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コラム6:痛快! コルトン・シャルルマーニュ

伊丹十三監督の映画『タンポポ』は、1985年の作品である。        ウィキペディアには、【「ラーメンウエスタン」と称し、売れないラーメン屋を立て直す物語】とある。それはそうだけど、それだけの話だったら凡庸な作品で終わっていたかも知れない。この作品の魅力の8割は、本筋の背後で描かれる「食とエロスの追求」と、所々に挿し込まれる味わい深いエピソードの数々にある。エピソードには伊丹十三自身が鮮やかに反映されている。彼のシニカルなところ、衒学的(ペダンティック)なところ、美食を愛するところなど。

ワインが関連する挿話が2つ有る。ワイン通のホームレスの話も皮肉が効いているけど、「コルトン・シャルルマーニュ」の話が好きだ。

高級フレンチの個室に、重役然とした10人ほどの人が座っている。その中に気が弱そうな若いサラリーマンが1人。ギャルソンがワインの注文を聞いてもオジさん達は分からないから、困った時の「シャブリ」で右に倣えをしていた。その時、この若造がやってくれた。
「今日はど~も朝から、コルトン・シャルルマーニュが飲みたい気分なんだよねぇ」
気だるそうに言い放った一言に、オジさんたちは目を白黒。いゃぁ痛快でした。

因みに「コルトン・シャルルマーニュ」は、ブルゴーニュのコート・ド・ ボーヌの白の特級ワインです。オジさんたちの弁護をすると、当時殆んどの日本人はワインにもフランス料理にも不案内でした。その頃、六本木のあるレストラン(フレンチではない)では、ドイツのマドンナワイン(甘口)を出していたのを憶えています。                     今日では若造のキザな発言も、ワイン好きの間では普通の会話になりつつありますが。

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