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ワインコラム18:日本のナデシコとブルゴーニュのバラ

どくだみは「十薬」とも言い、俳句の世界では夏の季語である。十薬という名前が示すように、昔から薬草として重用されてきた。
ある時、テレビか雑誌で八重のどくだみの花があると知り、ウォーキングのついでに探したところ、1時間ほどで2輪見つけた。
しかし後で調べてみると、白い花びらと思っていたのは「苞(ほう)」という葉の一種であった。情報が違っていたのか、私の勘違いか、残念ながら八重の花とは言えなくなった。

私は中学生の時に夏休みの自由研究で、100種類以上の植物標本を集めたことがある。その頃の私は、花や草の名前を知ることが楽しかったのだ。牧野富太郎先生が、当時の私が信奉していた人だ。
そんな下地があったので、どくだみの話が頭に引っかかってきたのも自然のなりゆきだった。今でも見慣れない花を見ると、足を止めて写真を撮ったりすることがある。

その花を見た時、大げさではなく「ドキッ」としてしまった。私が15、6歳の頃だった。
里山を歩いてきて、開けた場所に出た時に不意に出会った。鮮やかな朱色の5弁の花びらを持つ直径3センチ位の花で、周囲が緑の中にその花が1輪だけすっくと立っていた。朱色がぽつんと有るので、非現実的な風景にみえた。
私は立ち止まって、しばらくその花に見入ってしまった。

花の名を、フシグロセンノウと言う。
ナデシコ科ではあるが、花弁に切れ込みは無い。カワラナデシコは可憐な感じがするが、フシグロセンノウは少し妖艶な印象だ。検索してみたら、絶滅危惧種と出てきた。その鮮やかさが仇となり盗掘されやすいのだろう。数回しかその花を見たことはないが、私にとって忘れ難い花だ。

花と言えば、ワインのエチケットには花の絵は少ない。何故か鳥の絵は多い(特にイタリア)。 
ブルゴーニュのエチケットは、ほとんどが文字だけのオーソドックスなものだ。私が憶えているのは、ジル・ブートン(GILLES BOUTON)のサン・トーバン(SAINT-AUBIN)のエチケットにバラの絵があったことくらいである。

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