、すみません、自覚、でいいのですね。

 わたし自身が両親の「介護」のつもりでやっていたことを分解してみたのです。ちなみに、WEB上では介護福祉士の定義を「介護の定義」とする説明がいくつもありましたので、法律を引用いたしますと

この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰かくたん吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。
社会福祉士及び介護福祉士法第二条第2項

  では、上記引用部分の’日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護’の中の日常生活とはいったい何なのでしょうか?

 わたしのこれまでの実家の両親の日常生活に関連してさせて頂いていたことを思い起こし、列挙してみます

① 買い物
② 食事の用意
③ 掃除や洗濯
④ ゴミ出しや排尿・排便の始末
⑤ 通院
⑥ 予防接種等への引率
⑦ 医療補助等の申請や諸手続き
⑧ 神棚の榊の仕替え、仏壇の仏花の仕替え、お供え物を供える
⑨ ご神木へのお神酒、お餅のお供え

 もしかしたら上記①~⑨をご覧いただいて、その⑧、⑨を太字としていることに奇異な印象を受けられる方がおられると思います。
 いいえ、そもそも太字としていること以前にこの項目を書き連ねることをどうかとお思いになる方もおられるでしょう。

 ひらたく言えば、気ちがい、とお感じになる方もおられることと思います。

 当然のご反応と思料いたします。

 けれども、よくご覧ください

 ①~⑦も、行為そのものを単体で観れば、それを介護と呼べるでしょうか?

 突飛もない例とお思いになられたら失礼いたしますが、④について。

 もしこれが、赤ちゃんのおむつ替えだとしたら、それは介護でしょうか。

子育て、ですよね?

 けれども、排尿・排便の始末をするという行為そのものの本質は変わらないと思います。

 では次のステージです。

 ⑧、⑨を、日常生活とお考えいただけますでしょうか?

 わたし自身の感覚ですと、むしろ⑧、⑨こそが人間の営みのベーシックな部分、土台とも言え、普段のわたしたちの暮らしのあらゆる事象を大難から小難へと護ってくださっている、日常生活の根本だと思います。

 いいえ、たとえば①、②と⑧、⑨とは密接に結びついていて、わたしが両親のための作り置き惣菜を作る②において出来上がった切り干し大根の煮物などは、まず神棚・仏壇にお供えしますので、⑧も日常生活だろうと考えます。

 そうして、両親は残念ながら自力で②も⑧もできません(神棚の高い所にもはや手が届かず脚立にも乗れません)。けれども誰かがやらねばならぬ日常生活の根本と思います。

 おかしいでしょうか?

⚡⚡⚡⚡⚡跡を取るということ

 家を継ぐ、という行為について今の日本ではもはや老舗の和菓子店といったような絵に描いたような事例しか思い浮かばないかもしれませんが、実はそうではないと思います。

 おうちに神棚や仏壇があれば、それは先代か先々代かあるいは先々々代か先々々々代かもっと前からの代が柏手を打ち、手を合わせてきたのでしょう。

 してみれば、一般のおうちでも家を継ぐという行為はスルーしているだけで今でも存在し、わたしが極めて問題だと思うのは、神仏をまつる行為は自助でも共助でも公助でも代わりが効かないということです。

 あなたがするしかない

 わたしがするしかない

 仮に万が一それが介護保険サービスの対象となったとしても、神棚の榊を仕替えることをヘルパーさんに代行していただくことは、表面上の行為のみに関する代行であって、あなたが神仏をまつるそのココロまでも代行していただくことはできません。そうして神仏もその家の跡取りたちがまつることを望んでおられるはずです。

 だからです。

 わたしは分家ではなく、他家に入った人間です。

 本来、わたしが父母や兄夫婦に代わってご神木・神棚・仏壇をまつることはいくら出自がこの家であったとしても、正統なる跡取りでない以上、神仏にお喜びいただくことはできないと思われます。

 それでも毛ほどでもご無礼をお詫びする意味を込めてご奉仕させていただくのみです。

 早く父母・兄夫婦が改心することを。

 もっと言えば、介護そのものは第二義的なものとすらわたしは考えています。

※実家のお風呂は冬場は余りにも寒くてヒートショックで心臓が止まる可能性がありますし、夏場は夏場で田舎のこととて排水口から巨大ムカデが侵入してやはりショックで心臓が止まる可能性があります。一度体長約20cm、目測の胴回り5cmのムカデにシャワーをしている時に遭遇しました。慌ててほうきを持ってきて、ムカデはとんでもない生命力を持っていますので叩き潰そうとするとかえって襲われますのでそっとほうきに乗せて窓の外へ出しました。















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