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極寒の長野に行ったはなし。~其一~

「友達のまっちゃんから、《職場の社長が要らなくなった軽車を格安で譲るって言ってるけど、どう?》っていうLINEが来てて…」
ちょうど仕事用の軽トラが欲しいと話していたタイミングだった。モノは軽トラじゃないけど今乗ってる車より断然良いってことで2021年の12月、彼と長野へ、その車をとりに行くことになった。
彼の長年の友人であるまっちゃんの事は、よく聞いていた。まず出会い方が面白いし、まっちゃんの人生もとても興味深い。。。長野に移住して1年くらいと言っていたかな…?ずっと遊びにおいでと誘われていたそう。

スケジュールの調整のやり取りで、まっちゃん宅で《同年代の仲間が集まって持ち寄り忘年会みたいなことをするからその日においでよ。》と誘われたらしいのだけど、その日と私が彼に会いに行く日程とが被ってしまい、その事を話したら《ちょうどイイ!一緒に連れておいでよ!》と言われたらしい。

自分も初めて行く場所に、私を連れて行く事を心配してくれたけど、私は人見知りするタイプではないし、国内も海外も行きたいと思うとわりと一人でどこでも行ってしまうので今回の話を聞いて特に抵抗はなかった。それよりも、初めて“彼の友人に彼の彼女として紹介される”ということがなんとなく嬉しくて、でもちょっと照れくさくてソワソワしていた。

当日早朝、完全防備で彼の家を出て最寄りの駅まで歩いた。そのほんの15分くらいの時間、なんとも言えない嬉しさがあって年甲斐もなくウキウキしていた。初めて彼と電車移動して、高速バスに乗り込んだ。

高速道路で県をまたいで移動するってなんでこんなにワクワクするのか…?私にとっては非日常だからか?窓の外の風景がどんどん変わって流れていくのをずっと眺めていても飽きない。突然雪が降りだして窓の外の景色が真っ白になって、ひとりで目を輝かせていたのだけど、彼はあまり興味がなさそうで、隣でずっと携帯を見ていた。

5時間くらいかかって降りたバス停は高速道路上の小さなバス停で、周りは山に囲まれて民家などは遥か遠くの方に小さく見える程度。バス停まで迎えに来てくれるはずだったんだけど、遅れるから近くのコンビニまで来てほしいと連絡があった。
ものすごく寒くて、遮るものがないから山からの冷たい風が痛いくらいだった。近くのコンビニと言っても土地柄2、3分の距離にあるわけがなく、10分とか15分くらい歩いた気がする。極寒の中を歩かされた彼は何やらぶつぶつ文句を言っていた(笑)私は久しぶりにきれいな空気を吸って気分が良かった。コーヒーを買って店内で待っていたら、友人のまっちゃんと、まっちゃんの友人のタイちゃんが車で迎えに来てくれた。

彼から聞いていた通り、まっちゃんは色黒でとても優しそうで、身なりも雰囲気も、もうその土地の人になってる感じだった。まっちゃんも、タイちゃんも、話し方や雰囲気がとても柔らかで、(もともとなのかもしれないけど…)生活する環境と人の精神はやっぱりつながっていて、この土地で暮らすことが人のオーラをそんな風に柔らかにしてくれるのかもしれないと思った。

まっちゃんの家は山道を下ったところにあって、民家はほとんどない。遠くのほうに一軒お隣さんが見えるだけ。古い平屋の一軒家で、一人暮らしには広すぎる。庭もあるし、ニワトリ小屋もあった。キッチンには小さな薪ストーブ、縁側の外は一面田んぼ。その先には川が流れている。これだけ書くと、今流行りの素敵な田舎暮らしを想像するかもしれないけど、当り前のようにトイレは水洗ではないし、とにかく寒い。。。完全防備で行ったのに全く通用しないほどの寒さだった。家の中も暖房をつけなければ外にいるのと変わらない。。薪ストーブをつければキッチンだけが暖かい。
6部屋くらいあるのに、荷物はほとんどなくて、奥の部屋に登山用のアイテムが並んでいるくらいだった。余分なものは一切ないその生活空間がいろんなことを経験してようやくたどり着いたまっちゃんの今をすごく表している気がした。私がそんなことを考えているあいだ、彼はまっちゃんの家の中を一通り見て回りながら興奮していた。大工の血が騒いじゃってた。

と、ここまでが一日目のまだ半分くらいの話。。。(笑)
車をもらいに行くことが最大の目的だったけどそのことがまるで❝ついで❞に思えるくらい、見たモノや出会う人達、そのコミュニティでみんながやろうとしていることが、都会の生活に慣れ過ぎた私には、新鮮でとても壮大で、でも楽しそうで…。とても一回では書ききれないので、忘れないうちに何回かに分けてゆっくり書いてみる。。