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新田コーチの振れない左腕のはなし。

「日本記録ペースでフルマラソンをひっぱる」
日本記録更新こそはならなかったが新谷仁美選手のフルマラソン日本歴代2位という結果を引き出し、大役を終えたばかりのペースメーカーTWOLAPSの新田良太郎コーチは心身ともに疲れ切っていた。部屋に戻ってシャワーを浴び、部屋着に着替えてリビングのソファーでようやく一息つくことができた。

練習中もレース中も新谷選手の右前を走る新田コーチ。新谷選手の走る場所をあけるために、左腕は極力ふらず走ってきた。当然、スピードは出しづらくもなるし、左右バランスは崩れる。ヒューストン出発前は念入りに治療で身体を整えた。振れなくなった左腕に文字が書かれているのをみつけた。「新田さん、左腕に書いてるの、それ何?」と、聞くと「ああ、これ設定タイムを書いていたんですよ」

近くで見せてください。と写真を撮る。

新谷さんは時計をもたずに走る。自身の動きやリズムを大事にしたいからだ。だから、自然とタイムマネージメントは新田コーチの仕事となった。「最初の5
kmはドンピシャで入ったんですよ」新田コーチの腕には5kmごとの通過タイムが書かれている。左上が最初の5kmだろう。そこには「16:25」と書かれている。この5km毎の通過タイムも横田コーチ、新谷選手、新田コーチら3人で考え抜かれた設定タイムであったのだろう。30kmのところには「1:38’30」と書いてある。実際の通過タイムは「1:38'29」。ほぼドンピシャである。


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