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ワインコラム23:器の形で、酒の味わいが変わる

先日、デパートの茶器のコーナーで目にとまった茶碗があった。 
高さ8cmほどの円筒形で、飲み口が少し外に広がっており、くすんだ緑がかった青い色をしている。最も大事なポイントは、口にあたる茶碗の縁(ふち)が薄いということである。
「これは日本酒を飲むのによさそうだ!」と思った。私の個人的な印象かもしれないが、縁の薄い器で飲んだ時は味がストレートに伝わってくる。縁の厚ぼったい器で飲んだ時は、なにやら間の抜けた味になるような気がするのだ。
私は早速その茶碗を購入し、茶碗としては小ぶりであるが、ぐい呑みとしては大ぶりな器で日本酒を楽しんでいる。

ワインの世界でも、同じワインがグラスによって味わいが違うことは随分前から言われてきた。10年以上前のあるセミナーで、それが明白に知覚できた経験は貴重なものであった。
セミナーでは、ボルドーワインとブルゴーニュワインを各々2種類のグラスで飲み比べてみた。
グラスの一つは、下ぶくれで口のすぼまった、ピノノワールやネッビオーロに適したグラス。もう一つは、グラスの口まで直線的に立ち上がり、口はあまりすぼまっていない、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローに適したグラス。
結果を言えば、ブルゴーニュワインはピノノワールに適したグラス。ボルドーワインはカベルネ・ソーヴィニヨンに適したグラスで飲むことで一層その品種の特質を味わうことが出来た。  
その逆では、それぞれの品種の個性を伝えきれていなかったのだ。

その原因は、グラスの口のすぼまり具合による香りの印象の違いもあるが、大きくはグラスの形状によってワインの口の中の流れが変わることにある。
舌は部分によって、甘味、酸味、苦味など感じる味が違うということである。そのため同じワインでも口の中の流れ方によって、味わいが違ってくるのだ。

縁の薄い器と厚ぼったい器で日本酒の味わいが違うことも、口に入る時と口の中での酒の流れが違うことによるのであろう。

左がブルゴーニュ用、右がボルドー用グラス。撮影=Masaru Yamamoto

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