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1-4「NPCのデザインについて」/キャンペーンデザイナーズノート

1-4「NPCのデザインについて」

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むかーし、むかし。エルシィがまだ少年だった頃。

当時からオトナ相手にゲームマスターしたりしてました。オープンな場所だったので、結構ダメ出しもされます。当時の僕は割とコドモで独りよがりなシナリオやセッションやってたこともあったからね、仕方ないね

それらの批判は大体まっとうなものだったと思うんですが、人間ってやつは都合のいい生き物で。

やっぱり、褒められたりしたことの方が強く覚えているものなんですよね。

その人は、まだまだ未熟だった僕に対して

「あなたのマスタリングの長所は、NPCの行動に根拠があり、世界の中で生きている想像がしやすくて魅力的なキャラクターが多いところだと思うよ」

と言ってくれました。今でも覚えてます。Rさん元気かなぁ。

色んなところのシナリオフックに、あなたのアイディアの断片をこっそり使わせて頂いてます。

なお使用料は払わない模様。



というわけで、今回はノンプレイヤーキャラクター=NPCのお話です。最近のクトゥルフの界隈だとKPCという言葉を使ったりもするのかな。この記事ではNPCで統一します。

物語の構成要素として、NPCは便利です。

何故ならゲームマスターの思い通りに動いてくれるから。

悪乗りしたプレイヤーが水門壊したり洞窟を火攻めにしたり水源に毒を流したり、意図しない方向にヒャッハーしてゲームマスターの心が折れることもありません。

物語をゲームマスターの意図する方向に動かす手段として、NPCの活用は極めて重要です。

一方で、適切にコントロールされないNPCは、卓内のプレイヤーの満足度を下げてしまうこともあります。

お助け要員で出したら強すぎてプレイヤーキャラクターの活躍の場を奪ってしまったり、ストーリー誘導要員のはずが話が通じなさ過ぎてプレイヤーの殺意の的になってしまったり、答え合わせ要員で出したら「そんなのわかるか!」とキレられたり…ああっ、お客様、モノを投げないで。

前回のお話は、非常に多くのNPCを出しました。ストーリーラインでは割愛している部分がありますが、実はプレイヤーを除く16名の外交使節団全員の名前と役割を設定していましたし、ユーシズ公国側の登場人物も含めると、登場人物は30名近い。
人物相関図くらいは作りましたが、ゲームマスターですら多いなと思うのに、プレイヤーからはどう見えていたのだろうか…

さて、そんな前回のストーリーにおいて中心を担ったNPCは、レイラ=シャイターンです。

NPCのデザインとシナリオ内の動きに関しては、特に多くの要素があるシナリオほど、シンプルに行うのが良いと考えています。

何故なら、「どのNPCに、どのような行動をさせるか」ということを細かくシナリオ内で設定し過ぎると、プレイヤーの提案などで予期せぬ方向に物語が動きそうになった時にGMがフリーズし、プレイヤーを無理やり誘導するか泣いて許しを請うかのどちらかになりがちだからです。

今回のシナリオにおいて、レイラの行動に関してシナリオに記載しているのは
・パーティーの護衛対象
・使節団のキーとなる政治的立場
・外交会談の実現のためなら、誠実に、清濁問わずあらゆる手段を採る

この3点だけです。

プレイヤーに意地悪なテストを課すくらいは当初想定にありましたが、ユーシズ側の友人にコンタクトを取ったり、自分を囮にしたり、使節団の団長を説得したりといった動きは、プレイヤーサイドとコンセンサスを取りながら物語を作っていった結果です。

行動には根拠が必要と言われたことがあります。キャラクターが何故そのような行動を取るのかというベース部分を少しでも補強するため、エルシィは以下のような形でNPCを記載します。

