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学校にレーザーカッターが来た

夏休みに入ってまもなく、注文していたレーザーカッターが届きました。
見る教師はみな感動しています。
授業での活用はこれからですが、試しに使ってみて思ったことをまとめてみます。


そもそもの経緯

私はレーザー加工は工場でやるもので、学校でできるという発想がありませんでした。
デジタルものづくりについては、前任者が3Dプリンターを導入して教材づくりをしていましたが、自分はそこまで手が回っていませんでした。

今年の1月に、文部科学省の高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)の募集がありました。
一般社団法人 デジタル人材共創連盟(デジ連)のDXハイスクールプラン集を見ていると、デジタルものづくりの項目に
・3Dプリンタ
・3Dスキャナ
・レーザーカッター
・A1プラスプリンタ
とありました。

「レーザーカッター?」

調べてみると、様々なものに刻印できたり、複雑な形にカットしたりできるようです。
数十万円で買える製品もあるようです。

「生徒の描いた絵をベニヤ板に焼き付けられるかも」
「ゴム印を作れるかも」
「肢体不自由の生徒がデザインしたものが作品にできるかも」
「パズルの教材が作れるかも」

などと可能性を感じ、購入計画リストに加えました。

おそらく使いたい学級が多くなると予想できたので、2台購入しました。

また、キャスター付きのしっかりした作業台(サカエ製)に乗せて、移動できるようにしました。
コンピューター室で授業をやっている途中で
「レーザーカッターを使わせて。」
と出入りされたり、
「加工中だから何かあったら呼んでね。」
と置き去りにされたりしては迷惑です。
また、同じ場所から電源を取ってブレーカーが落ちたら2台購入した意味がありません。
あと、加工時のニオイも心配していました。

購入したのはsmartDIYsのEtcher Laser Proです。

移動して使うという前提があったので、集塵装置内蔵の機種を選定しました。
また、Webページで説明動画等のサポート情報が豊富に提供されている安心感もありました。

到着

重量が45kgあり、トラック車上渡しということで、運送業者が到着したら、「お手すきの先生」数人に声をかけて運びました。
「季和さんは指示を出すだけで運ばない」と言われましたが。
でも、箱から出してくれて、ご丁寧にも「箱と梱包材の処分」までやってくれました。
しかし、それが大失敗でした。
この会社は出張修理をやっていないので、修理が必要な時は送り返さなくてはならず、箱と梱包材は保存しておかなくてはいけないのです。
壊れない(壊さない)ことを祈るのみです。

準備

マニュアルも動画もあるので難なく進めることができました。
ただ、ソフトのインストールには手間取りました。
無償のSmartDIYs Creatorがあるのですが、普通にインストールするとユーザーのフォルダ内にインストールされます。
でも、本校の共用パソコンは通常は管理者アカウントと別のアカウントで使っているため、管理者アカウントでインストールしても通常アカウントで使えませんでした。
通常アカウントではそもそもインストールができませんでした(これは本校独自の設定のせいかもしれません)。
Program Filesフォルダにインストールしようとすると、メンテナンスツールしかインストールされませんでした。
結局、Cドライブ直下にインストールすることで、すべてのアカウントで使えるようになりました。

試してみる

最初のカットはマニュアル通りに操作すればできます。
マニュアル通りに操作すれば・・・。
でも、マニュアル通りに操作しない先生がいるだろうなぁと不安になります。

毎回、治具(じぐ)を必ず使うのですが、小さいのでなくしそうです。
100円ショップで台所か風呂で使うマグネット付きの受け皿を買って本体に付けると、今まで説明を受けた先生はみな、わざわざ説明しなくても治具を受け皿に戻していました。
視覚的な支援は教師にも役立ちます。

パラメーターについては専用データが提供されています。
ベニヤ板に加工したので、それが目安になりそうです。

ベニヤ板

写真の刻印は感動します。
見た目にもきれいですが、立体的になるので、視力の弱い生徒が触覚で凹凸を感じることができそうです。
焦げたにおいはしますが、問題にはならないでしょう。

