恋に焦がれたブルー

今までたくさんの恋愛を小説を読んできた。恋愛映画もたくさん見た。男にしてはそういった物語に多く触れてきた自信がある。
この小説を読みはじめた時、正直なところ不安しかなかった。お涙頂戴の病気モノ。そう感じてしまったのだ。
ヒロインの青緒は恋をすると身体に痛みを感じてしまう病気だった。症状は珍しいがだいたいの流れは一緒だろう、直感的にそう思っていた。
歩燈が使うセリフもどこが大袈裟に受け取っていた。シンデレラのストーリーが作中に何度も登場するが、まさにそのシンデレラの王子様ような甘いセリフがたくさん使われている。少し冷めた目線で読み進めていた。

しかし、ヒロインの青緒が少しずつ歩橙に惹かれていくように、ページが進むにつれて自分も2人にどんどん惹かれていった。自分の力だけではどうしようもない悲しくて厳しい現実が2人を襲う。同年代の周りの人が当たり前に経験している普通の恋愛がしたいだけなのに、大層なお願いをしているわけではないのに、そういったやるせない切ない2人の気持ちがどんどん自分に染み込んでいき、気づけば物語にのめり込んでいく自分がいた。
才能もない、容姿も特別美しいわけではない。そんな2人だが、まっすぐひたむきに自分の夢に向かっていく。言葉にすると簡単なことだけど1番難しいことに、2人はお互いのことを思って立ち向かっていく。

ひとつ乗り越えようとしてもまた新しい現実が2人を襲う。その度に2人は周りの人達に助けられながら、少しずつ前を向き始める。2人は勿論だが、2人を支える人々もとても魅力的に描かれている。読者からすると悲しい現実を多く受け止め、苦しいことばかりの2人に思えてしまうが、それ以上に宝物のようにかけがえのない人々が登場する。

この物語はたくさんの色が登場するが、色の見え方は人の感情に左右されることを鮮やかに描いている。恋をしているときはどんな景色も輝いて見えるし、それが破れたときはどんなに素晴らしい夜景でもとてもつまらないものとして映ってしまう。そんなことを思い出させてくれるような景色、風景の描写がたくさん登場する。その度に、こんな気持ちいつから抱いてないのかなあ、とつい感傷的になってしまった。

宇山さんといえば、『桜のような僕の恋人』がまず頭に浮かぶだろう。僕も読んだことがあるしSNSで大きな反響を呼んだ感動作だ。読んだ直後の切なさを今でも覚えている。この『恋に焦がれたブルー』はあの読後感を超えることができるのか、期待を膨らませながら手に取ったが、僕の不安など杞憂にすぎませんでした。
久しぶりに気持ちのいい作品に出会えました。ありがとうございました。

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