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スパイスと発酵のこと#2_野草でグンドゥルック

【はじめに】季節感は無視,春の野草でグンドゥった話

以前作ったネパールの発酵食品,グンドゥルック.
無塩発酵乾燥野菜というなんとも情報量の多い食材である.

現地ではアブラナ科の野菜で作ることが多いらしく,意識したわけではなかったけれどこの回で使ったカブとタァサイもアブラナ科.他にも繊維質な野菜が向いているらしい.
そこで当時,日本中部地方に籠る2020年GW(当時)の私は考えた.

ふむ...ヨモギとかどうよ

突拍子もないが,折しもコロナ自粛真っ只中の虚無連休,ささやかでも野に近づきたい衝動の発露であったろう.第1弾やってみた編の成功もまだ分からぬうちに,第2弾野草編へと行動を開始していたのである.

今となってはヨモギの旬はとうに過ぎ去った.
しかし再興しつつあるウイルスに加えて長梅雨,やはりどこへも行けず鬱屈した気持ちはあいも変わらず.
植物の成長に置いていかれた感と今更感を感じつつ,日本の野草がネパール化される一部始終をここに記す.

【駆け足一部始終】野から食卓へ

何はともあれまずは収穫.
通勤路の河原にわさわさしている,ちょっと育ちすぎたヨモギたちを誘拐.

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青虫くんまでさらってきてしまった(ベランダからご退出いただいた)

収穫量はジップロック大1/2ほど.それだけでも部屋に立ち込める香りがすごい.
薬草風呂のイメージが強く鄙びたような香りの印象だったけれど,フレッシュだと案外爽やかな香りがする.

ここで作り方の復習.

よく叩く

よく干す

再びよく叩く

”ぬるま湯に”漬ける

再びよく干す
(食べる時は水でもどす)

やはりこう見ると工程が多い.やってみるとそうややこしくはないけれど...
細かいところは前回記述したのでここからは写真でざっくり.

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葉がちぎれてしまうのでほぼ叩かず乾燥.葉が薄いので1日ほどですぐ乾いた.
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前回よりさらにアグレッシヴ(適当)な発酵スタイル

再び乾かして(写真略),はい完成.

ほんと地味.42時間の手間が何も見えてこない.虚しいので早速食す.

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アチャール x 納豆 x グンドゥルック

発酵の3乗,もちろん旨い.ヨモギは発酵させた後の方が苦味は薄まるかも.
味,香りに関しては予想の範囲内.しかし今回驚かされたのは,漬け汁の方でして.

乾燥後も鮮やかな緑の葉っぱから出てきた汁はこのドブ色.流石にやばいかと思い恐る恐る嗅ぐと,なんと紅茶のような華やかな香り.少々舐めてみても,適度な渋みで案外イケる.
一体何が起こったんだ?

まぁ考えてみれば紅茶も発酵の産物.次回は汁の活用も視野に入れて作ってみる(今回は二次乾燥ありきで衛生管理がヌルかったので,ゴクゴクと飲むのは自重した).

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乾燥ヨモギonダル.乾燥させただけでも普通にトッピングとして優秀.

【そして広がる与太話】カレーと生物多様性

発想は冒頭の通り突発的なものだったが,例によって後からゴタクをくっつける.

ヨモギグンドゥルックを思いつくのと前後して見つけたこちらのツイッタハッシュタグ #morethanweeds(ちなみに日本語はこちら
国内でも呟くと植物の名前教えてくれる悟空とかいますね.それのもうちょっとクリーンな感じ?

スパイスについて調べていて学名や分類群を見つけると,彼らも農作物で普通に植物なんだよなって思い出す.いや当たり前ですけど.
乾燥され粉砕され袋詰めされた調味料を植物として捉えることってあんまりない.
「近頃の子は魚の切り身が海で泳いでると思ってるんですよ〜」なんて揶揄されるけど,スパイスに関しては自分も全くそのレベル.
実際,クミンの花やターメリックの葉なんて全然頭に浮かばない.フェヌグリークの豆としてのお姿やクローブが小さな花を咲かせる前の蕾であることも,ついこのあいだ知った.

我々が購入するものは栽培種として確立されたものとは言え,元々は現地の限られた野草を知恵を絞って活用していたのが起源のはずで.多種多様な色や香りに進化した原種の植物達がいて,それが長い年月でうまいこと栽培できるようになって,遠く離れた日本の食卓にまで流通路が開かれて,現在我々もその恩恵を預かれるわけで.とか考えてこの境地に

エジプトはナイルの賜物,カレーは生物多様性の賜物.

SDGsとかダイバーシティーとかサステナビリティーとかセクシー(ちがう)とか,もはや「流行り物」のようにそこらじゅうでみますよね.なんなのかもよく周知されないうちに,早くも意識高い系とかって揶揄の対象になったりエゴだと一蹴されたり.
けど,それなしじゃ立ち行かないのは意識の高低によらず理想の有無によらず,ただの事実なんだよなぁ.それにどの入り口で気付いて生活していくかの差異しかない.

例えば,世界で最初に発見されたウイルスはタバコの葉に害を与えるもの.植物だって病気にかかる.細菌,カビ,ウイルス,寄生虫などなど.
スパイスとして栽培される植物種だって,ヒトのCOVID-19の如くいつ突然変異のウイルスが蔓延して供給が絶たれないとも限らない.そんなときに,たった1系統しかその種になくて全滅してしまったら?野生種がもはや地表から姿を消していて,株の再興すら叶わなかったら?

ここまで身近な話をしてもなお胡散臭がられちゃえば仕方ないけれど.ほぼ海外に依存した食文化を日本で楽しんでると考えざるを得ないことってまだまだあるはず.
ちょっと話はそれるけど,最近ではスパイスラバーによるインドのコロナ禍支援プロジェクトなんかもあったりして.

話が発散を極めておりますが,「カレーは世界への窓」ということで.
発酵に開いたり,生物多様性に開いたり.

とりあえずは「カレーと生物多様性」の窓から外をのぞいてみたいところ.
スパイスのみならず,ダルや米の品種も枝葉が広い.


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