名前:レイラ=シャイターン
二つ名:なし
年齢:25
種族性別:人間 女性
身長:159cm
体重:45kg
髪色:黒、長い髪を結い上げている。
瞳色:黒
身体特徴特記:切れ長の瞳、やや冷たい印象
プラス性格属性:責任感、滅私、利発
マイナス性格属性:高圧的、心に壁
物語上の役割:誠実でまともな貴族だが英雄とは相容れない政治家
必ず言う台詞:「貴族の特権は下々の平和・安寧を担保することと引き換えであると、私は考えています。大公との会談を実現するための駒以外は必要ありません。よろしくて?」
(以下、ゲーム的なデータを記載するがここでは省略)

性格属性に関しては、プレイヤーサイドのキャラクターはプラス属性を多めに、敵対するキャラクターに関してはマイナス属性を多めに記載します。

こうすることで、いちいち台詞を事前に用意しなくとも、この性格設定に言葉を合わせることでプレイヤーサイドとの会話が成り立つと考えています。
細かい部分はプレイヤーサイドとの会話で物語上の行動に繋げていくことになりますが、物語上の役割を記載することで、役割を崩すほどの提案は却下することが出来ます。
細かいディティールはプレイヤーサイドの提案を立てるが、キャラ崩壊の一線は超えさせない。

一言台詞に関しては、キャラクターの性格や立場を現わす台詞をあらかじめ用意しておくことで、スムーズにキャラクターのイメージを掴んでもらうことが可能だと考えています。

今回に関してもこのような簡素な設定書を、さすがに全員は無理ですが、約半分の12名分ほどは用意しました。

その代わり、各登場人物がシナリオでどのような動きをするのかは、一部を除きほとんど記載していません。プレイヤーが「このように関わりたい」という提案に乗る形をとることが多かったです。どちらがゲームマスターにとって楽になるかは人それぞれだとは思いますが。

レイラの他にもう1人(一組)、デザインや描写に気を遣ったキャラクターがいます。

“疾風の巨人”デューイを中心とする冒険者グループ”星光の塔”です。

彼らは設定上プレイヤー達より数段上の実力を持っており、PCの見せ場を食ってしまいかねない。一方で彼らの助けを借りる形の展開が可能であれば必要で、それはプレイヤーサイドから彼らに働き掛ける形にしたい。

トーラス卿の護衛から基本外すことが出来ない、とすることで彼らを意のままに使い倒すことを否定したり、「レイラの護衛」という当初からプレイヤーサイドに提示されたミッションに関しては手を出さないようなストーリー展開にすることで、あくまでプレイヤー達の物語をポジティブに補助する形にしたかった。

彼らは今後も出番がある予定であり、彼らが物語で今後果たす役割を考えたときに、プレイヤー達に「良き先輩、兄貴分」というイメージを持っておいて欲しかったのです。


キャンペーンということで、多くのNPCが今後も登場する前提で物語をデザインしていますが、ストーリーラインの最後に載せているNPC紹介の文章にも、少し工夫を加えています。

原則として今後も登場する予定があるキャラクターのみ紹介し、今後の登場予定がないキャラクターは、注釈して言及する、という点です。

前回のシナリオを例に挙げると、レイラの父・トーラス=ブロフィード公爵や、PCとデューイ以外の護衛団に関してもそれなりにシナリオ中の描写や、出演する場面もあったキャラクターですが、今後の起用の予定がないため説明を省いています。

ストーリーラインとNPC紹介の記事は元々こちらの記事でも解説したように、大人数でキャンペーンシナリオを回すにあたって、メインストーリーの進捗を全員で共有するために始めました。回を追うごとにその文章量は多くなるのが目に見えていたため、必要のない情報まで盛り込むと量が膨大過ぎて読んでもらえなくなるのが怖いなと考えていました。

このキャンペーンでは多くのNPCを登場させました。幸せになった者も、そうではない者もいますが、みな表現出来て良かったと思っています。

プレイヤーサイドの提案がNPCの結末に影響を与えた例も、

NPCの言動がプレイヤーの物語選択に影響を与えた例も、

両方のケースを通過したため、この辺りのことも将来記述したいと考えています。

なおヒロインの登場は、もうちょっと先です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

それでは、まだ次回。

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