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『謎の日本人サトシ』とARG『Perplex City』

『謎の日本人サトシ』2/11再放送決定!

先日NHKのBSプレミアムで放映されたドキュメンタリー『謎の日本人サトシ~世界が熱狂した人探しゲーム~』
イギリスのARG(代替現実ゲーム)『Perplex City』で14年間解かれることのなかった謎「日本人サトシを探す」が2020年末に解決へ至るまでの軌跡を追ったドキュメンタリーです。

2022年2月11日(金)23:45からBSプレミアムで再放送があるので、まだ見てない方はぜひ観てもらいたい作品です。
(ちょっと前まではNHKオンデマンドでも見ることができましたが、残念ながら2022年2月8日現在では視聴できないようですので、この再放送を逃すと次はいつ見る事ができるかわかりませんよ)

ちなみに、英語に自信のある方でしたら、NHK WORLDで放送された英語版は無料で今でも見ることができるようです。

番組をぜひ見てほしいので、この記事では「サトシ」のカードの謎が解かれた経緯については触れません。

番組を見ることができない等で、どうしても解決までの経緯を知りたい方は下記の記事を参照してもらえればと思いますが、ドキュメンタリーではこれらの記事でも触れられていない事実やネタ満載なので(私も初めて聞いた話がゾロゾロでてきました)、できればどうにかして番組の方を見てもらいたいと思います。

また、ドキュメンタリーの本放送に合わせてTwitterのSPACE上で勝手にやった解説実況が2022年2月20日くらいまでは聞くことが出来ると思います。
番組を見ながら実況しているので、タイミングを合わせて同時に聞かないと何を言っているかちょっとわかりにくいかと思いますが、気軽な副音声的に楽しんでいただければと思います。

ARGと『Perplex City』

では、なぜこの記事を書いているかというと、番組では「サトシ」の謎にフォーカスしているため、そのカードが含まれているARG(代替現実ゲーム)『Perplex City』そのものはどのような作品だったのか、ちょっと分かりにくくなっている部分を補足しようと思いたってのことです。

まず『Perplex City』について説明しようとすると、ARG(代替現実ゲーム)というゲームジャンルについて説明する必要があります。
ARGとは、一言で言うと「現実空間とリアルメディアを使って自分自身が参加できる物語体験ゲーム」とでもいうべきものです。
ただ、その詳細をきちんと説明しようとすると1本の記事にすら収まらなくなってしまう恐れがあるので、詳しくは『体験型エンタメ情報局』の2つの記事をごらんください。

『Perplex City』は初期のARGの1つです。
そして、ARGとトレーディングカードを結びつけた、画期的なARGでした。

というのも、ARGは多くが映画やゲームなどのプロモーションとして無料で開催されるものが一般的であり、ゲームの制作費は広告宣伝費から捻出される場合が多かったのに対し、『Perplex City』はトレーディングカードの販売という形で参加者から直接お金を取ることに成功したからです。

『Perplex City』は、一般的なトレーディングカードのように、ランダムで6枚のカードが入ったパックが販売されました。
ただ、他のトレーディングカードと違ったのは、カードそれぞれがパズルのような謎をもっていたということです。

カードには他のトレーディングカードと同じようにレアリティがあり、レアリティに応じて謎も難しくなっています。
さらにカードには1枚毎に識別のIDが付けられており、そのIDと答えを専用のwebサイトに打ち込むことでポイントがもらえ、ランキングを競うのです。『Perplex City』の全カードリストはこのサイトで見ることができます。

そして、それぞれのカードの謎に加えて、カードを集めることで、より大きな謎が解けていく構造になっています。
その最たるものが「キューブ」と呼ばれる隠された宝を見つけることでした。そこには『Perplex City』の物語設定が絡んできます。

『Perplex City』の世界観とメインミッション

画像:『Perplex City』公式サイトより

Perplex Cityと呼ばれる地球外の超文明都市。
その住人たちは体力よりも知力を競うことを重視し、パズルなどの精神的な探求を好んでいました。
そして、その中心に「キューブ」と呼ばれる聖なるアイテムがあがめられていました。
ところがある日、何者かによってキューブが盗まれ、地球に隠されてしまったのです。
Perplex Cityの人々は「キューブ回収チーム」を結成しましたが、自らは地球に行くことができないため、パズルカードという隠れ蓑を使って手がかりを提供し、地球人にキューブを探してもらうよう仕向けます。
キューブを盗んだとされる「Combed Thunderclap」(日本語にすると「雷鳴の探索者」?)、謎の第三勢力、そしてキューブを崇拝するカルト教団などが絡みあい、キューブを探す戦いはさらに複雑化していきます……。

そして、実際にカードやARGの物語を解いていくことで、キューブの手がかりが見つかっていき、そのキューブを最初に発見した人には10万ポンドという賞金がもらえるのです。

キューブは2007年に発見され、その様子はBBCでも報道されました。

『Perplex City』日本での紹介

ちなみに『Perplex City』ですが、当時日本でも、わずかながら紹介は行われていました。今でも読める記事のいくつかをリンクしておきます。
ただ、今のようにネット経由で手軽に輸入などもできない時代ですので、リアルタイムに日本でプレイしていたのは、ごく限られた人間だったかと思います。

そして「サトシ」の謎が残った

話を戻します。こうしてキューブを巡る謎解きは終了し、『Perplex City』の物語は終わりを迎えます。
しかしながら、「サトシ」のカード単体の謎は解かれないまま14年が経過し、それが今回のドキュメンタリーの物語となっているのです。

ちなみに、このドキュメンタリーの主役であり、14年間「サトシ」を探し続けたローラ・ホールさんはARGや謎解きゲーム制作研究の第一人者でもあります。
こちらはゲーム制作者向けのカンファレンス「GDC2019」での体験型ゲームにおいてのストーリーテリングについての公演

また最新著作『Planninng Your Escape』は今年の春に日本語版も出版されるそうです。

To Be Continued?

ところで、さきほど『謎の日本人サトシ~世界が熱狂した人探しゲーム~』に「サトシさん」とは別に一人の日本人が何度か登場しています。三原飛雄馬さんです。

画像:NHK『謎の日本人サトシ~世界が熱狂した人探しゲーム~』より

彼は番組内では『Perplex City』の参加者と紹介され、日本人の視点から『Perplex City』や「サトシ」について解説していましたが、実は三原さんと『Perplex City』の間にはドキュメンタリー内でも語られなかった、もっと深い関係があるのです。

ということで、この続き「ARG『Perplex City』と『名探偵コナン・カード探偵団』(仮題)」は近日公開予定!
(藍色飯店の記事も完結してないのに、これ以上続きモノ増やしてどうするんだw)

2022/03/19追記:
続き公開しました!


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