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ワインコラム19:サン・ジェルマン・デ・プレでフランス人の胃袋に完敗

「日本人と欧米人では、胃の容量に違いがあるのでは?」
とはよく言われることである。
実際、違っているのだろう。それを立証するような場面を何度か見かけたことがある。アルコールに関しても、私たちは彼らほど強くはない。                                   20代、30代の時とは違って、飲酒形態が量から質に転換されて、自分の飲める量の中に楽しみを見出しているので、負け惜しみではなく酒に関しては口惜しくないのだが。

10数年前初めてフランスに行った時、前菜とメインというちゃんとした食事を昼に摂ったら、夜はカフェでワインとつまみで十分だった。それから、ちゃんとした食事は日に1回として、あとはカフェでワインを飲むことにした。

パリのサン・ジェルマン・デ・プレに、サルトルとボーヴォワールが毎日のように長い時間を過ごしたことでも有名な、レ・ドゥー・マゴと言うカフェがある。そのカフェと道(サン・ジェルマン大通り)を挟んで斜め向いに有る店が、ブラッスリーリップ(Lipp)だ。
創業は1880年というからかなりの老舗である。1920年代にはヘミングウェイも通っていたらしい。店の造りにも歴史を感じる正統派のブラッスリーである。

10数年前に、妻とランチで寄ったことがある。お勧めがシュークルートということで、せっかくなのでスペシャルを頼んで、アルザスのリースリングと楽しむことにした。しばらくして料理が来た時に、あまりの量に食べられるか不安になってしまった。
 
皿の上には、500グラムはありそうな骨付きの豚肉、こぶし大のジャガイモ、太いソーセージが数本、そして山盛りのザワークラウト。最初から降参するのも癪なので挑戦してみた。
完敗であった。
 
夕方ボーヌに移ったが、シュークルートが災いして夜は何も口に入らなかった。後から考えたことは、スペシャルというのは素材のことではなく、量と種類が多い(スペシャル)ということではないだろうか? つまり、"大盛り"だ。

「フランス人でも一部の人しか食べられないのではなかろうか?」
と完食出来なかった自分を慰めるしかないのであった。


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