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滝つぼにて

 滝つぼで、民話の再話を考えました。再話というのは、あらすじは守って、自分なりのストーリーにするということです。こんな書き出しを考えました。
 むかし、むかし、天から、美しい若い娘が降りてきて、滝つぼで、水浴びをしていた。そうしたら、魚を釣っていた漁師が、娘の着物を隠してしまった。着物がないと天に帰れないので、娘はしくしく泣いていた。すると、漁師が「俺と一緒に暮らさないか」と言った。娘はしかたなく男について行った。娘は男と暮らしているうちに、男がいとおしくなり、男の子が生まれた。男の子が大きくなり、喋れるようになると、ある時、こんなことを言った。「おとっつぁんが、きれいな着物を隠していた。」
 そこで、おっかさんは、男の子と一緒に、着物を見に行った。すると、それは自分の着物だった。着物を見つけたら、天に帰らなければならない定めになっていた。そこでおっかさんは、書き置きをして、天に登って行った。書き置きには、「茅を集めて、山にして、天に登ってきてくれ。そしたら、きゅうりの番をさせられるが、一本たりとも食べてはいけない。」と書いてあった。
 おとっつぁんは、茅を集めて、天に登って行った。そうしたら、きゅうりが沢山あり、その番をさせられた。しかし、おてんとうさまが近いから、暑くて、暑くてたまらない。一本くらいいいだろうと、きゅうりを一本食べてしまった。そうしたら、にわかにかき曇り、線上降水帯が出来て、どひゃーん、どひゃーんと大雨が降ってきた。みるみるうちに、大きな天の川が出来て、もう先には行けなくなってしまった。しかたなく、おとっつぁんは、また地上に戻ってきたということだ。
 しゃみしゃっきり、ねこすけぽっきり。



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