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賭博卒業録エコダ 第一話「XRD」

 C大学理学部麻雀学科、それは日本で唯一の麻雀が学べる学科である。入学者はみな選りすぐりの麻雀エリートであり数多くのプロ雀士、雀荘メンバー、裏プロ(マンションで高レートのアブナイ麻雀を打ってるひとのこと)を排出する。幼少期から牌に触れ続け血のにじむ訓練と無数の牌山を積んだもののみが入学を許されるまさに最高麻雀学府なのだ!そんなC大学にも落ちこぼれがひとり。 「あーあの雲、白みたいだぜ」 彼の名はエコダ。若くして麻雀を志すも大学まで来て牌山を積んでは崩すことに疑問を感じ日がな地

    • 漂流都市江古田

       お志ど里がつぶれてセブンイレブンになっていた。お志ど里は古き良き江古田の街の象徴とも言える店で、中高生にこそ大した人気はないもののその店構えは年季が入っておりなかなか趣深く母校の教員やOBには定番の店だった。対してセブンイレブンはどこにでも存在しケチで浅ましく人を貶めることしか考えていない、そんな店である。前者が後者に変わってしまうことの衝撃たるやない。親の死とほぼ同じ喪失感と言っても過言ではない。ああ変わりゆく江古田の街。そう、形あるものはいずれ失われるのだ。江古田の街も

      • 旧地学部室にて

        うだるような暑さが続いた夏が過ぎ、照りつける日差しも弱まってきた九月中旬、江古田は地学部室で人を待っていた。 今は一人だ。部室はまるで世界から切り離されたかのように静まり返っている。 それにしても日本の夏は蒸す。 自分も長いこと日本人をやっているが、冷房を付けるには涼しく切るには暑いこの季節の過ごし方はいまだに分からない、江古田はそこら辺に落ちていたラベルもない石をもてあそびながらそう思った。 それにしても部員はまだだろうか? せめて『部長』が来てくれないとなにをするにも難し

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