焦げるので、パラメータの調整が必須です。
手作業では大変なカットが瞬時にできてしまうのは驚きです。
ペーパークラフトや切り絵などができそうです。

ゴム板

ゴム印を作りたいと言っていた先生が何人かいたので、ホームセンターで売っていたゴム板に刻印してみました。
ゴム印の出来は満足のいくものでしたが、ニオイがかなりのものでした。
鉄と硫黄の化合の実験並みで、もうその日はその教室で授業をしたくないぐらいです。
コンピュータ室でやられたら、次の時間に使う人は恨みを持ちそうです。
うちの学校はデザインや老朽化のせいで開かない窓が結構あるので、換気扇を使っても室内での加工は厳しいと思います。
キャスター付き作業台なので移動ができ、電工ドラムも買ったので、ゴム板を加工するときは外でやってもらいましょう。

Webページを見るとマカロンに刻印する例がありますが、今は家庭科ぐらいしか調理実習をやらないので、食品への刻印は授業では無いかなと思います。

アクリル板を買いに行ったところ、見た目が良く似たエンビ板も売っていました。
塩化ビニル(塩ビ、PVC)はレーザーカッターで加工禁止なので、間違えないように注意喚起が必要だなと思いました。
プラスチック消しゴムも塩化ビニルなので、うっかり加工しないようにしなくてはいけません。

一抹の不安

今回、レーザーカッターをDXハイスクールの補助金で購入したわけですが、高等学校学習指導要領解説情報編に「レーザーカッター」の文字は出てきません。
ちなみに、3Dプリンターについては、専門教科情報の科目「情報の表現と管理」に記載があるだけです。

(1)情報の表現
ア 情報社会と情報の表現ここでは,情報社会における情報を表現することの重要性を取り上げ,表現の多様性や社会への影響,どのような情報が,どのようなメディアによって,どのように表現され,やりとりされているかについて自己の経験と関連付けて扱う。また,各種の携帯情報端末が普及し,コミュニケーション手段や表現手段が多様化していること,携帯情報端末の特徴として小型化,個別化及び移動性の高さなどがあること,携帯情報端末のカメラや各種センサなどの機能を生かした情報の表現方法などについても扱う。また,デジタル情報が現実世界や物体と深く結び付いた情報の表現を取り上げ,仮想現実,拡張現実及び複合現実や,人や物の動きに応じて変化するコンテンツ,3Dプリンタを活用したものづくりなどに触れる。さらに視覚や聴覚による情報の表現だけでなく,嗅覚や触覚など人間の五感をデジタルデータから再現する技術も進んでいることなどにも触れる。このように,現在使われている技術にとどまらず,新しい技術や情報の表現方法について関心をもち,その可能性や問題点など将来の情報表現について考察したり討議したりする学習活動なども考えられる。

高等学校学習指導要領解説情報編P103

知的障がいを併せ持つ課程では、レーザーカッターや3Dプリンターを職業など様々な教科のものづくりで使えそうですが、準ずる課程の共通教科情報の授業では使う根拠があるのだろうか?、という不安がよぎりました。

情報Ⅰでは時間的に厳しいですが、情報Ⅱではうちの学校は時数を多く確保しているので、「コミュニケーションとコンテンツ」に絡めて取り組むことができるのではないかと思っています。

(2) コミュニケーションとコンテンツ
ここでは,コミュニケーションを適切に行うために,目的や状況に応じてコンテンツを制作し,発信する学習活動を通じて,情報の科学的な見方・考え方を働かせ,多様なメディアを組み合わせてコンテンツを制作する方法やコンテンツを発信する方法を理解し,必要な技能を身に付けるようにするとともに,情報デザインに配慮してコンテンツを制作し評価し改善する力を養うことをねらいとしている。

高等学校学習指導要領解説情報編P46

自分が3Dプリンターやレーザーカッターで作った作品を紹介するWebページを作り、互いに評価するような活動ができるかなと思っています。

肢体不自由の生徒だと手指の巧緻性に困難のある場合が多いので、作業製品をつくっても他の障がい種の生徒にはかないません。
でも、レーザーカッターはアイデア次第で困難を打開するのに役立つ可能性があります。
これから、うちの学校ならではの実践ができると良いと思っています。



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