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AM4:45 CHICAGO

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シカゴマラソンのプレスルームで「大迫傑が25kmまでペースメーカーをするという噂があるんだけど、詳しいことを知らないか?」と声をかけられた。彼のツイッターやインスタグラムにも、そのようなことは全く書かれていなかったから、へえ。そんなことがあるんですか。と聞いた直後は驚いたのだけれども、「それはあるかもしれませんねえ」と答えた。シカゴマラソンは大迫選手にとって日本記録を出した場所でもあり、東京オリンピックで有終の美を飾った後、「もう一度マラソンを走ろう」と現役復帰を決意した場でもある。アメリカで一緒にトレーニングを積んでいた吉田祐也、佐藤悠基両選手もシカゴマラソンで日本記録ペースにチャレンジすることを目指してトレーニングしていたし、(が、今季、世界的にタイムが上がりエリートエントリーから漏れてしまった)そのアシストをしつつ、彼が日本記録更新ペースで25km、自身の練習も兼ねて走ることを11月に控えたフルマラソン復帰戦NYCマラソンへのロードマップに組み込むことは、ありそうな話だと思ったからだ。

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なにか手がかりはないものか?と、シカゴマラソンのアプリをダウンロードしてランナーズアップデートに「osako」といれて検索すると、「suguru osako」ではなく、「suguro osako」選手がヒットした。

前方からスタートできるゼッケン93番。手違いで「suguro osako」になってしまったが、これは大迫傑本人とみて間違いないだろう。そうこうしていると、別の方から「大迫選手がヒルトンホテルのロビーにいたよ。ペースメーカーするんだって」と連絡がはいった。レース前日のMTGで大迫選手はハーフ1時間02分ペースのペースメーカーとして走ることが発表された。倍換算するとフルマラソン2時間4分。つまり日本記録更新ペースである。エントリーしていた日本人選手たちは1時間03分ペース、倍換算すると2時間6分台を目標とするグループを選んだ。筆者がわざわざシカゴまで来たのは、「MGCをすでに決めている日本人選手が失敗覚悟で日本記録にチャレンジするなら平坦なシカゴが最適」と考えたからで、この時点で目論見は大きく外れることになるが、まあいい。ペースメーカーをする大迫選手なんてそうそう観れるもんじゃない。先頭をひっぱるペースメーカーだから、大迫選手は最前列近くに並ぶだろう。スタートエリアに入れるための取材申請をしておいてよかった。

シカゴマラソンの朝は早い。車椅子選手らは7時すぎにはスタートしてしまうこともあるが、スタートエリアへの取材申請をしたカメラマンはヒルトンホテルのロビーに朝4時45分に集合することになっている。ボストン・マラソンでのテロ事件以降、特にアメリカではスタート、フィニッシュエリアの警備が厳重になっており、ヒルトンホテルから1ブロック先。歩いても10分そこらでつくスタートラインまでカメラマンたちは白バイの先導によるバスで厳重なセキリティをくぐり抜け(金属探知機や警察犬のチェックを受け)案内される。

集合10分前の朝4時30分すぎにロビーにつくと、数人のカメラマンが大きな機材をもって談笑していた。ちょっと早かったか。と、周囲に挨拶をしてやりすごしていると午前4時45分、カメラマンの集合時間ぴったりに、緑のNIKEのウェアを来た選手が現れた。背負ったリュックサックには「Pacer」の文字。まぎれもなく大迫傑である。エリートランナーのスタートは7時30分。集合時間にはまだ早い。「suguro」と手違いがあったように、ペーサーの彼への連絡にも手違いがあったのだろう。カメラマンの集合時間・場所に大迫傑が1人で現れた。エリートランナーの集合場所と時間はこちらも知るよしがない。そのうち彼は床に座りストレッチをはじめた。

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